カテゴリー「こやまけいこ」の10件の記事

2024/04/04

最近のコミック新刊から 『薬屋のひとりごと(13)』『まわるドーナツと金曜日(1)』『神作家・紫式部のありえない日々(4)』

Photo_20240404181901 『薬屋のひとりごと(13)』 原作 日向夏、作画 ねこクラゲ / スクウェア・エニックス ビッグガンガンコミックス

先輩「『薬屋のひとりごと』の新刊もう読んだ?」
後輩「安定の品質、この作品はセンターラインに猫猫の謎解きがあって、その合い間合い間に作中世界の後宮や花街のさまざまな風俗習慣が語られる、そのバランスがいいですよね」
先「今回、その謎解きに魔鏡が出てくるんだど、魔鏡といえばずっと前の出張鑑定団に出てきて、確かプライスはたいしたことなかったけど、家に魔鏡があるなんて! と、まことに羨ましく思ったでござる」
後「しかし、スクエニ版の薬屋の絵師、ねこクラゲさんについては、つい数日前脱税の疑い云々の報道があって、その後のご本人のコメントによると延滞税、無申告加算税はすでに納付済みとのことなんですが・・・これで作品掲載に制限がかかったりしないか、ちょこっと心配ですね」
先「むう、最近はネットがすぐ炎上して、それは世論を安易にうにゃむにゃにできないということでもあるけど、ちょっと暴走が過ぎるむきもあり」
先・後「♪寛容になりましょう~」
先「ぜいはー」
後「先輩、もうお年なんだから、歌はともかく踊るのまでは無理」
先「井上~、令和と昭和を行ったり来たりだけでなく、本人も若返らせるタイムマシンを!」

Photo_20240404181902 『まわるドーナツと金曜日(1)』 こやまけいこ / 芳文社コミックス

先「いなくなって困る、〇〇ロスってあるじゃん」
後「言いますね、亡くしてしまったペットロスとか、修理のきかなくなったaiboロスなんてのもあるようです」
先「俺の場合、いまだ大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺~』で関東大震災で行方不明になったシマちゃんがほんとうは無事なんじゃないか、戻ってくるんじゃないかってロスが続いているの」
後「あー、あれは切なかったですね、わかります」
先「シマちゃんが生きていればきっと日本の女子スポーツの礎を・・・それなのに、それなのに。いや、ともかく生きてさえいてくれれば・・・くくくくく。んで、その心の傷も癒えないうちに今度は連載が終わってしまった『かわうその自転車屋さん』のヨウコさんロス」
後「先輩、ちょっとお姉さんふうできりっと強い女性に弱いですからね」
先「作者のこやまけいこ氏は新しく『まわるドーナツと金曜日』って連載を始めていて、待望、単行本の第1巻も出たのだけど、これも動物たちが町中で普通に生活している世界。ドーナツを買いにくるお客さんの中に、こっそり、もとい堂々とヨウコさんの参加希望!」
後「1巻は主に猫の“黒鉄”と赤毛の“まわる”がドーナツの移動販売を始めた、という内容で、ストーリーが動き始める2巻以降に大きな期待が集まっているようです」
先「ねえねえ後輩、君、誰に向かって喋ってんの」
後「今後の一人と一匹の活躍が楽しみですね」
先「だからどっち向いて喋ってんのかー」

