美しき回転軸の群れ 『輪廻の果てまで愛してる 現代の短篇小説 ベストコレクション2025』 日本文藝家協会・編 / 文春文庫
『現代の短篇小説 ベストコレクション』を紹介するのは毎秋の恒例行事だったのだが、昨秋はプライベートでバタバタして、本を買うことからすっかり失念していた。誠に申し訳ありません(誰に?)。
半年以上遅れたが、2025年版、『輪廻の果てまで愛してる』を取り上げたい。
篠田節子「土」
佐川恭一「万年主任☆マドギュワ!」
斜線堂有紀「カタリナの美しき車輪」
佐々木 愛「僕たちは のら犬じゃない 番犬さ」
坪田侑也「放送部には滅ぼせない」
宮下奈都「鳶の娘」
坂崎かおる「花泥棒」
窪 美澄「凪のからだで生きていく」
米澤穂信「輪廻の果てまで愛してる」
若い名前が並んでいる、ような気がする。それだけでも期待は高まる。
個々の作品についての感想は以下のとおり。
篠田節子「土」、最後まで、土の中から明らかになる犯罪、被害者は実は・・・を期待して読んでしまった。ミステリに汚れている私。
佐川恭一「万年主任☆マドギュワ!」、パロディ元をタイトルしか知らないため、きちんとは感情移入できなかった。苦労して書かれたのかもしれないが、後半、もっとわちゃわちゃにブレークしてもよかったのでは。
斜線堂有紀「カタリナの美しき車輪」、これはー、怖い。SNSをはじめ、現代のネットツールの扱いも自然で、文体は抑えがきいていて、そのくせ全方位的にどんどん壊れていく。当節のホラーはボリューム的にはいわゆる「実話怪談」が主流だが、こうした作者の指から沸き起こるホラー作品がもっと書かれ、もっと高く評価されてもよい。
佐々木 愛「僕たちは のら犬じゃない 番犬さ」、坪田侑也「放送部には滅ぼせない」、宮下奈都「鳶の娘」、いずれも主に学校を舞台にして若者たちのみずみずしい情感が描かれていく。どの作品も最後のページで終わるのでなく、そこから始まるものに(遠近法でいうところの)消失点があり、若者の未来に向けて心がじゃぶじゃぶ洗われていく。
坂崎かおる「花泥棒」、近未来、もしかするとこれを書いている間にも実現してしまうかもしれない消失の物語。女子高校生転落殺人事件の容疑者をはじめあらゆる写真にエフェクトがかけられ、あらゆる文章にAIの手が入る時代、この悲劇はすでに ど こか で は じま・・・
窪 美澄「凪のからだで生きていく」、男の作家にはなかなか書けないテーマにうたれる、という視点の一方、現代の小説家のライバルは膨大なコミックやライトノベルの生産性かもしれない、と思われた。家を出る、家に帰る、という要素については尾崎衣良『真綿の檻』(小学館、現在7巻まで)のバリエーションに一日の長を感じる。
米澤穂信「輪廻の果てまで愛してる」、ちょっとポイント引くなら反対側のタイヤに付けてしばらく走ればいいんじゃないかしら。走行距離メーターで調節できるし。紅葉の錦、神のまにまに。










