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カテゴリー「コミック(作品)」の431件の記事

2018/09/03

ヒラが浮き足立つなよ 『ハコヅメ ~交番女史の逆襲~』(第3巻) 泰 三子 / 講談社 モーニングKC

3前回紹介して間がありませんが、待望の新刊が発売されたので取り上げておきますね。

3巻では、女子中高生を狙う性犯罪者を追う連作が、主人公から脇役まで全員全ページ全コマキレキレッで、そりゃーもうものっすごい出来です。

ことに、合同特別捜査本部の描写がソリッドでピリピリきます。

  ヒラの刑事は
  ホントよく
  しゃべるな

  その決定打を
  見つけるのが
  てめぇらの
  仕事です

に続く本部捜査一課班長と捜査員たちのやり取りがたまりません。
働き方改革? それどんな食いもんですか。甘いの?

2018/08/27

わかるわけ ないだろ 『フラジャイル 病理医岸京一郎の所見(12)』 原作 草水 敏、漫画 恵 三朗 / 講談社 アフタヌーンKC

12苛烈さが加速する。
手に負えないほど面白い。

12巻では2つの病理診断が描かれる。いずれも、、その所見が直接、患者の生死にかかわるものだ。

医療マンガ数あれど、「医者は人の生き死にを扱う」という事実を抜き身で描く作品は案外少ない。
フラジャイル」は、人が面白がってはいけない領域を描いているに違いない。

逆に言えば、だからこそ面白い。読む価値がある。

歪んだ見方だと断った上で書いておこう、ここには(病理医に限らず、あらゆる)仕事の一つの真実が描かれている。
ある種の仕事は、ののしり合い、相手を叩き潰し、自身の体を壊すまで頑張っても、頑張っても、足りない。届かない。
それでも諦めない。答えを出し続ける。
そういうことだ。

2018/08/20

舌、出さない。 『ののちゃん全集⑪』 いしいひさいち / 徳間書店 GHIBLI COMICS SPECIAL

Photo終業式、校長先生の挨拶。
「水の事故に気をつけましょう。」
その後のクラス会、藤原先生。
「水の事故に気をつけましょう」
帰宅後、母・まつ子、学校からの注意事項を読む。
「『水の事故に気をつけましょう。』」
そこでののちゃん、
気をつけるからどこか、
水の事故に気をつけに行きたーい
。」

……ほとんどウィトゲンシュタインの問答集である。

朝日新聞 2016年1月1日~2017年12月31日掲載の全711作。
アルマイトの弁当箱より分厚い、重い。
その上、1作1作の密度が上記の如し。さらりと読み流すことなどできやしない。

いしいひさいちについて書きたいことは山ほどあるが、過去書いたことにダブりそうだ。こちらをご参照ください。

なお、本11巻には、キクチ食堂での食堂ライブ、市立南高校の文化祭ライブなど、あの吉川ロカも幾度か登場している。ファンは必ずチェックのこと。

2018/08/02

『ハコヅメ ~交番女史の逆襲~』(現在2巻まで) 泰 三子 / 講談社 モーニングKC

2カバーによると作者は「某県警に勤めること10年」とある。安定・安心の公務員の身分を捨てて専業マンガ家を選んだのだ。ほとんど犯罪である(
内容はというと、現場経験に基づくブラックな警察署勤務の本音、裏話を愚痴愚痴と……これが実に面白い。

作画はお世辞にも巧みとは言い難く、とくに若い女性警官が「目」で区別がつかない(同じ制服を着ていると、髪型やセリフで人物を区別しなければならない)。しかもその「目」の外側に余計な線があって、怒っている、嘆いているの区別がつきにくい。さらにコマ展開にリズムがなく……
とかとか、そんな弱点をテイヤっとちゃぶ台返して余りある魅力が本作にはある。

マンガは「絵」によると同時に、「言葉」による創作物だと思い知らされるのが、こんな作品に出会ったときだ。

  ちゃんと
  言わなきゃ
  いけないこと
  あるでしょ

とか

  とても
  きれいな
  ご遺体
  でした

という、ただこう引き写してしまえばなんてことのないセリフが、作中でどれほどの重みを伝えるか。

(連載を毎号楽しみに読んでいるので知っているのだが)8月末発売予定の第3巻も間違いなく大切な1冊になる。確約する。

2018/07/23

『からかい上手の高木さん』(第9巻) 山本崇一朗 / 小学館 ゲッサン少年サンデーコミックススペシャル

9夕飯のレタスとトマトのサラダを取り分けていたら、次男(23歳、大学院生)が、
「そういえば、新しいの、出てたね」
「9のこと?」
「そう。買ったけど、読む?」
「ごめん、帰りに、駅で買った」
「3も?」
「3は買ってない。あとで貸して」
「おけ」

