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カテゴリー「あさりよしとお」の14件の記事

2016/08/23

多摩川から宇宙(そら)をのぞむ 『蒼の六郷』 あさりよしとお / 白泉社

Photo小学4年生の真潮クンが女子高校生の昂を誘って多摩川下流から東京湾へ、小型潜水艇で大冒険。怪しい黒幕、窓外に見ゆるは巨大ダコ!

物語は作者得意のちょっとエッチなドタバタギャグで始まるが、やがてあの『まんがサイエンスⅧ ロボットの来た道』や『なつのロケット』に通じる切なさ、寂寥感が漂い始める。──

『蒼の六郷』のタイトルは『サブマリン707』の小沢さとるの海洋サスペンスマンガ『青の6号』から借りたものだが、それはともかく、舞台の「六郷」は大田区の多摩川沿い。
シン・ゴジラといい、どうしたんだ。大田区の特区化が進んでいるのかそうなのか。

2013/10/21

あさりよしとお祭り 最終回 『ナウシカの飛行具、作ってみた 発想・制作・離陸──メーヴェが飛ぶまでの10年間』 八谷和彦 / 幻冬舎

Photoピンクのクマの「モモ」がとことこ手紙を運んでくれるメールソフト「PostPet」をご記憶だろうか。烏丸もペットのカメの「まくら」に愛の原稿催促メールを再三運ばせたものだ(遠い目)。
その「PostPet」の作者であるメディアアーティスト、八谷和彦が、なんとあの『風の谷のナウシカ』のメーヴェを実作した。──本書はその発案から飛行実験にいたる10年を語ったものである。

1冊の本としては、メディアアーティストという職業の手広さ、苦心、「PostPet」作成の背景、東日本大震災に際しては放射線やガイガーカウンターの啓蒙ミーティング、と、当節のカルチャーの裏話的な読み物としても楽しめる。しかし、なにより、語り手が、ナウシカの原作への感動から白い飛行具メーヴェを作ってみようと発案し、それをこつこつ推し進めることを(収支はさておき)「仕事」にしてきた、という点が独特だ。
グライダーを趣味とする、といったありきたりのアングルではないし、さりとてグライダーで運ぶ、インストラクターになる、といった実業のレイアでもない。作ってみせること、飛んでみせること、そのこと、そのもの(プロジェクト)がまるごとアートとして示されるのである。

メーヴェを作るという発想は魅力的だし(プロペラ機でなくジェットエンジン。ロマンだ……)、模型制作からゴムで引くグライダー実験、最後には自走しての飛行にこぎつける経緯と努力には感動を禁じ得ない。しかし、正直にいえば、それをプロジェクト化して「仕事」にしてみせる著者のスタンスは今一つよくわからない、というか実感がわかない(決して批判しているわけではないので念のため。当方の貧弱な引き出しには、これを「暴走」でなく実現してみせる生き方が収まらないのだと思う)。

そして、そんなことより、本書で負のベクトルに刻まれたのは、でき上がったメーヴェ(M-02J)で飛行するまで語り手は長年にわたりハングライダーなどで入念な飛行訓練を繰り返したこと、また一方、このメーヴェは決して安全な乗り物ではないと本文中で幾度か念を押されていることだ(たとえば巻末の「謝辞」には「死なないようにします」とある)。
ヒトは、飛べるようにはできていない。3mの高さからでも、落ちようが悪ければ死ぬ。
それはつまり、焦がれても、焦がれても、ヒトはナウシカやシータやキキにはなれないということでもある。

八谷和彦は「なつのロケット団」の一員。また、巻末にあさりよしとおがメーヴェの独特な形状と飛行の秘密を解き明かした「まんがサイエンス」特別版を提供している。
本書をもって秋のあさりよしとお祭りの最終回とさせていただいた次第である。

2013/10/14

あさりよしとお祭り その4 『宇宙へ行きたくて 液体燃料ロケットをDIYしてみた 実録なつのロケット団』 学研科学選書

Photo宇宙(そら)愛づる入道、あさりよしとおのロケット好きは病膏肓に入り、ついに仲間を集い、手作りロケットを打ち上げるにいたる。
本書は、そんな「なつのロケット団」の現在進行形の記録である。ちなみにマンガではない。

きっかけはあさりよしとおが「宇宙作家クラブ」の講師に招かれた宇宙機製作エンジニア、野田篤司にぶつけた次の質問だ。

 「最少の、衛星打ち上げロケットを作ろうとしたら、一体どれくらいのサイズにできるか」

応える野田の

 「三段式で、全体のボリュームはドラム缶1本分強。全長は3m程度」

という計算がのちに作品『なつのロケット』を生み、さらにはロケット好きなクリエイターやエンジニアたち、さらにはホリエモンこと堀江貴文まで集まってヒャッハーなロケット実機製作に突き進むことになる。

