カテゴリー「ハコヅメ ~交番女史の逆襲~」の6件の記事

2022/04/14

大ゴマの魅力 「インビンシブル」「ハコヅメ」など

Image1_20220414185501 モーニング No.20(2022 4/28)では、ラグビーマンガ「インビンシブル」(瀬下 猛)の第1部が完結した。

先号からセリフ1つない試合描写の連続で・・・というスラムダンキーな話はここではそっちにおいといて、今回のお題は最後のページの大ゴマである。
ご覧のとおり、主人公のドアップで1ページ費やされているのだ。
トライを決め、なお上目遣いに挑戦的。いい顔である。

ふと思い返すに、ここしばらく、同じモーニング誌上で、たとえば「ハコヅメ ~交番女子の逆襲~」(泰三子)、「JKさんちのサルトルさん」(さのさくら)、「踊れ獅子堂賢」(常喜寝太郎)など、表紙、途中、最後のページ問わず、主人公のアップで(ほぼ)1ページを埋める、印象的なページが多かったように思う。

もちろん、1ページ、ないし見開き2ページを費やして強烈なコマを置くというのはマンガでは別に珍しいことではない。
古いところでは岡田史子が「墓地へゆく道」に“日だまりにうずくまり汽車にひかれる夢をみている少女”を見開きに描き、稀有を越えていまだに語り草だ。

ただ、この半年あまりのモーニングの大ゴマは、、、
以下、まったくの推量に過ぎず、立証もなにもない指摘なのだが、
今、マンガというものの主流がじわじわとスマホやパッドの画面のちんまりした枠の中に移りつつある中、作家たちが(電子ブックでも、単行本ですらなく)B5版の紙の雑誌の1ページのパワーを気持ちよく使い、そこに全身全霊をかけて主人公を描くという、その現れではないか。

上にあげたいくつかの例は、いずれも雑誌サイズでなければ得られない魅力と迫力に溢れている。
週刊の雑誌を手にした瞬間以外、単行本でも電子ブックでも得られないライブな感興なのである。
Image3

2020/12/10

明眸皓歯 『ハコヅメ ~交番女史の逆襲~』(第15巻) 泰 三子 / 講談社 モーニングKC

Photo_20201210153401 60余年も生きているとそこそこ心の柔らかいところも枯れ、草臥れてしまって、本の中の乙女に恋焦がれたりといった思いもとんと久しく、、、

と思っていたところが、最近、『ハコヅメ ~交番女史の逆襲~』を妻の目前で読むのがどことなく面映ゆい、できれば避けたい、つまるところ後ろ暗い。
ありゃりゃっ、これはつまり、おのれはこの作品のヒロイン、川上麻依にほのかな恋をしているのだ、と気がついて、それでもモーニングNo.52(2020.12.10)のページを保存用に切り取る手が止まらない。
カラー、1ページ、麻依のドアップページが用意されていたのだ。きゃっ

──戯言はさておき、『ハコヅメ』の目覚ましい進化、深化が止まらない。

当初は警察、交番業務の理不尽さ、厳しさ、その果てにあるカタルシスを描く1発ギャグ、せいぜいが不器用な青春ドラマと読めていたものが、「同期の桜」編、「奥岡島事件の恩賞」編等いくつか長編エピソードを踏まえ、コマの厳しさが1話ごとに極まり高まって、最近は実にモノ凄い。
極端にいえば、犯罪、恋愛、家族、仕事といったヒトの営みを1コマで彫り刻み、次の1コマで切って捨てる、その手際は凄絶と言って過言でない。
どうすれば週一の連載にこれだけの伏線、登場人物の描き分けを仕掛けた上でこうした起承転結、こうしたオチにもっていけるのか、描き手の頭の中を見てみたい、稀有な領域。
10年の警察勤務はそれほどに多岐にして深いのか、それとも作者特有の資質なのか。

強いて難点をいえば作者の世界観が都度都度立体的過ぎて、一度や二度読み返した程度では言わんとすることが理解できない迷宮のような展開が少なくない。
有り体に言えば、わかりにくい話がときどきあるということで、逆に言えばそこを踏まえて1巻から繰り返し読めば胃を熱くすること純米吟醸の豊かさである。芳醇。

追記(1月11日)。
15巻を読み返し、後で気がついたのが、129話の「町内会長として地域の防犯ボランティア活動を・・・」の前後のコマ。これは4巻の29話につながるわけで、つまり2年前からこの流れが想定されていたとするなら(もしくは後からつなげられたとしたなら)本当に、凄い。ちょっと鳥肌たってきた。カラスだけに。

2020/10/05

最近の新刊コミックから 『スインギンドラゴンタイガーブギ(1)』『ハコヅメ ~交番女史の逆襲~(14)』

Photo_20201005173201 『スインギンドラゴンタイガーブギ』(第1巻) 灰田高鴻 / 講談社 モーニングKC

この50年余り、その時々のマンガをばらばら読んできたが、とくに最近、「演奏」を描く技術が段違いに発達してきたように思う。
手塚治虫や石森章太郎永島慎二などの古いマンガにもジャズやクラシックの演奏シーンを描いたコマは記憶に親しいが、動いてないというか、演奏シーンを写真に撮ったものを絵にしたそれを越えるものではなかった。
一方、最近の、たとえばさそうあきら『神童』や二ノ宮知子『のだめカンタービレ』、一色まこと『ピアノの森』などでは、フルオーケストラの演奏の、刹那であれ交響の厚み、流麗さを描いて読み手を圧する。