Photo_20240404181903 『神作家・紫式部のありえない日々(4)』 D・キッサン / 一迅社 ZERO-SUMコミックス

先「大河といえば、『光る君へ』・・・フィクションだからしょうがないけど、なんかあちこち無茶苦茶な気も」
後「若い頃の紫式部が藤原道長とあんなラブラブでいいんでしょうかね」
先「なんか、昼メロだよねー」
後「素朴に疑問なんですが、NHKは民放に比べて時代考証にうるさい、ということになってるのに、あの展開いいんですか。貴族の姫様があんな町中ぷらぷら出歩くとか、散楽の役者を打毬に参加させちゃうとか」
先「不思議なのは、大河ドラマって、平安貴族のサロンも、鎌倉殿の御前会議も、斎藤道三の悪だくみも、なんか、みんな同じ板の間に見えるんだよね。それをちょっと暗くしたり、布やスダレで雰囲気変えてるだけで・・・同じセットの柱と床、使いまわしてんじゃないのお」
後「それはともかく、今年、書店店頭で各社平積みで競い合っているのが紫式部や源氏物語のガイド本なんですが、その中で個人的にオススメなのが『神作家・紫式部のありえない日々』、新刊4巻が出たばかり」
先「これ、面白いよね。引きこもり陰キャの紫式部が萌えの同人誌を書いて宮中の人気者になる、という設定だけど、それを除くと、というか、同人誌といってもコミケがあるわけでもなく貴族の間で回し読みされるのだから、全体通してなかなか平安京」
後「多少のドタバタ、ギャグ場面こそありますが、大河よりよほど史実にのっとってる気はします」
先「大河では道長の正妻で彰子の母の“倫子”は“ともこ”。いっぽー『神作家』では“りんし”。どちらが正しいか、実際のところはわからないそうなんだけど、“オタク”や“推し”なんて言葉が飛び交うこのマンガのほうがみょーに平安リアルでよい感じなのだ」
後「ただ、紫式部の名を“香子(こうし)”とする説は最近ではかなり否定されているようで」
先「そんなこと言い出すと、“まひろ”って何? だわな」
後「NHKご自慢の時代考証の先生がたはご指摘されなかったんでしょうか」
先「聴取料取り立てていいお給料もらって自分たちの趣味でドラマこしらえる・・・毎日が楽しくて楽しくてしょうがなかろう(ちくちく)」
後「それにしても、先輩がそこそこ大河をご覧になっているの、ちょっと意外でした」
先「日曜夜8時になるとマイハニーがテレビつけるから。つい一緒にー」
後「マイハニー? ハニートラップ?」
先「いや、まあその、で、マイハニーが見なかったので、どうする家康の話題が出ないというか」
後「・・・先輩・・・そのマイハニーさんて、もしや・・・先輩にしか見えていない、とか? ・・・・」

2021/12/02

最終回 『かわうその自転車屋さん』 こやまけいこ / 芳文社 週刊漫画TIMES

Photo_20211202162001 ちょっとよくわからない。
 
ストーリーマンガでボスキャラ倒して大団円!みたいなケースを除き、マンガの最終回って、掲載ページがだんだん巻末に近づいて、そのうち静かに──というのが普通だろう。
 
その最終回が、巻頭カラー! 表紙カラー全面!! ・・・・・
 
いや、おめでたい扱いでけっこうなことなんですけどね。。。
 
ともかく、終わった。終わってしまった。
 
『かわうその自転車屋さん』は──いや、以前の書き込みを読み返すと言いたいことはだいたい書き尽くしてしまっている。
ピザの上のようこさんに万感の思いを込めて、今回は作者の本の紹介記事へのリンクを並べてオシマイ。
8年間底堅く楽しませてもらいました。ありがとう。
 

2021/03/25

もっと見せてやりたいな 『かわうその自転車屋さん(9)』 こやまけいこ / 芳文社コミックス

Photo_20210325155701 > さて第8巻もこれまで同様、愉快な動物村、のテイを取りながら、ちょっとした人間ドラマに自転車についてのノウハウ、TIPSをはめ込み、単行本で読めば意外や(失礼)重厚な続き物となっている。

↑は前回、8巻を紹介した際に書いたもので、今回も紹介文としては同じものになるわけだが・・・

一読した印象が、少し違う。
なんというか、収録16篇、いずれもエッジが立ってるというか・・・それぞれすっくと起立していていい感じだ。

無理やり理屈をひねると、9巻では、過去の各巻に比べ、登場人物が群れず頼らず、独立独歩で、たとえ些細であれ何かを成し遂げる話が少なくない(逆に言えば成し遂げられないことをギャグにして落とす話が少ない)、そういうことがあるように思う。

かわうそ店長は自転車屋としての底力を示し、新人漫画家愛沢くんは新連載の壁を破り、阿久くんは仕事の意味を掴み、撮影の腕を上げ、スプリントの帝王は新たなステージに向かい、カン太くんはドレミファソラシドはじめてのおつかい、(食べてばかりの)貝原さんは後輩女子を導き、大角くんは初レース優勝、兎本さんは厳しいヒルクライムを登りきる。いずれも胸のすく話ばかりだ。

