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カテゴリー「コミック(作品)」の413件の記事

2017/05/29

窓越しに遊ぼう(←編集GJ!) 『まどからマドカちゃん(1)』 福田泰宏 / 講談社 モーニングKC

Photo出版不況化に濫発されるマンガ単行本の消耗がー、といったあたりから書き始めたのだけど、どんどん作品から乖離してしまったので没。
シンプルにいこう。

元総理大臣みたいな名前の作者による『まどからマドカちゃん』はかわいい。面白い。売れるんじゃないかな。売れてほしい。

サラリーマンの小田君(やや社畜)は、会社に急ぐ道すがら、その路地に面したアパートに住むマドカちゃんと知り合う。
このマドカちゃん、突然窓を開けて寿司屋になったり、射的屋になったり、丁半博打の賭場を開いたり、病院開いたり、あれやこれやで小田君を翻弄する。今日はまさかの……。

マドカちゃんの側はセリフ(吹き出し)なし、その意図は表情とファッションと小田君の

  ちょっと待って! え? 寿司!?

  「何握りやしょう!!」みたいな顔しなくていいから!

などのセリフで説明されるのみ。そもそもタバコをくわえたり缶ビールをすすることはあっても、マドカちゃんの口や鼻は一切描かれない。

ちなみに小田君がとことん鈍いので気がつきにくいが、実はマドカちゃんはときどきエロなのでお子様には目の毒、お一人身様には気の毒だ。


(6月4日追記)
なんとなくタイトルに既視感があると思っていたら、『波打際のむろみさん』(名島啓二)という作品がありました。文字にしてしまうと別に似てもいないか。
釣りが趣味の少年が防波堤で人魚を釣り上げてもあまり動じない、可愛い顔をしたヒロインの人魚がゴカイやミミズを食べたがるなど、甘々とラブロマンスに走らないところが魅力的でした。

2017/05/01

だんだん浄らかになる 『美しの首』 近藤ようこ / エンターブレイン ビームコミックス

Photo夢十夜』紹介の際に「近藤ようこの描くものは、原作原案などなくとも」と風呂敷を広げた手前、解き放たれた近藤ようこの魅力を示す何かよいものをと思ったが、彼女の単行本は残念なことにその多くが品切れ、絶版で手に入らない。
そこで、新装刊されて比較的手に入りやすい『美(いつく)しの首』から、中編「安壽と厨子王」を取り上げることにした。

「安壽と厨子王」は中世説教節の一つ、森鴎外の小説『山椒大夫』や子供向け絵本でも知られている。

近藤ようこは原作の健気な弟、厨子王を、高貴な血筋と偽って裕福な貴族(梅津院)に寄宿する美少年に仕立て、彼がかつての主人、山椒大夫を陥れ、山椒大夫のもとを出奔する際に見捨ててむごく死にいたらしめた姉、安壽の怨霊の誘惑に溺れ、あげく梅津院やその妹、出戻りの醜女、朝日姫を死に至らしめ、金と権力を得て阿弥陀像の前でうそぶくまでを一気呵成に描き上げる。
姉の怨霊との冷たい肌の契り、稲生物怪録を思わせる化け物の俯瞰描写など、その筆は軽妙自在、赤塚不二夫のギャグに近い白い画面が、艶めかしく個人の存在の空恐ろしさを伝える。

厨子王は情けない小悪人なのだが、跳梁跋扈、悪に走るほどに仏に近づき、反省を捨てるほどに浄化されて最後には空しく透明な存在と化す。
大袈裟にいえばニーチェやドストエフスキーの超人である。だが、そんな小難しい理屈に囚われる必要はない。読み手は安壽と厨子王の運命に寄り添い、絶叫マシンのごとく時の流れの中を共に疾走すればよいのだ。

これで百頁、どうです先生、読みたくなつたでせう?

