宇宙(そら)愛づる入道、あさりよしとおのロケット好きは病膏肓に入り、ついに仲間を集い、手作りロケットを打ち上げるにいたる。
本書は、そんな「なつのロケット団」の現在進行形の記録である。ちなみにマンガではない。
きっかけはあさりよしとおが「宇宙作家クラブ」の講師に招かれた宇宙機製作エンジニア、野田篤司にぶつけた次の質問だ。
「最少の、衛星打ち上げロケットを作ろうとしたら、一体どれくらいのサイズにできるか」
応える野田の
「三段式で、全体のボリュームはドラム缶1本分強。全長は3m程度」
という計算がのちに作品『なつのロケット』を生み、さらにはロケット好きなクリエイターやエンジニアたち、さらにはホリエモンこと堀江貴文まで集まってヒャッハーなロケット実機製作に突き進むことになる。
ペットボトルロケットの水準ではない。既成のロケットエンジンを購入して飛ばすのでもない。ホームセンターの材料と町工場の技術を使い、手作業で衛星を軌道投入可能なミニマムサイズのロケットを作る。
目標は秒速7900m以上で打ち上げ、高度200km以上に到達することだ。
宇宙事業といえば国家規模のものしか知られていないため、途方もなく高度で素人には到底手の届かないものと考えるのが普通だ。もちろん基礎的な知識と技術は必要だし、さまざまな困難はともなうが、民間で宇宙まで飛ばすことがまったく不可能ではないことを本書は教えてくれる。困難とはたとえば「タンクに液体燃料が入らない」といったレベルの問題であり、それはアイデアや工夫によってやがては凌駕できるのだ。
もちろん精密部品については金属加工業者への発注が必要だが、それ以外は金も場所(初期は自宅キッチン、ユニットバス!)も持ち寄りである。テストベンチ、安全、回収、撮影といった外回りのこまごまがエンジン開発や液体燃料の扱いと同じ重みで記されているのも興味深い。
「なつのロケット団」がのちに協力を仰ぐ北海道の植松電機社長の発言がいい。
「だれもやったことがないから無理というのは、やらない言い訳」
「世界初のことは教えてもらえないので自分で試すしかない」
Web上にはあとがきにある通り、今年8月に6号機にあたる「すずかぜ」が高度5000mをめがけて打ち上げられ、回収されるまでをオンボードカメラで記録した映像が公開されている。
アトムの視野だ。