土鍋で炊いたら米粒が立った、とでもいうか。
とても心地よい。

2020/06/21

『かわうその自転車屋さん(8)』 こやまけいこ / 芳文社コミックス

Photo_20200621021501 ご記憶の方も多いであろう、あれは『かわうその自転車屋さん』第7巻を紹介した折の書評の一節、

> 個人的には7冊めともなるとエピソードも増えたことだし、巻頭に人物(動物?)紹介なり用意していただけると、いいかな。

なんと! この声が作者を、芳文社を動かし──見よ、第8巻の巻頭見開きには登場動物の紹介ページが!
ネット上のデモ、国民の声が『かわうその自転車屋さん』を動かす、その時歴史は動いた!
(マイナー、ローカルな書評ブロガーが言うことではありませんね、すみません。)

さて第8巻もこれまで同様、愉快な動物村、のテイを取りながら、ちょっとした人間ドラマに自転車についてのノウハウ、TIPSをはめ込み、単行本で読めば意外や(失礼)重厚な続き物となっている。

というのも、登場する者たちはすべて外見こそ動物で、たとえばかわうその店長は水浴びが大好き、といった設定はあれど、実のところ個々人はきわめて人間的な生活、家族構成、職業等の基盤の上に立っており、またそれゆえの人生の楽しみや困難と日々相対している。ギャグ漫画にありがちなある1年の無限ループ、ではなく、常に仕事や関係が動いていくのである。
すると当然、出会いと、そして別れがある。

もちろん、穏やかな世界観を提供する作者は、別れといっても決して苛烈なものを持ち出すわけではない。
たとえば対馬くんは自転車便のメッセンジャーからサイクルアパレル会社に転職、漫画家輪尾先生のアシスタント愛沢くんは連載を得てアシスタントを卒業、ロングライド先で事故った阿久くんは自転車との別れに揺れる、などなど。

もちろん、別れだけでなく、ヨウコちゃんに憧れた大角くんのロードデビューなど、新しい出会いも用意されており、全体としては新しい仲間がどんどん増えていく体裁にはなっている。

だが、たとえば『サザエさん』や『うる星やつら』ほどに強固な設定を守り続ける意思がない場合、仲間が増えれば増えたなりに個々の関係は少しずつずれていくに違いない。

第8巻の128台目(=128話目)で、店長とヨウコちゃんの関係が急にギクシャクし、それをハッピーエンドに終わらせているのは、描き手、読み手のそういった危惧への(無意識、意識的は知らないが)一種のガス抜きであった、と考えるのは深読みが過ぎるだろうか。

・・・って「何のマンガの話?」と呆れられそうなレビューになってしまったが、単行本が出るたび意外や(再度失礼)大人のマンガだなーと感じ入って読み返す次第。自転車ファンならずとも一読推奨。

2019/11/07

小ネタ 『かわうその自転車屋さん(7)』 こやまけいこ / 芳文社コミックス

Photo_20191107160401 こちらはその『鍋猫スターハウス』と同時発売中(出版社の壁を越えて相互の帯に宣伝が掲載されている。こういうの、大好きだ)の『かわうその自転車屋さん』第7巻。

内容はあいかわらずゆったりした中に〆るべきは〆、表紙も額縁に入れて部屋に飾りたい。いい。
個人的には7冊めともなるとエピソードも増えたことだし、巻頭に人物(動物?)紹介なり用意していただけると、いいかな。

ところで『かわうその自転車屋さん』では1つ前の6巻から、カバーを取った表紙、裏表紙にちょっとしたお楽しみが隠されている。
最近はコミックの単行本で、表紙やカバー裏に4コマを掲載したり、登場人物の愚痴や裏設定を掲載したり、ということが少なくなくて、それはよいのだが、自転車屋さんのこのネタは……。

国会図書館の司書のおねーさんが取り乱しはしないかと、ちょっとわくどき。
まあ簡単に取り乱しはしないのがプロなんでしょうが。

ちなみに、下は『暴れん坊本屋さん』(新書館)でお馴染み、久世番子の『番線 ~本にまつわるエトセトラ~』の一節。

Photo_20191107160801


2019/11/04

なめる なめれば なめんなよ 『鍋猫スターハウス』 こやまけいこ / 小学館 Flowersコミックス

Photo_20191104172101 先にちょっと寄り道。

以前より取り上げたく思っていた1冊に『私の居場所はどこにあるの? 少女マンガが映す心のかたち』(藤本由香里、朝日文庫)という少女マンガ論集がある。
2008年の発行で、さすがに現在から見れば少し古めではあるが、古今の少女マンガの作家、作品を詳しく調べ、よく論じた1冊だ。