2017/04/21

『カメントツのルポ漫画地獄』『カメントツの漫画ならず道(1)』 小学館 ゲッサン少年サンデーコミックススペシャル

Photo石灯籠の影に幽かな気配がある。
「(殿、お呼びにございますか)」
池の鯉にエサを投げながら、
「む。半蔵か。ほかでもない、出版不況、とくに紙媒体の危機が叫ばれて久しいの」
いつの間にか石灯籠の反対側に姿を現し、平伏する半蔵。
「御意。かつてなら駕籠に乗ってスポーツ紙、マンガ週刊誌、文庫本を手にせぬ者はおりませんでした。近頃は老いも若きもスマホ、スマホ」
「む、あれは便利ぢゃ。合戦の日付を秀ちゃん光っちゃんとLINEで相談したり、陣の取り方をググったり」
「とは申せ、『ワンピース』『進撃の巨人』、村上春樹、少し前でしたらハリー・ポッターの平積みを見れば、紙の本のニーズが全くなくなったとも思えませぬ。版元が最善の努力、工夫を重ねているかと申せば、いささか」
「うむ、ひとたび勝鬨をあげるとなかなかほかに足は踏み出せぬものぢゃ。誰もがデヴィッド・ボウイ、孫正義になれるわけではあるまい」
「紙媒体が沈みますと、マンガ家として禄をはむのもこれがかつて以上に難しい。雑誌数は増え、ある程度連載がたまると単行本にはなりますから、デビューの機会はある。問題はその後」
懐から巻物を二巻取り出して半蔵に示す。
「このカメントツなる新人作家、半蔵はどう見る」
「は。もともと、ネット上でマンガを発表し、1000万PVとたいそう話題になったかぶき者。ある会社の社員寮に現れる“オレンジのお姉さん”と呼ばれる霊を扱った作品など、Twitterでその都度読んでおりましたが、小学館から単行本デビューするにいたるとは予想もしませなんだ」
「この丸いのは本人か」
「御意。写真が必要な折はフルフェイスの仮面を被って現れるので、仮面で突撃、ということからカメントツと名乗り」
聞きながら座敷に上がる。上座にどすりと座り、脇息に肘を乗せる。
「ほう、それでカメントツ」
オモコロなるマンガサイトの要望に応じて催眠セラピー、自己啓発セミナー、腸内洗浄、断食道場などかなりきわどいルポマンガに手を染め、その人気連載をまとめたものが『ルポ漫画地獄』、さらにそれが評価され、ゲッサンに掲載されたマンガ家インタビュー集が『漫画ならず道』」
「あだち充、青山剛昌、西原理恵子など、なかなか名城に凸り、かぶいておるではないか」
「そのあたりのつなぎはさすが小学館。またカメントツ自身、へりくだりつつインハイ高めな質問を繰り出しており、いずれもハードコアな読み応え」
「うむ、絵柄にクセがあるので見まがうところもあろうが、まず、しっかり常識をわかったうえで描いておるの。今日び、なかなかできぬことぢゃ。親御さんの躾が目に見えるようぢゃの」
「躾、でございますか」
「うむ、マナーであるとか、そういうことではなく、大切なものを大切に扱う、その姿勢とでもいおうか」
「その直球なストレートに、上杉和也は最初から殺すつもりだった、『タッチ』のタイトルは“バトンタッチ”の“タッチ”との名回答が得られたわけで、これにはネットが沸き申した」
「うむ、わしも思わず脇息から転げ落ちたわい」
「作品を宣伝するためにマンガ家本人がネットにブログを書いたりtweetしたり、ということは従来もございましたが、カメントツはそもそもネット上で可能な限り手を伸ばした結果、マンガ家となり、小学館から単行本発行にいたった。これは今後のマンガ家の在り方の一つを示唆しているようにも思われます」
「ふむ。領地の地図が変わるかも知れぬの、地図が」
「しばし手の者を配し、様子をうかがいたく存じますが」
「許す」
揺れる行燈の火。半蔵の気配はすでにない。

2017/04/18

『夢十夜』 原作 夏目漱石、漫画 近藤ようこ / 岩波書店

Photo岩波書店について、少し前に

校閲部門のほうが編集部門より発言力が強く、古典には圧倒的に強いが新規な企画、製作の動きは重い

と書いた。
驚くなかれ、近藤ようこの新刊『夢十夜』は、その岩波書店発行である。
岩波がマンガ! という言い方もできようし、なんだやっぱり岩波、マンガを出すにも漱石か、との見方もできる。

