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カテゴリー「コミック(作品)」の440件の記事

2018/12/22

宣伝し続ける17歳 『6代目 日ペンの美子ちゃん』 服部昇大 / 一迅社

Photo研究・発掘本だった『あの素晴らしい 日ペンの美子ちゃん をもう一度』の刊行から気がつけばもう十有余年、今度は実作マンガ単行本だ。

作者がネット上で美子ちゃんのパロディマンガを描いていたところ、声がかかり、公式に6代目となったという。

そんないきさつなどどうでもよいくらい、この1冊にあふれるテンポ、ひねりのセンス、バイタリティはあの美子ちゃんそのものだ。
ことに応じて日ペンを紹介する、ただそれだけといえばそれだけの1ページなのに、つい読んでしまう。ほんの少し元気になる。

時事ネタ、パロディネタ、ささやかな生活の一コマ、どんな話題も強引に

  日ペンは80年の歴史があって
  先生方も超一流ぞろい!
  1日20分の練習で
  1週間もすればすぐに上達よ!

につないでみせて、考えてみればその無敵性においてマンガ界で男子は諸星あたる、女子は美子ちゃん、この二人が双璧なのではないか。

唯一気になるのは、スペシャルコメント欄に初代美子ちゃんの矢吹れい子(=中山星香)さんからのメッセージがなかったこと。
「美子ちゃんは初代しか認めない!」とまでは言わないが、自分にとって美子ちゃんといえばあくまでというかどうしても1970年代の少女マンガ誌の巻末をカラフルに飾っていたあの初代美子ちゃん。6代目はそのキャラクターをよく受け継いでいるだけに、初代作者の感想を聞いてみたかった。

2018/12/17

大団円 『そこをなんとか』(最終15巻) 麻生みこと / 白泉社 花とゆめCOMICS スペシャル

15素晴らしい。

相続、親権、結婚詐欺、少年犯罪、自己破産、民事再生法、不当解雇、モラハラ、などなど、さまざまな法律事務、訴訟に片をつけてきた『そこをなんとか』、最終巻では(表紙にあるので書いてしまうが)「薬害訴訟」「弁護団結成」というこれ以上ない大ネタ。主人公楽子の成長も感じられ、モヤっていたアチラのほうもきっちりランディングして、ダイ・ダン・エーン!!

ということで、褒めよ讃えよで終わればよいものを、ついつい細かいことまでつついてしまうのがカラスの悪いくせ。
麻生みことファンの方はこの後は読みませんように。

たとえば、有能、優秀、とこれ以上ないほどに切れ者扱いされてきた先輩弁護士東海林の、今回の扱い──もう少しなんとかならなかっただろうか。
いや、もちろん東海林が勝ったのでは話にならないし、テレ朝「リーガルV」の向井理、NHK「炎上弁護人」の小澤征悦らの例を引くまでもなく、ヒロインの元パートナーのエリート弁護士なんて毎度こんな扱いなのだけれど。

も一つ、これはこの作品の最初からずっと靴下の中に入り込んだ砂粒みたいに気になっていたこと。
楽子が司法試験を受けるための収入源としてキャバ嬢だった──この設定は必要だっただろうか。外国人を含む大勢と同居、という設定も、生かす生かさないの前に妥当だったかどうか。
キャバ嬢であったことが最終巻の薬害訴訟の伏線となった、これはわかる。だが、そもそも、男女の機微に疎い楽子のキャラとキャバ嬢という仕事がかみ合わない印象が強いのである。
(ちなみに薬害訴訟の準備の中で楽子は現役キャバ嬢たちを「彼ら」と呼び、彼女たちから「先生」と呼ばれて訂正しない)。

作品中随所にみられる楽子の自問自答、心の中のボケ、ツッコミでいえば、

  あたしが夜の嬢? ないない
  誰があたしに金落とすって?

こちらが自然な気がする。
そう、不自然なのである。

2018/12/02

〔短評〕 『ひらけ駒!return(1)』 南Q太 / 講談社 モーニングKC

Photo_4主人公の少年、宝が奨励会試験を1回だけ受ける、と決意したところで掲載が途絶えていた『ひらけ駒!』の復活。金の駒がさかさに立った! そんな驚き、喜びだ。
ただし、ストーリーは少しさかのぼって、宝が将棋と出会うところから始まる。

当然、宝は最初から将棋に強いわけでも熱中しているわけでもない。ママの奨めるほかの習い事を断れず、ことあれば将棋から離れそうにもなる。読み手としてはその都度、あっいけない、と声をかけたくなる。
おかしな話で、これは南Q太の描いた架空の物語であり、また宝がこのあと将棋の世界にどんどんハマっていくのは既刊の単行本で明らかなのに、それでもはらはらは止まらない。

本作(return)は子育て系のWebサイトで連載されているらしい。
そういえば8巻の最後の回にも、「子育ての極意ってかんじ」というセリフがあった。
確かに子育てってこんな感じだ。詰将棋じゃないのだから、正解なんてない。枝分かれのどこを選ぶか、どちらから選ばれるか。正解は、ない。