ペットボトルロケットの水準ではない。既成のロケットエンジンを購入して飛ばすのでもない。ホームセンターの材料と町工場の技術を使い、手作業で衛星を軌道投入可能なミニマムサイズのロケットを作る。
目標は秒速7900m以上で打ち上げ、高度200km以上に到達することだ。

宇宙事業といえば国家規模のものしか知られていないため、途方もなく高度で素人には到底手の届かないものと考えるのが普通だ。もちろん基礎的な知識と技術は必要だし、さまざまな困難はともなうが、民間で宇宙まで飛ばすことがまったく不可能ではないことを本書は教えてくれる。困難とはたとえば「タンクに液体燃料が入らない」といったレベルの問題であり、それはアイデアや工夫によってやがては凌駕できるのだ。

もちろん精密部品については金属加工業者への発注が必要だが、それ以外は金も場所(初期は自宅キッチン、ユニットバス!)も持ち寄りである。テストベンチ、安全、回収、撮影といった外回りのこまごまがエンジン開発や液体燃料の扱いと同じ重みで記されているのも興味深い。

「なつのロケット団」がのちに協力を仰ぐ北海道の植松電機社長の発言がいい。

 「だれもやったことがないから無理というのは、やらない言い訳」
 「世界初のことは教えてもらえないので自分で試すしかない」

Web上にはあとがきにある通り、今年8月に6号機にあたる「すずかぜ」が高度5000mをめがけて打ち上げられ、回収されるまでをオンボードカメラで記録した映像が公開されている。
アトムの視野だ。

2013/10/10

あさりよしとお祭り その3 『小惑星に挑む』 白泉社 楽園コミックス

Photo『小惑星に挑む(Hoshi ni Idomu)』は、小惑星イトカワに到達した無人探査機「はやぶさ」の帰還をテーマにしたもう1つの「まんがサイエンス」である。

不思議なことに、対象が「はやぶさ」であることはカバーにも作品中にも一切明記されていない。
JAXAの了承を取る手続きに問題があったのか、「はやぶさ」が話題となる以前から取材を重ねていた作者がブームに乗じたと見られることを嫌ったのか──真相はわからない。

作中ではあさりちゃん、あやめちゃんの代わりに宇宙人の女の子2人が進行役を果たす。が、作者の宇宙好き、ロケット好きが高じてか、得意の不条理ギャグは控えめで、全編「解説」基調の作品となっている。地球への軌道やイオンエンジンの構成など、きちんと理解するとなるとそれなりに難解だが、すべて理解できずとも作品としては楽しめるので心配ない(この程度で腰の引ける方は、そもそもあさりよしとおの宇宙本に手に出したりしないだろう)。

本書のもう1つ、大きな特徴は、地球人、つまり「はやぶさ」を開発し、打ち上げ、何年にもわたり声を掛け続けた技術者、スタッフがただ1人、1コマとて登場しないことだ。
そのため「はやぶさ」の帰還途上のさまざまな困難はセンチメンタルな美談、人情噺に流れず、ただ技術的な準備と対処の積み重ねとしてのみ描かれていく。それが

鳥肌の立つような感動を招くのだ。

2013/10/09

あさりよしとお祭り その2 『まんがサイエンス Selection 人体の驚異』 学研マーケティング ノーラコミックス

Photo_2その『まんがサイエンス』のコンビニコミック版。B6サイズ、500円。
生きているうちにこんなものにお目にかかれるとは夢にも思っておりませんでした。

内容は、既刊から人のカラダに関する話題をとりまとめたベスト集成20話。おお、懐かしのケペル博士黒子付きも登場だ。あやめちゃんがこれほどしつこく「太り気味」「う○こ」ネタでいじられていたとは。あさりちゃんかわいい顔してドS。

しかし、斜めなギャグマンガのふりをしつつ、DNAと寿命についてなど、科学に関する内容はなかなかに深くて重い。試しに寝る前に読み返してみる。ぐだぐだに怖い夢を見てしまった。

あさりよしとお祭り その1 『まんがサイエンスXIV』 学研マーケティング ノーラコミックスDELUXE

PhotoASTEROID Miners 2』あたりから、気がつけばあさりよしとお強化月間である。
時代がようやく追いついてきたのか。残るは叡智の光、『ラジヲマン』か──。