作品そのものは文芸作品をマンガ化した作品としてたいへん素晴らしい出来で、漱石の、あの、業の深い、あるいは頓狂な掌編集を違和感なく描き上げ、原文の一部を過不足なく配置し、しかも一つひとつのコマにあるのはあくまで近藤ようこの朴訥かつ妖しいペン遣いである。
二度三度読み返すと、もう百年百合や背負った盲目の子供やパナマ帽は大昔からこうであったようにしか思われない。

我儘を書いておこう。
近年(一連の坂口安吾作品のマンガ化以来)、近藤ようこの新作はこの『夢十夜』しかり、『死者の書』『五色の舟』しかり、誰か別に原作者をもつものが少なくない。いずれも高い水準にあると体の半分は認めるのだが、それでも同じ近藤ようこを読むならストーリーから台詞からすべて彼女の手になる作品を読みたい。
近藤ようこの描くものは、原作原案などなくとも、安吾や折口や漱石に劣らず十二分に親しく怖ろしいのだから。

2017/04/17

『レインマン 04』 星野之宣 / 小学館 ビッグコミックススペシャル

Photo高額所得者向けマンガ、『レインマン』の新刊。

主人公雨宮瀑(タキ)の頭蓋の中には脳がない。
突然現れ、ビルから飛び降りて死んでしまう瀑の双子の兄、漣(レン)。
どうやら主人公は天候や人物の存在を自在に操れるらしい……。

さすがにこれはオカルトの領域だろう、いかに星野御大といえ、こんな大風呂敷を折りたたむことができるのか? と心配していたが(実際、2巻、3巻とさらに暴走気味だっただけに)、この4巻にいたり、秀吉、ノア、ナポレオン、それにサヴァン症まで持ち出して「レインマン」の謎が一気に解明される。なるほど、さすがは剛腕星野、うっかり説得されてしまいそうだ。
CG動画を2次元のコマに描いてみせたような事実の改変アクションも凄まじい(大学の建物と癒着した大木の存在感!)。

ただ、双子の兄弟の対立が実は個人的、感情的なものから始まっていた、など、設定や映像が壮大なわりに一つひとつのアクションのきっかけは案外矮小なのが気になる。
並行世界をジャンプすることで世界を変えるほどの力があるなら、狭い一つ世界でにらみ合ってないでてんでに好きなジャンプ先で好きなことをすればよいだろうに──。

いや、それではエンタメにならないので、と対決モードやお邪魔な登場人物にこだわってしまう生真面目さがこの作者の魅力でもあり、また限界でもあろうか。

2017/04/05

あはははごめんごめん! 『ヒストリエ(10)』 岩明 均 / 講談社 アフタヌーンKC

10岩明作品の特徴、少なくとも表面的に、それは化け物レベルの「異能」、そしてそれに伴う無造作かつ徹底的な「人体破壊」だろう。

マケドニアのアレクサンドロス3世に仕えた書記官エウメネスの生涯を描く『ヒストリエ』においてもそれは自明で、この10巻ではいよいよアレクサンドロスの異能が明らかになる。
オッドアイ(虹彩異色)の王子による胸のすく、もとい胸クソ悪い殺戮ショーが100ページ余りノンストップで続くわけだが、そのてかてかした爽やかさには呆れ、笑い、喝采せざるを得ない。

ただ、
アレキサンドロスの冴えた先読み(ニュータイプであったかw)、他者の生死に頓着しない乾いた酷薄さ加減は、もともと主人公エウメネスの色ではなかったか。
今後、アレクサンドロスの異能が強調されるほど、相対、エウメネスは感傷的な凡夫とならざるを得ないのではないか。

それにしても、
アレキサンドロスが王位についたのが紀元前336年、東征を重ねた末にバビロンで急逝したのが同323年。
『ヒストリエ』の掲載開始が2003年だから、『ヒストリエ』はすでにアレキサンドロスの東征より長く続いているということだ。

生きているうちに最終巻を読めるかな?