──ただ、その本を読み進めるうちに、愕然とする。

著者の求める、あるいは少なくとも当時の読者たちが求めた少女マンガとは、(あくまでこの著者によれば、ではあるが)どうやら「居場所を求める少女たちが理想の異性によって救い上げられる」といったものらしいのである。いつの間にか少女マンガは大昔の「いつかは白い馬に乗った王子様が」に立ち戻ってしまっていた、ということだ。
萩尾望都や大島弓子、樹村みのりらの、あの労作群を経て、結局、そこなのか。

少女たちの素朴な疑問に端を発するナイーブでスリリングな(男女を問わない!)個の自立を歌い上げた70年代の数々の作品が無駄だったとは思いたくない。
たとえば、、

と、ここでようやく今回の本題である。

『鍋猫スターハウス』は『くるくる自転車ライフ』や『かわうその自転車屋さん』などの自転車ライフを謳うマンガで知られるこやまけいこが月刊フラワーズに連載したショートコメディである。

デザイン会社に勤めるも、会社がつぶれて無職になってしまった東雲ふたば(41歳)。
越してきたY字型の不思議な形の団地、スターハウスのそれぞれの部屋にはなんと妖怪が住み着いていて……。

ライトなタッチで描かれた土鍋をかぶったネコやカラス天狗、ちょっとドジな座敷わらし。彼らを巡る微苦笑を招くギャグ。
いかにも「ハートウォーム」「やさしい秘密」といった言葉の似合いそうな作品だが、はたしてそれだけだろうか。

仕事がなくなれば当然衣食住に困る。住まいは築50年で格安。団地に住む人々はふたばが若手扱いされる高齢者ぞろい。

つまり、スターハウスは人と妖怪が共存するハッピータウンではなく、失職し、食べ物がなくなれば死んでしまう現実の社会なのだ。
さらりとギャグ扱いされるが、ふたばの年齢、収入、仕事については都度都度きちんと実態が描かれていく。
(そういえば『かわうその自転車屋さん』も、動物たちが和気あいあいと暮らすファンタジーワールドに見せて、実際はそれぞれがきちんと自身の身に合った仕事を持ち、働く世界だった。)

つまり、『鍋猫スターハウス』は、妖怪たちとのドタバタコメディの体裁を借りつつ、その実、会社社会からいったんドロップアウトしたふたばやその他の住人たちがスターハウスという場所と巡り合うことで衣食住の危機を回避し、仕事を模索し、社会との関係を維持、もしくは社会に復帰するまでの、それぞれの骨太な物語なのである。

ポイントは、ふたばを助けるのは決して突然現れた白馬に乗った王子様ではなく、彼女が張り巡らせたネットワークだということ。また、この先によしんば得恋、結婚の物語があったとしても、それはふたばの人生のすべてではない。

もちろん、そんなしかつめらしい骨子などどうでもよく、本作は奇妙な妖怪たちとふたばの日々を描く呑気で楽しいシチュエーションコメディと読めば十分だ。
ただ、こういった作品の中にもかつての少女マンガのあの登場人物たちのさわやかだが苦い葛藤が脈々と生きているように思うとなんとなく嬉しくなってしまうのだ。

2015/11/12

マスターピース 『かわうその自転車屋さん(2)』 こやまけいこ / 芳文社コミックス

Photo嘘だと思ったら食べてみてください」はマルちゃん正麺だが、『かわうその自転車屋さん』1年ぶりの新刊は「嘘だと思ったら読んでみてください」レベルの出来栄えだ。