ともかく、まずはくるくる回転図書館でもおなじみの『まんがサイエンス』、新刊から。

掲載誌が小学生向け「科学」から「大人の科学マガジン」に移ったせいか、核分裂からヒッグス粒子まで大ネタ炸裂。かなり難度の高そうなテーマが並んでいるが、そこを人三化七の怪しい専門家たちが無理やり教えてくれるのがこのシリーズ。とくに放射線と放射性物質の違い、ベクレルとグレイとシーベルトの違いなど、これよりわかりやすい記事があったら持ってこいやー、な水準。
とはいえあさりちゃんあやめちゃんによるスチャラカ展開は昔のまま、昔というのはつまり古いものだと26年前のことで、小学生の頃にこの作品で物理・生物・化学の楽しさ面白さに触れた子供たちがそれぞれの勤め先で主戦力になってお釣りがくるほどの年月だ。

もし今世紀末まで日本の科学力がそこそこ維持できたなら、その大陸棚の一部は『まんがサイエンス』の力であり、逆に日本が科学立国たり得ないなら、それは『まんがサイエンス』を広く読ませてやれなかった大人たちの責任だろう。あ、逃げた。あ、また逃げた。

2013/08/11

宇宙は広い、宇宙は狭い 『ASTEROID Miners 2(アステロイド・マイナーズ 2)』 あさりよしとお / 徳間書店 RYU COMICS

Am2011年にいったん刊行告知されながら、説明なく延期されてきた第2巻がようやく発刊された。
延期の理由はよくわからない。結局収録されなかった未完作がかかわっているとの説も目にするが、実作を見ていないので論評は控えたい(←できない、が正しい)。

タイトルは直訳すれば「小惑星の鉱夫たち」といったところか。これはかなり実態を表している。
人類が宇宙に進出し始めた時期に宇宙で働くとはどういうことか、この作品はそれを甘々した想像力でなく、科学的な推論を重ねて推察し、描いているのである。

フレイバーは多少ブラックなギャグではあるものの、結果として全体にプロレタリア文学のパロディのようになってしまい、マンガ作品として爽快とは言いかねる。
主人公が地べたならぬ狭い居住空間を這いずって苛立ちの声を上げてばかりいる作品が多い中、「Mission 05 独裁者の幻想」は宇宙戦闘機を開発することで国威高揚を企てる独裁者をおちょくった比較的明るい(?)作品だが、それでも結果は「宇宙戦艦なんたら」やら「銀河かんたら伝説」やらの夢を打ち砕いて終わる。

だが、シニカルだから否定的、というわけでもない。
作者は宇宙戦闘機が弧を描いて撃ち合い、おしゃれな宇宙服の恋人が待ち構えるようなウェスタンSFに対し、足を地につけた、もとい天井の低い居住空間にしゃがみ込むような登場人物を描くことで、宇宙工学の基礎を語り、厳しくもリアルな宇宙開発への夢を共有しようとしているのである。

宇宙開発への作者の本気度は、過去のいくつかの作品からもうかがい知れる。
推奨は(何度でも推したい)『まんがサイエンスII ロケットの作り方おしえます』、そして『なつのロケット』の2作。

2004/11/15

蒔かれた種子としてのジュブナイル 『ヴァイスの空』 原作 あさりよしとお,まんが カサハラテツロー / 学習研究社 ノーラコミックス

090【空なんて ないの。】

 後世畏るべし,子供たちの記憶力はバカにできない。
 ずっと以前のことだが,妹夫婦から小学校低学年の姪,甥を撮ったビデオが届いた。そのビデオの中で,彼らは「今日見てきた映画の歌を歌います」とその日映画館で一度聞いただけのモスラの歌を歌ってみせた。あの,(いにしえのモスラではザ・ピーナッツ演ずる小美人が歌った)何語とも知れぬ雅歌である。

 自分のことでいえば,やはり小学生の頃に,従姉の部屋で読んだ学年誌の連載マンガが忘れられない。
 子供の目にも『サイボーグ009』の真似とすぐわかるそのB級SFマンガでは,悪の組織がサイボーグ戦士を体育館のような大きなフロアいっぱいに集結させ,彼らが一語一語組織の命令に服従することを見せつける。立て。右を向け。座れ。囚われた主人公たちは,縛られたままそのさまを見つめる……(このあたり,記憶があいまい)。
 もう30年以上昔の,雑誌名も月号もわからない作品,それも連載の1回分を読んだだけなので,そのシーンに至る経緯も後の展開もわからない(覚えていないのではない。読んでないのだ)。
 ただ,妙に克明に覚えているのは,その中の一コマで,悪のボスの命令にそろってしゃがむ無表情な下っぱ戦士たちの中に,ただ一人,動きが遅れているのがいたことだ。その下っぱにとくに意味があるわけではなさそうで,荒っぽいマンガ家のペンがなぜかそう描いただけだとは思うのだが……現在に至るも,会社やサークルなど,さまざまな組織の中で(よきにつけあしきにつけ)はみだす者を見るとき,思うとき,前頭葉にあの白っぽいコマが警鐘のようによみがえる。少々大袈裟に言うなら,体育会系の組織などで全員が無条件に上長に従属することに嫌悪を感じる性癖の,一種のイコンとしてそのコマがあるのだ。