2017/02/09

不安の入り口、希望の出口 『うつヌケ うつトンネルを抜けた人たち』 田中圭一 / 角川書店

田中圭一といえば、手塚治虫パックリな絵柄でよもやのお下劣ギャグを連発する、“神をも恐れぬ”サラリーマン兼業漫画家、その人である。
ちなみに「パロディ」なるものは高度な批評眼と描写力を必要とする知的作業であり、田中圭一もサイテー、ド変態な印象の一方、さまざまな漫画家のペンタッチをトレースすることでそのコマの意図を深掘りする漫画評論家の一人でもある。あの夏目房之介の傑作『消えた魔球 熱血スポーツ漫画はいかにして燃えつきたか』の系譜を正しく継ぐ者といえるだろう。

Photo最近は『Gのサムライ』などさらにゲスいパフォワッ!!な作品を発表するかたわら、その憑依ペンタッチを活かしたインタビュー作品に伸長著しい。
人気漫画家23人の──本人でなく──子息・息女を招いてその漫画家の馴染みの店、好きな食べ物を取材し、しかもその模様をその漫画家のタッチで描いた『ペンと箸 ~漫画家の好物~』は、漫画家たちの意外な実像とその子として育つ若者たちの生き様に迫る予想を遥かに上回る好著だ。ちばてつや、手塚治虫、赤塚不二夫、山本直樹、池上遼一、魔夜峰央、上村一夫、諸星大二郎、永野のりこら、取り上げられた漫画家のプライベートはいずれも興味深いが、ことに『ど根性ガエル』の吉沢やすみ、『アストロ球団』の中島徳博、『まんだら屋の良太』の畑中純の章など思いがけない展開と哀惜に充ち、人気作品にリアルタイムに触れてきたファンは涙を禁じ得ないだろう。

さて、そんな田中圭一の最新刊『うつヌケ うつトンネルを抜けた人たち』はさらにシリアスな内容で、長年うつ病に苦しんできた著者本人、またロックミュージシャン大槻ケンジ、AV監督代々木忠(!)、小説家宮内悠介、熊谷達也らが表だっての活躍の一方でどうしてうつに陥ったか、いかにそのトンネルを抜け出たかをじっくりヒアリングし、うつ症状の実情、うつに陥るきっかけ、そして(容易ではないものの)そこから抜け出す方法について懇切丁寧にまとめたインタビュー形式のレポートである。

もちろん、類似のアドバイスは、文章の形でならすでにあちこちに再三書かれてきたに違いない。それを、漫画という、流して読みやすく、笑いを交えて理解しやすい形で提示したことが大きい。
発売後、売り切れの書店が相次ぐなど、ネットを中心に話題となり、同じくうつに苦しんだ人々から「よくわかる」「もっと早く読みたかった」「知り合いにも読ませたい」等、熱い共感が集まっている。

さて、この後は少しダークサイドに走るので、自分も苦しんでいる、あるいはようやく抜けたという方はご遠慮ください。

────────────

Photo_3その好評の『うつヌケ』だが、読み終えての第一印象、それは実は世評とは逆に「この本はまずい、危ない」というものだった。

トンネルを抜ける手段がわかりやすいということは、そのトンネルに追いやる方法も明らか、ということだ。
誰かをうつに貶めたい、あるいはうつに苦しむ誰かをさらに苦しめたい、そんな毒親、毒家族、毒上司、毒同僚等々にとって、本書は天の与えた悪魔のお手軽マニュアルになりかねない。うつに苦しむ、あるいはうつに陥りかねぬ誰もが本作中に登場する人々のように才能や仕事に恵まれ、家族に恵まれているわけではない。もし悪意をもった誰かが本作を手にしたならば……。

もっとも実際のところ、そんな心配など杞憂に過ぎない。
蛇は毒を行使するにマニュアルなど必要としない。まして人をうつに追いやる毒は、自覚された歴然たる悪意などではなく、善意や好意や「あなたのため」の名のもとに押しかけてくるものだ。

2017/01/31

読書通絶句 『バーナード嬢曰く。』(現在3巻まで) 施川ユウキ / 一迅社 REXコミックス

Photo  「読んでない本を読んだ気になるのに
   楽をするな!!」

と豪語する町田さわ子は、読んでもいない本のことをいかに読書通ぶって語れるか、そこにばかりこだわる困った女の子。

そんな町田さわ子をなんとなくウォッチしてしまう遠藤は『真夜中は別の顔』『恋空』『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』『KAGEROU』などひと昔前に流行った本を古本屋で買って読むのが趣味。同じく図書室に常駐する神林しおりは熱心なSFファンゆえに町田さわ子のいい加減な読書ぶりが気になってしかたがない。遠藤に思いを抱く図書委員の長谷川スミカはシャーロキアン。