今回単行本のなった『スインギンドラゴンタイガーブギ』は、昭和26年、米軍占領下の日本でジャズシンガーとして活躍する少女於菟(おと)を描く作品だが、そんな音楽マンガの新たな1コマを切り開いたように思われてならない。フワフワ跳ねるように歌う彼女の、しっかりビートを刻んだ歌唱が描かれる。こと、「聞こえる」という意味ではこの上ないコマが並ぶ。

ただ、この作品は明るくパワフルな於菟のコメディの裏に、心中未遂で今も意識の混濁した於菟の姉の物語がある。1巻中数えるほどしか登場しない、この姉を描く描画がまた凄い。
アメリカンニューシネマで、主人公たちのリアルで無骨な映像の合間に、唐突に、奇妙で幻想的で残酷な回想シーンが紛れることがあるが、自分が誰に恋をしていたのかわからなくなるような、そんな鮮やかで人を打ちのめす手際をこの作者は持っているようだ。

おまけ。
本書を手中にできたら、カバーをめくってみよう。昭和育ちなら、泣く。かも。

14 『ハコヅメ ~交番女史の逆襲~』(第14巻) 泰 三子 / 講談社 モーニングKC

TVドラマ化はまだかの『ハコヅメ』新刊。
元警官だった人がマンガ家になって、業界(?)奇特ネタを披露。あるある・・・とか舐めていたら、いやいやいやとんでもハップン、堂々の人間描写、長編作家でもあらせられた。
そもそも14巻にいたっていまだ尽きぬネタの宝庫、どうなっているのか。

本巻からは覚せい剤差し押さえにかかわる「奥岡島事件」が展開するが、この作者の長編はいささかややこしいので今回はさらっと読んで次巻決着したら合わせてまたゆっくり読み返そう。

それにしてもなんなのこの百合表紙。家人に見られたらどうしてくれる。

2020/01/27

藤部長には私がついてます 『ハコヅメ ~交番女史の逆襲~』(第11巻) 泰 三子 / 講談社 モーニングKC

Photo_20200127170201 交番勤務婦警のアレやコレやを描く『ハコヅメ ~交番女史の逆襲~』、そろそろ美味しいネタも尽きかけた? と仏様目線でハスに眺めていたら、前巻(10巻)の後半から俄然過去の大きな事件が糸の向こうに浮上してうわぁ、重い。

なるほど、『ハコヅメ』は単に交番という「ハコ」に勤務する(詰める)という意味のみならず、事件の資料を収めた段ボールの箱に詰まった真実、も掛けているのか。
こうなるとテレビドラマ化もまんざら遠い道ではない。

そういえばテレ朝の『ケイジとケンジ』が例の件で早めに店じまいしそうなので、その後にどうだろう。
上司役に柳葉敏郎、風間杜夫、巡査部長、巡査役に桐谷健太、比嘉愛未、今田美桜とか、なんかキャスト、セットの大半、まんま流用できそうだし。
(とはいえ本作は警察組織、法制度、人間関係が煩雑のうえにも煩雑、かつ飛び交う隠語暴言が醸し出す魅力などなど、テレビドラマ化には一工夫も二工夫も必要とは思うのだけれど。)

2018/09/03

ヒラが浮き足立つなよ 『ハコヅメ ~交番女史の逆襲~』(第3巻) 泰 三子 / 講談社 モーニングKC

3前回紹介して間がありませんが、待望の新刊が発売されたので取り上げておきますね。

 

3巻では、女子中高生を狙う性犯罪者を追う連作が、主人公から脇役まで全員全ページ全コマキレキレッで、そりゃーもうものっすごい出来です。

 

ことに、合同特別捜査本部の描写がソリッドでピリピリきます。

  ヒラの刑事は
  ホントよく
  しゃべるな

 

  その決定打を
  見つけるのが
  てめぇらの
  仕事です

 

に続く本部捜査一課班長と捜査員たちのやり取りがたまりません。
働き方改革? それどんな食いもんですか。甘いの?

2018/08/02

『ハコヅメ ~交番女史の逆襲~』(現在2巻まで) 泰 三子 / 講談社 モーニングKC

2カバーによると作者は「某県警に勤めること10年」とある。安定・安心の公務員の身分を捨てて専業マンガ家を選んだのだ。ほとんど犯罪である(
内容はというと、現場経験に基づくブラックな警察署勤務の本音、裏話を愚痴愚痴と……これが実に面白い。

 

作画はお世辞にも巧みとは言い難く、とくに若い女性警官が「目」で区別がつかない(同じ制服を着ていると、髪型やセリフで人物を区別しなければならない)。しかもその「目」の外側に余計な線があって、怒っている、嘆いているの区別がつきにくい。さらにコマ展開にリズムがなく……
とかとか、そんな弱点をテイヤっとちゃぶ台返して余りある魅力が本作にはある。

 

マンガは「絵」によると同時に、「言葉」による創作物だと思い知らされるのが、こんな作品に出会ったときだ。

 

  ちゃんと
  言わなきゃ
  いけないこと
  あるでしょ

 

とか

 

  とても
  きれいな
  ご遺体
  でした

 

という、ただこう引き写してしまえばなんてことのないセリフが、作中でどれほどの重みを伝えるか。

 

(連載を毎号楽しみに読んでいるので知っているのだが)8月末発売予定の第3巻も間違いなく大切な1冊になる。確約する。