そうしたら、妻が怒った。
「あんたたち、わけわからんことばかり話してないで、早く食べてフロ入りなさい」
「はい」
「はーい」

ちなみに、9とは、山本崇一朗『からかい上手の高木さん』の新刊。3はそのスピンアウト(後日談)、稲葉光史『からかい上手の(元)高木さん』第3巻のこと。
我が家では父子で同じマンガをせっせと買いそろえているのであった。ごめんね、妻。

2018/04/04

漆黒 『蟇の血』 近藤ようこ、『フラジャイル(11)』 恵 三朗

黒いマンガを、2冊。

Photo『蟇の血』 近藤ようこ、原作 田中貢太郎 / KADOKAWA BEAM COMIX

田中貢太郎による原作は創元推理文庫『日本怪奇小説傑作集』の第1巻に収録されている。そのままでも十分気色悪いが、転がるような展開の中に読み手の想像力に委ねる部位がまだ微かに残され、どこかしらファンタジーの気配があった。
近藤ようこはその原作に忠実にストーリーを展開しながら、妖異を描くことに容赦がない。
追い詰められる悪夢のようであり、また悪い夢では片付かない絶望感。
この十年、二十年に読んだマンガの中でも図抜けて気持ちが悪い。怖い。

『フラジャイル 病理医岸京一郎の所見(11)』 原作 草水 敏、漫画 恵 三朗 / 講談社 アフタヌーンKC

容赦ないといえば『フラジャイル』の新刊も凄い。
かつて新薬の開発をめぐって主人公と対立した元・製薬会社の幹部を主人公に、医薬界のダークサイドを描く。
描かれる「黒」は、色の三原色を混ぜ合わせることでできる濁った黒ではない。漆のような、まごうことなき「黒」であり、それはもはや敵味方、善悪などという生ぬるい評価とは途絶したところで読み手を魅了する。
スピンオフという扱いらしいが、ある意味、(子供の病気を扱った一つ前の巻などよりよほど)このシリーズを代表する1冊かと思う。

Photo_3

2018/03/29

『ふるぎぬや紋様帳<三>』 波津彬子 / 小学館 フラワーコミックススペシャル

3この作者らしい」と一定の興趣は感じつつ「こんなものだろうか」と流す印象だったものが、この三巻にいたって俄然心に染みた。
一巻、二巻とことさら何が違うわけでもないのに、あやかしの「ふるぎぬや」をめぐるそれぞれの登場人物、その関係性が、澱のように降り積もって効果を放つ。

思い起こせば波津彬子の最近のシリーズ作、『女神さまと私』や『レディシノワズリ』は2冊で完結。この作者ならではの煮凝りが融けて動き出す前に終わってしまった印象だった。
もとより短篇連作の人ではあるが、その描かれる素材が骨董や和装、古い館であるだけに、ただモノがそこにあるだけでなく、誰に、いつから、どのように、といった積み重なるものがあって初めてお話が整うのか、などとも思う。

いつからかすっかり慣れてしまったが、奇妙な絵柄ではある。
表紙の「ふるぎぬや」主人の顔ひとつ見ても、掌で左右の半分、上下の半分をそれぞれ隠してみると、どこを見ているのか、哀しんでいるのか笑みを浮かべているのか、さっぱりわからない。ところが全体を見るとこれはこういうもの、と綺麗に納まってしまう。
ウェットなストーリーに全編にギャグが溢れることも含め、金沢の生んだ不思議な作家の一人である。

2018/03/17

相転移する 『二匹目の金魚』 panpanya / 白泉社

Photo足摺り水族館』など、寡作ながら特異性では異彩を放つpanpanyaの新刊。

作者の作風は有り体に言えば「幻想的」、である。
ただ、世間一般の「幻想的」作品の多くでは、確か、と思われた日常がだんだんあやふや、曖昧になってしまう、化学でいうところの「融解」、「昇華」、すなわち