登場人物はほとんどこの4人だけ。
事件らしい事件は何も起こらない。その代わり、さまざまな本、本についての名言、妄言が横から斜めから次々飛んできて、半可通の読書家を刺す。

個人的には生真面目な神林しおりが、ほとんど恋しいレベル。
圧倒的な読書量と解説の嵐で大ゴマを文字で埋めながら、町田さわ子の素朴なツッコミカウンターに赤面、石化するしおり。
あるいは水泳部が休みの誰もいないプールで、大好きだけどやたら難しいグレッグ・イーガンの新作を読んだら思ったより読みやすく、それが嬉しくて無意識に足で水をぱちゃぱちゃぱちゃぱちゃぱちゃぱちゃしてしまうしおりの愛おしさ。
停電で暗くなった図書室で、理科室から持ってきたアルコールランプの灯りのもと、嵐の音を聞きながら皆で本を読むエピソードもいい。

ちなみにタイトルの「バーナード嬢」とは、言わずと知れたアイルランド出身の劇作家「バーナード・ショウ」をもじったもので──とか知ったかぶりしてしまうわけだが、実のところ町田さわ子に限らず当方だってバーナード・ショウの本をちゃんと読んでいるわけではない。
本書がちくちく刺すのはまさしくそういう読書家である。
もっとも、刺すからといって殺すわけではない。バファリンではないが、『バーナード嬢曰く。』の半分は本好きへの優しさでできているのだ。

  「だから私は…
   同じ話を
   何度だってする……!!!」
  「何度でも
   聞くよ?」

2016/12/27

パリイ パリヤー パリイスト 『乙嫁語り』(9巻) 森 薫 / KADOKAWA / エンターブレイン BEAM COMIX

Photo8巻に続き魂の葛藤娘パリヤさんの活躍……
説明はほとんどこれで終わりなのだが、一つだけ疑念を呈しておきたい。

パリヤさんはなぜ(アミルと友達になるまで)あれほどまでにダメ娘の刻印を押されていたのか、ということだ。
もちろん性格的にやや不器用で、妄想癖、あがり症でもある。だが、刺繍は不得手でもパンを焼くのは得意、家の手伝いもきちんとこなし、人助けはするし、話しかけられれば一生懸命返答。アミルやカモーラとひとたび友達になってしまえばとくに問題なく付き合いは続いている。縁談の相手たるウマルくんともなかなかいい雰囲気だ。

内気な女の子の魅力に彼だけが気がついて、というのは少女マンガ王道中の王道だが、それにしても父親の口から「近所の評判も最悪」とはご近所もあまりに見る目がない。

2016/12/19

『BOX ~箱の中に何かいる~(1)』 諸星大二郎 / 講談社 モーニングKC

Boxそれぞれ何者かに呼び寄せられ、奇妙な四角い箱型の館に集まった7人(に加え野次馬1人)。入り口はふさがってしまった。人形めいた少女の指示に従って“パズル”を解かないと迷宮を出られない。しかし……

(突然、上の部屋で何か重いものを倒す音が響き「『西遊妖猿伝』の続きはどうしたあ」と男の暗い叫びが耳を打つ)

続けよう、『BOX』もいつものように「細かいペンストロークを重ね」「カケアミを駆使した」((c)田中圭一)この作者ならではの世界ではあるのだが、若干の違和感をもった。
諸星大二郎の作品である以上、この箱は何、とか、少女の正体は、とか、まっとうな解答など得られないに違いない。にもかかわらず、どうも最終回までにはなんらかの解説、伏線の回収が得られるかのような気がしてしまうのだ……。

(窓の外でガタガタと砂場で何かを押し転がす音と、子供たちの口々にいやしげな「『海神記』も終わらせていないくせに」という声が聞こえる。声はだんだん近づいてくるようだ)

おそらく、前半の生真面目なルール説明や、『BOX』というらしからぬ直接的なタイトル、またいかにもMacでこしらえたといわんばかりのメタリックな表紙なども「よくある監禁ホラー」感に一役買っているのだろう。

(バタンバタンと何かを開け閉じする音が隣の部屋で沸き起こる。「『諸怪志異』は何年もかけて終わらせたではないか」と大勢の人ないし人ならざる者のつぶやく声は低く、男の声か女の声かわからない)

だが、繰り返すがこの作者のことだ、あっ

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