2018/12/01

〔短評〕 『きょうのカプセル』 黒田硫黄 / 講談社 ワイドKC

Photo_3黒田硫黄久々の(なのかな、よく知らないが。たぶん、『アップルシードα』以来)単行本。
あちこちに発表した小編を集めたもので、1冊としてのまとまり、コンセプトといったものはない、ないのだが、それでも、、

たとえば巻頭の「男と女」を読んだだけで、脱がされる。待て待て待て待て。目の前で、世界が、めくれる。自分がめくれ上がる。そして、己も何か書かねば、何か起こさねば、という気になる。
黒田硫黄の不思議さ、異様さは、前衛不条理劇等にはない、このポジティブさにあるように思う。
絶望する前に走れ。試みろ、流し、飛べ。

2018/10/29

〔メモ〕 『バーナード嬢曰く。』(第4巻) 施川ユウキ / 一迅社 REXコミックス

Photo_2〔短評〕でさえなくてただの〔メモ〕でごめんね、あの『バーナード嬢曰く。』の新刊、出ていました。8月かな。
さっき本屋でたまたま見つけるまで気がついていませんでした、ごめんごめん。
作中で紹介された本のいくつかを「そんな本あったのか!」「スルーしてきたがやはり読むしかないか!」とあれこれAmazonで注文しなくちゃいけないので、今日はとりあえずひとつ前の3巻より小ネタ中心でイマイチだったかなとかでも59冊目の【渚にて】の話はよかったなとかいちいち感想書いているヒマがないのでお知らせだけ。すみませんすみません。

〔短評〕 『アレンとドラン』(現在2巻まで) 麻生みこと / 講談社 KC Kiss

Photo引き出しの多いリーガルコメディの快作『そこをなんとか』(最新は14巻)、その麻生みことの新作。

主人公はマイナー映画をこよなく愛する田舎出身サブカル女子大生の林田(リンダ)。
登場して3ページめの吹き出しが

  立川で
  爆音フランソワ・
  オゾン特集上映が
  今日までなんだよ

なんですかそれ。なので当然林田は浮いて沈んで今日もぼっち。ところが隣の部屋に──というそこは伝統の少女マンガ、お約束の展開。もちろん隣にイケメンが住んでいたからといって昨今の少女マンガはすぐに仲良くなったりはいたしません。

ただ、マイナー映画のあれやこれを香辛料にするにはいくらなんでもマンガは非力、アレンが誰でドランが何で、林田がなぜそれらに魅かれるのか、魅かれるそれらはどんなものなのか、それは『アレンとドラン』を丁寧に読んでもカケラも伝わってこない。

だからマイナー映画好みというのは周囲から引かれるマイナーな素材ならなんでもよかった、実際1巻では通常の会話の中にいきなり

  『ゴーストワールド』の
  イーニドっぽくて

とかあったものが、2巻では早くも林田がサブカル女子であるという設定などほとんどあってもなくても大差なし。
とことん弁護士という仕事、法律相談というテーマにこだわった『そこをなんとか』の求心力、その重力に対し遠心力として働く恋愛感情のあれこれに比べれば作品として弱い印象は否めない。
その分、1話完結でどこで読み終えても平気な『そこをなんとか』に比べ、登場人物たちの心理葛藤、言葉の殺陣がキレッキレで大人向け少女マンガとしての精度の高い『アレンとドラン』は主人公と隣室の青年江戸川、また大学ゼミの教官との今後がどちらにどう転がろうが楽しみ楽しみ楽しみ。

2018/10/22

『ハーン ─草と鉄と羊─』(現在3巻まで) 瀬下 猛 / 講談社 モーニングKC

Photo昨夜のNHKスペシャル 平成史スクープドキュメント 第1回「大リーガーNOMO ~“トルネード”・日米の衝撃~」はよかった。

日本プロ野球機構に抗い、日本人選手として初めて大リーグに挑んだいきさつ、大リーグでの(2度のノーヒットノーラン含む)活躍の軌跡、それらももちろんだが、久しぶりに見る野茂のトルネード、投球フォームとその球スジの見事さに圧倒された。

闘いの瞬間を切り取れば、その勝者は美しい。
今回のような当人を招いたドキュメンタリーも悪くはないが、野茂がノーヒットノーランをしてのけた2つの試合をそのまま放送してくれないものだろうか。それは百万の言葉より何より雄弁な作品になるに違いない。

そこで、『ハーン ─草と鉄と羊─』だ。
本作はモンゴルを統一し、アジアに一大帝国を築いたチンギス・ハーンが、実は兄・源頼朝に追われた義経である、との伝説をもとにした記録である。
モンゴルの英雄が実は日本人、などと、失礼といえば失礼千万な設定であるが、1巻最初の40ページばかりのスピード感をもってそこを突破し(もちろん、日本人にとって都合よく、ということだが)、あとは草原の闘争を描くばかり。