 さて,『ヴァイスの空』は学研の「4年の科学」2002年4月~2003年3月号に連載されたSFジュブナイルファンタジー。
 ロボット警察「ポリツァイ」に管理された穏やかな社会に暮らすはみ出しっ子のヴァイスは,「空が見たい」と友人ネロと日々工夫を重ねる。ある日,黒いポリツァイに守られた少女ノワールと出会ったヴァイスは,思いがけない冒険に巻き込まれる。ヴァイスたちが暮らしてきた世界は。そしてヴァイスが見たがっていた空は。

 小学4年生向けなのだから,あさりよしとおらしいスプラッタな展開は期待(?)しないほうがよい。『空想科学エジソン』を3巻できれいに完結させた(2巻は少しダレたが,最終巻はけっこう泣ける)カサハラテツローも,本作ではあまり背伸びをせず,『未来少年コナン』や『ドラゴンボール』などの人気作品から雰囲気や手法を手軽に借りて,薄味に料理した印象である。
 しかし,すべり気味のギャグもたまに配して軽いタッチで描かれた作品ではあるが,その根底のストーリーはなかなかシリアスで,未来世界の選択肢を苦く問う面もないわけではない。とくに遺伝子操作で記憶を失いながら大人と子供の世代を繰り返す不老不死の「赤」の民,ルージュの設定はかなり重い。

 大人が読めば先の展開も読め,「よくあるパターン」で済んでしまうようなお話ではある。光瀬龍,萩尾望都の『百億の昼と千億の夜』から宗教,哲学的要素をざっくり削ってさらに薄めたようなストーリーといえなくもない。
 だが,小学4年という,心もほっぺたも柔らかい時期にこの作品に出会ったことはきっとその子の記憶に何かを残すだろう。「4年の科学」を毎号買ってもらえるとは限らず,連載を飛び飛びにしか読めなかった子もいるだろう,従兄姉の家でたまたま目にしたもっと小さい子供たちもいたかもしれない。だが,小学生の頃には意外とその作品の全編を通して読むかどうかは問題でない。
 彼らは連載の1回分,1回分から,まるで樹木が水分や養分を吸い上げるように,必要なものだけを読み取り,怖いものだけを心に刻むのである。それは勇気とか元気とか個性とか,綺麗な言葉で語られがちなものかもしれない。ただしそれは,子供たちが大人になって組織の中で生きていくために必ずしもプラスになるとは限らない。

 そういった勇気や個性といった属性を組織が求めるとは限らないし,何より,走って,走って,走って走って走りまくった先で,ヴァイスたちのようにもう一度「空」にめぐり合えるとは限らないのだから。

2004/09/15

最近読んだ本 『薬師寺涼子の怪奇事件簿〈1〉魔天楼』『まんがサイエンスIX からだ再発見』『そーなんだ!』

2011 久しぶりに読むより購入に走ってしまい,ここ二週間ばかりの間だけでも厚さにして五十センチメートル以上の本を買ってしまった(コミック除く)。それもやや重の長編が中心で,いったいいつになったら書棚が片付くのか途方に暮れている。
 そんなこんなで取り上げることの遅れた(さりとて素通りするのも惜しい)本や作品がたまってしまった。
 とりあえずざっとご紹介させていただこう。

『薬師寺涼子の怪奇事件簿〈1〉魔天楼』 原作 田中芳樹,漫画 垣野内成美 / 講談社マガジンZコミックス

 ドラキュラもよけて通る「ドラよけお涼」こと薬師寺涼子の事件簿がついにコミック化されたことは慧眼の皆様ならすでにご存知に違いない。しかも作画はノベルス版でイラストを担当したあの垣野内成美なのだからもはや何も言うことなし……と言いたいところだがやはりイラストと漫画は別モノであった。
 お涼さまがほぼ全見開きにわたって蜂起,もとい芳紀御二十七歳のオミアシをさらしてご活躍される展開に文句はないのだが,どうも動き過ぎるのである。
 思うにコビコビと表情を変えたり動き回ったりするのは小人のなすことである。女王様はもう少し傍若無人に道の真ん中を歩み,ただ取り巻きたちがその周りをおろおろという作画でもよかったのではないか。