新・旧・軽・重さまざまな自転車、サイクリング、ロードレースの楽しさや知識を縦軸に、動物たちを主役に少し意外で心和むショートストーリーが展開する。

登場する動物たちはただ可愛いだけでなく、自然界での生態と自転車選びをかけ合わせられたり、それなりにコクのある擬人的な物語に仕立て上げられたり。

カフェの併設された自転車屋「ストラーデ・ビアンケ」やかわうそ店長、ヨウコさんら主なキャラクターの紹介で紙幅を費やした1巻に比べても、動物たちのユーモアあふれる活躍にゆったりページを使えた2巻はさらに世界が広がった。表紙もいい
(しいていえば動物たちの姓の漢字が難敵だ。貝原、海里にはついていけたが、羽沼や鐘森はググってなお難し……)

Amazonなど見てみると、作者はイラストレーターとしてのキャリアは別に、ストーリー性のある連載マンガは本作が実質初めての単行本らしい。それでこのクオリティ。マンガ家という職業の業の深さをまざまざと感じる夜の晩秋だ。

もちろん、マンガにはさまざまなジャンルがあり、さまざまなアングルがある。本作はかなり狭い、一つの方向の表象にすぎない。だが、このアングルでここまで描けたなら成功だろう。
嘘だと思ったら読んでみてください。

2014/10/24

らぶりーさいくらー 『かわうその自転車屋さん(1)』 こやまけいこ / 芳文社コミックス

Photo最近、に限らないかもしれないが、身辺で自転車にはまる者が増えている。集って遠征する者、レースに出る者、ラブライブの痛チャリでイベント突入を試みる者。ただしコミケ会場は自転車乗り入れはNG。なのでauの車載型基地局も『弱虫ペダル』とコラボりながら自転車そのものは持ち込めなかったもよう。

 

絵本自転車をテーマとしたコミックエッセイでおなじみ、こやまけいこさんの新作『かわうその自転車屋さん』では、動物たちの町でも自転車は大切な乗り物だ。誰もが坂の上の自転車屋さん「ストラーデ・ビアンケ」にやってきてはピザやプリンパフェに舌つづみを打つ。……ん? ピザ? パフェ?
そう、「ストラーデ・ビアンケ」は自転車屋さんなのにカフェ風の造りで、お客は皆ピザセットを食べ、ゆっくりくつろいでは帰っていく。そこでかわうその店長は、今日も正しい自転車のあり方を世に広めんと、早朝から裏の川で水浴びに朝ご飯、それからシャワー浴びて、洗車して、パンク修理で水につかって(らぶりー)、ときには隣駅まで道案内の帰りにどんぶらこと川を下りーの、夜は風呂でロードレース観戦ーの……って、一日中水浴びしてばかりではないか。なんとかして、店員の羊のヨウコちゃん。

 

登場する動物たちは誰もが個性的で、それぞれに合わせた自転車が紹介されていく。絵柄はキュートだが、自転車についての案内は本格的。あげくは町をあげてのロードレース大会、流しかわうそだー。
視聴率にあえぐTVマン諸君、ここはひとつ本作のTVアニメ化などいかがだろう。無論映画のほうは実写版。バクやシマリス、ツシマヤマネコ、イノシシ、コモドドラゴンら、本物の動物たちが大小の自転車で画面いっぱい大活躍!! ……たぶん……。

 

ちなみに「ストラーデ・ビアンケ」は「白い道」の意。「ビアンキ」といえばイタリアの有名な自転車メーカーで、社名はBianchi(白)ながら、自転車の塗装は緑に近い青のCeleste(碧空、天空)カラー。なにゆえに~。

2012/09/07

これも業(カルマ)? 『くるくる自転車ライフ』 こやまけいこ / イースト・プレス

Photo 「こぎ遍路」とは、白のサイクルジャージにメット傘の弘法大師が、八十八箇所のサイクリングロードを茄子をかじりながらのりりん、のりりんと……

 

 あれ? なんかヨソのデータと混ざってる? 巻き戻し、巻き戻し。

 

 はい、今回取り上げるのは、あのムチパンダの、ぶいふぁみ君の、それから『ふしぎだいすき! マジックえほん』その他あれやこれや!のイラストレーターこやまけいこ氏による『くるくる自転車ライフ』。やー、あなたもくるくる? 私もくるくる。

 