  固体 → 液体

  固体 → 気体

の相転移が描かれる(それも

  固体 → 液体 → 気体

でなく、いきなり気体になってしまうほうが概してより衝撃は大きい)。
などと思わせぶりなことを書いたが、これは今日初めて書いたことであって別に確信があるわけでもない。

それはともかくpanpanyaの短篇ではむしろ語り手の曖昧な記憶や思い込みが

  気体 → 固体

に、これも「昇華」というのだが(「凝華」とも)、そのような方向にそって描かれることが多い。

したがって、各作品のページ内では防災無線のメロディやかくれんぼや神社のお守りや一方通行の交通標識など、日頃ごく当たり前に思われていたものがだんだん明確な、ただし、日常それらがそう思われているものとは微妙に違う何ものかに「昇華(凝華)」していく。

結果として語り手が得るお守りや二匹目の金魚は、実はお守りや金魚ではない。かもしれない。

※その過程において、曖昧さはむしろ嫌われる。
と注釈じみたことを付記したところで、もちろんこちらもそれほど意味はない。

こういった相転移によるためだろうか、panpanyaのそれぞれの短篇はいつもどこかほんの少ししょっぱい。

そんなことを考えた。
もう取り返しがつかない。

〔短評〕 『こぐまのケーキ屋さん』 カメントツ / 小学館 ゲッサン少年サンデーコミックススペシャル

PhotoTwitter上で発表されてきた同タイトルの4コママンガを急遽1冊にまとたもの。

作者については、以前、『カメントツのルポ漫画地獄』『カメントツの漫画ならず道(1)』というわりあいブラックかつキワモノテイストな2冊を紹介した際、「大切なものを大切に扱う」と評させていただいたが、その読みが決して間違っていなかったように思われて嬉しい。
本書は、いわばその「大切なもの」だけを丁寧に抽出して綴じ合わせた、そんな小さな宝物。

収録作のボリューム(大半がTwitterで既出)や価格が気になる方もいるだろうが、装丁、印刷、紙質まで含め、繰り返し読まれる「絵本」と考えれば文句はない。

できれば──自分の子供たちがもっと小さなうちに、この本を一緒に読めればよかったな。

2018/02/27

〔短評〕 『乙嫁語り』(10巻) 森 薫、『ふしぎの国のバード』(4巻) 佐々大河 / KADOKAWA HARTA COMIX

Photo異国情緒溢れる(とはいえ後者は明治期の日本が舞台なのだが)『乙嫁語り』、『ふしぎの国のバード』の、それぞれ新刊。

『乙嫁語り』第10巻の前半は、アミルの夫たるカルルクが強さ、男らしさを身につけるためにアミルの兄アゼルたちと冬の野営地で生活し、弓やイヌワシ狩りを学ぶ話。後半は久々にイギリス人旅行家スミスに視点が戻り、砂漠の花嫁タラスと再会を果たすまで。
カルルクの一族とアゼルたちは一度はいくさを起こした仲だったはずが、アミルを介した親族どうしとはいえ、いつの間にこんな間柄になったのやら?

一方、『ふしぎの国のバード』第4巻、こちらは探検家イザベラ・バードの越後街道~山形への旅程に、かつて仕えたプラント・ハンター チャールズ・マリーズとの契約を巡る通訳 伊藤(イト)のドラマを交える。加えて英国公使夫人ファニー・パークスを主人公にしたスピンオフ一篇。

2冊とも「展開」より「いきさつ説明」色の濃い、箸休め的な内容ではあるが、通底するのは一人の人間が生きていくためにどうしても必要なプライドとか誇りのようなものだ。
カルルク、スミス、バード、伊藤らはもちろん、冷徹酷薄に描かれたマリーズでさえ、周囲からは理解しがたいプライドのためにそれぞれ状況の継続、先への前進を心がけてやまない。
その象徴として2冊ともに猛禽類の飛翔が美しく描かれる。これは偶然ではないだろう。

Photo_2・・・とはいえ、この2冊の中で本当に自在な精神のありようを示すのは、親戚の紹介でタラスと結婚した当日に「好きな人がいる」「(その人は)アンカラに向かうと聞いた」と言われて「困っちゃって」「仕方ないね」「だってかわいそうだろ?」とタラスをアンカラまで連れてくるとぼけた旦那、その人である。
少なくとも、肩に力の入りすぎたカルルク君がこのおっさんの域に達するにはまだまだ時間と経験が必要そうだ(早くしないとロシアが攻めてくるよ)。

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