 ちなみに,やや旧聞に属するが,作者インタビューや書き下ろし短編,描き下ろしコミックを収録した『女王陛下のえんま帳 薬師寺涼子の怪奇事件簿ハンドブック』(光文社)も発売中。『巴里・妖都変』や『東京ナイトメア』でお涼さま抜きの人生を想定できなくなったジャンキーにはコミックよりむしろお奨めだ。添付画像は迷った末に,こちら。

『まんがサイエンスIX からだ再発見』 あさりよしとお / 学習研究社(NORAコミックス)

 本「くるくる回転図書館」でも再三取り上げてきた『まんがサイエンス』もすでに9巻め。
 今回は長編仕立てではなく,
  寝る子は育つ?
  傷は体の工事現場
  暑い時には汗をかこう
  毒はどうして毒なのか
などなど,体がテーマのオーソドックスなサイエンスコミック短編集となっている。あやめちゃんがいぢられ役として活躍しているのもお約束どおり。
 最後の1編は
  終わる命 つながる命
とちょっとドキッとするタイトルだが,いくらでも重く扱えるテーマをさらりと流した印象。少し物足りない気もするが,前巻『ロボットの来た道』のときのように埋めようのない寂しさを感じさせられるよりはよい。

 ところで,小学生向けのサイエンスコミックといえば,毎週火曜日発売の『そーなんだ!』(デアゴスティーニ発行,現在130号まで)が楽しいが,その123~124号に掲載された「生き物の楽園ビオトープって何?」(マンガ/高樹はいど)に登場した火星人御一行様が最高だった。ちょっとキショイ系のタコ足火星人が各コマに何人(?)も登場して,地球案内のお姉さんの解説に
  「エ?」「エ?」「火星ダメ?」「火星ダメ?」「火星ダメ?」
  「空ダ」「地上ダ」「地下ダ」「川ダ」
  「ナル」「ナルナル」「ナル?」
などなどと口走る,そのバラけたリズムと得体の知れなさがたまらない。
 『そーなんだ!』は中堅の書店なら雑誌売り場にしばらくのバックナンバーが置いてあることも少なくないのでぜひご覧いただきたい。
  見ル? 見ル。 見ル見ル。

2003/01/25

『まんがサイエンスVIII ロボットの来た道』 あさりよしとお / 学習研究社(NORAコミックス)

Photo【今の時代にキミはいないんだよね】

 くるくる回転図書館でも何度か取り上げてきた『まんがサイエンス』の最新刊である。

 今回の主人公は,池上タクミ少年。
 ある日彼の家に「タクミさんはわたしのことを知りませんか」とロボットが尋ねてきた。タクミはこのロボットがどこから来たのか,どこに行くのかを求めて,近所のお姉さんとともに調べて歩く。なぜロボットは人間と似た姿を持つのか。二足歩行することの困難とは。心を持つロボットは実現可能なのか。

 今回は,過去のシリーズでおなじみだったよしおくんもあさりちゃんも,あやめちゃんもまなぶくんも登場しない。これは「5年の科学」「6年の科学」に連載された作品であり,1年間のひと区切りを越えて同一のアイデンティティを保つ必要はないのだ。
 ではあのよしおくんは,あさりちゃんは,あやめちゃんは,まなぶくんはどこへ行ってしまったのか。

 ……などとセンチメンタルな気分になってしまうのは,今回の第VIII巻が,どこかうら寂しい雰囲気を漂わせているせいかもしれない。
 登場する少年型のロボットは,最後まで名前を与えられない。彼はヘルメットの下の「目」を描かれない。どこから来たのか,どこへ行くのか,明快な答えは最後まで得られない……1つの未来の「可能性」は描かれるにしても。
 そして,その未来にすら,やはり強い孤独の匂いがたちこめる。

 自分がどこから来たのかを淡々とタクミに尋ねるロボットの姿はとても痛々しい。自分が人間に作られた目的を求め,ロボットの完成の意味を問い,この時代に自分のようなロボットはいないことを悟る彼の言葉はこの上なく切ない。胸が引きちぎられるようだ。

 その切なさの裏側には,あの夏の日のようにロボットに無限の夢を重ねることのできなくなった自分がいる。このロボットは,僕たちが未来の世界で「二度と出会えない」友人の姿なのかもしれない。それはもう,遠い,遠い,遠い,遠い……。