 『くるくる自転車ライフ』は、ふとしたきっかけで自転車の魅力にとりつかれ、折りたたみ小径自転車「BD-1」を購入したこやま氏とそののりりんな夫君が、やがてどっぷりサイクリング・ブギ、江ノ島までの往復110kmは完走するわ(18インチの折りたたみ自転車でそんな長距離すんなり走れるとは!)、ロードレース観戦に出かけるわ、正月の山手線一周にチャレンジするわ、しらす丼は食べるわ餃子は食べるわ蕎麦は食べるわ、新しい自転車や大小いろんなガジェットは購入するわ……そんな自転車ライフをきゅきゅっと描いた4コママンガ集。

 

 展開や味わいこそゆるめだが、自転車へのはまり具合はギアもがっつり。引越し先の条件も一に自転車、二に自転車、三四がなくて五に自転車。一方、初心者のための細やかなナレッジやサイクリング向けファッション紹介ページ(とーとつに女子がかわゆいぞ)など、小生のごときママチャリ読者へのサービスも行き届く。そしてロードレースの魅力に目覚めたけいこは、嵐の中、必殺技ローリングパニックを手に、ツール・ド・フランス出場をかけてライバルとの決戦に……いや最後のほう違うからそれ。

 

 どうも自動書評ロボ「カラスマル3型」の調子が今一つのようだ。今宵はこれで失礼しよう──Queenの“Bicycle Race”が鳴り響く──さらば。ふはははは……。なに?
 「ぼくは自転車を愛する男だ とびおりるならきみだけとびおりろ!」
 ……いやそれ、萩尾望都の3月うさぎだから。

2001/02/07

『ふしぎだいすき! マジックえほん』 作・上口龍生,絵・こやまけいこ / 晩成書房

Nimg4305【あのね あのね】

 

 左手の親指を「く」の字に曲げ,同じく「く」の字に曲げた右手の親指を曲げたところでくっつけ,くっつけたところを右手の人差し指で隠して右手をスライドし,「わぁ! 親指が切れちゃった!」。
 手品と言うも恥ずかしい,文字通りの子どもだましだが,当時5歳と4歳の息子たちには風呂の中でウケにウケた。そしてその翌日,ちょっとした事件が起こった。下の子が,「パパのまじっくをぼくもやりたい」とカッターで親指を切ろうとしたのだ。
 幸い怪我はなかったが,今さらながら子育ての怖さ,責任の重さにズシンとやられた気分だった。
 他愛ない手品でそれだ。子どもの本を1冊選ぶのも神経を遣う。妙な本は読ませたくない。かといって,雑菌を知らない心身は弱い。

 

 今日ご紹介するのは,それからほんの少し大きくなった我が家の子どもたちへのお土産である。
 本書『ふしぎだいすき!』は,プロマジシャン・上口龍生氏が原作,パソコン誌の連載マンガやWebサイトのイラストで知られるイラストレーターのこやまけいこさんがマンガを担当したマジックえほん。
 主人公の「しんちゃん」がマジックショーをきっかけにふしぎな世界に迷い込む「ふしぎのくに」と,身近なものを使ってできる手品の数々を紹介した「ふしぎのもと」の二部構成になっている。「ふしぎのくに」で出会ったさまざまなふしぎが,「ふしぎのもと」で子どもたちにも体験できる手品として紹介され,その手品を知って「ふしぎのくに」を読み返すとまた「ふしぎのもと」を試したくなり……。
 子どもたちだけでない。大人にとっても「ふしぎのくに」の最後の1コマは,とても大切なものだ。忘れがちだけれど,忘れてはいけないものがそこにはある。

 

 「ふしぎのもと」で紹介されるのは,10円玉やひもを使って行う簡単な手品や,1枚の絵が若い淑女にも老女にも見えるとか,
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のどちらが長いか,といった,目の錯覚の引き起こすふしぎのあれこれ。知っているのもあったが,知らないものもあれこれあった。また,子どものころに親や友だちから教わり,友だちを驚かせた,ちょっとした手品のいくつかを何十年ぶりかに思い出したりもした。

 

 表紙回りをはじめ,あちこちに工夫がこらされていて,楽しい。
 巻末には付録として,切り取って使える実践用のカードも付いている。子育て真っ最中の方はもちろん,子ども会の担当の方などにもお奨めしたい。
 とりあえず,この週末,父はヒーローである。

 

 ちなみに,イラストレーターのこやまさんのホームページ「こぐま工房」はこちら