作中、義経=テムジン=チンギス・ハーンは概ね寡黙であり、感情移入しやすいキャラクターとは言い難い。なぜ大陸を統一しようと考えたか、など、唐突、わからないことだらけだ。

思い起こせば野茂も寡黙で、だから近鉄をやめて大リーグに挑戦した当初は一部のマスコミを除き、なかなか共感を得られなかった。野茂が圧倒的な人気を得たのは、ドジャースの一員として先発し、あのトルネードをもって大リーグの強打者をばったばったと三振にしとめた、その試合からだ。
だが、野茂は本当に「共感」を得ただろうか? イチローも松井も大谷も、応援はできたとしても、「共感」などという甘やかなつながりのの外にい続けているのではないか。

『ハーン ─草と鉄と羊─』も、今のところはただ、テムジンの闘いを見るべき作品である。
次の単行本に収録されるかどうかわからないが、先週のモーニングNo.46掲載の回では、テムジンは一度も言葉を発せず、腕と拳だけで自軍を指揮し、仇敵タイチウトをなぎ倒すにいたった。

野球と同じ。それがエースの仕事だ。

2018/10/11

〔短評〕 『恋する母たち(3)』 柴門ふみ / 小学館 ビッグコミックス

3現在女性セブン(小学館)に連載中の柴門ふみ『恋する母たち』は、息子の進学高校落第危機をめぐって知り合った3人の母親たちが、それぞれ結婚生活や夫以外との恋愛関係に苦しむ──つまるところこぞって「不倫」の話であり、その絵柄の荒っぽさ含め、やや引いてしまう面は否めない。

もともと柴門ふみの線描、人物像、ストーリ展開、恋愛観などなどには、出世作であるヤングマガジン『P.S. 元気です、俊平』連載当初(1980年頃)より、なんというか体力的についていけないものを感じていた。

ただ、苦手に感じる一方で、作中にあふれるバイタリティ、スピード感には常に圧倒されてきた。振り回され、惹かれざるを得ない。恋愛描写のプロの凄み、とでも言うか。

『恋する母たち』のそれぞれの母たちの恋愛対象、舞台にしても、隅田川河畔で落語家とデート、与論島で自分を捨てた夫と再会、都心の近代的なオフィスビルで若い部下から告白などなど、今週からTVドラマが始まっておかしくない。
表紙には小さく【koi haha】とヒットを前提とした愛称まで印刷済みだ。無造作にみえて周到なのである。

(以下、おまけ)
ウィキペディアの柴門ふみの項には
  大学卒業後の1979年に、「少年マガジン増刊号」にて「クモ男フンばる!」でデビュー
とある。しかし、プリティプリティ(せぶん社)1978年9月号にて「いちばん寒い僕の冬」、10月号に「ペルシャ馬にまたがって…」というシリアスな作品がすでに発表されていたことはもっと知られていてもよい。
なお、この(4号で廃刊になった)プリティプリティには『雲雀』や『ささなみのアケロン』、『グッドラック』などの単行本を残した御茶ノ水女子大漫画研究会初代会長の湯田伸子が寄稿しており、いわば大島弓子や萩尾望都ら24年組の系譜にあった雑誌なのだが短命に終わってしまった。残念でならない。
Photo

2018/10/08

〔短評〕 『雨柳堂夢咄 其ノ十七』 波津彬子 / 朝日新聞出版 Nemuki+コミックス

Photo雨柳堂夢咄』新刊、2年半ぶりの出来。
あとがきによると、収録された一番新しい作品でも2年前にはすでに描かれていた、なぜ2年半もかかったかは出版社の事情でよくわからない、とのこと。出版社を責めるべきか、この出版不況の時勢によくぞ出してくれたと讃えるべきか。

作品について言うべきはない。変わらずの品位、静かに泣ける、静かに笑える。

冒頭の「斜陽の家」、予想外の展開に驚きつつ、ふと思いついた。
『雨柳堂夢咄』のいくつかは、新作落語の素材に使えるのではないか。それも、もしかするとものすごく高品質な噺の。
猫たちが三味線ひいて人を招く「冬の宴」あたりも出来そうだ。

亀戸、梅屋敷あたりで客案内している若手の噺家さん、どうだろう、一度試してみては。

2018/09/03

ヒラが浮き足立つなよ 『ハコヅメ ~交番女史の逆襲~』(第3巻) 泰 三子 / 講談社 モーニングKC

3前回紹介して間がありませんが、待望の新刊が発売されたので取り上げておきますね。

3巻では、女子中高生を狙う性犯罪者を追う連作が、主人公から脇役まで全員全ページ全コマキレキレッで、そりゃーもうものっすごい出来です。

ことに、合同特別捜査本部の描写がソリッドでピリピリきます。

  ヒラの刑事は
  ホントよく
  しゃべるな

  その決定打を
  見つけるのが
  てめぇらの
  仕事です

に続く本部捜査一課班長と捜査員たちのやり取りがたまりません。
働き方改革? それどんな食いもんですか。甘いの?

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