姫ヶ嶽 海に身投ぐる いや果ても 『愛媛怪談』 三好一平 / 竹書房文庫
当ブログでも過去『茨城怪談』『埼玉怪談』『千葉怪談』『京都怪談 神隠し』『京都怪談 猿の聲』と取り上げてきた竹書房のご当地怪談シリーズ、北はさいはて青森・北海道、南は神の国出雲・修羅の国北九州・琉球と、全国津々浦々を恐怖に染めてきたものだが、それが、ついに! 四国上陸! 『愛媛怪談』出来!
著者の三好一平氏は愛媛県南宇和郡愛南町の出身だそうで、これは愛媛県を右上に翔ぶ獅子の形とみなすと後肢のあたり(南予)。
そのためか、どうしても愛南町、宇和島市、西予市、伊方町(獅子のしっぽ)、八幡浜市、、、と南予の怪談の割合が多く、またそれらお国の神社や祭りごとの紹介がつまびらかで地元ならではの筆運び。
中予にしても伊予市、砥部町あたり、南予寄りといえば南予寄りの怪談が目立ち、要は獅子の頭から前肢にあたる今治市、西条市、新居浜市、四国中央市の濃密さが今ひとつ。
・・・何の話かといえば、漫画家矢代まさこ氏と同じ伊予三島市(現・四国中央市)に生まれ育った烏丸としては郷里の話題がやや少なくて多勢に無勢、肩身が狭い。太鼓台かついで酔いしれる亡霊とかはいないものか。
無勢はさておき、何度か書いた「戦乱の世、城が攻め落とされた折、城主の息女年姫がこの崖から身を投げて、のちその霊が現れる」という四国中央市川之江城の「姫ヶ嶽」が取り上げられており、これが活字になったのを見るのは嬉しい。小学校の狭い世界の噂話というわけでもなかったようで60年ぶりにモヤモヤがすっきり。
ちなみに、前回も書いたが、この川之江城、1970年代のUFOブームの折には「UFOの基地」では、と話題になった場所でもある。
その時点ではまだ現在の天守はなく、ちょっとした動物園の設営された「城跡」公園にすぎなかったのだけれど。

『愛媛怪談』に話を戻そう、取材された怪談の一つひとつはそうエキセントリックに神経を逆なでするものではなく、まず神社の売店に売られる地域の民話本に載っているような伝承を紹介し、それにかかわる(現在の?)怪奇現象を聞き語る、というのが各篇の基本ペース。
視線を感じる、後ろで声がする、影がついてくるといった話が多く、要は愛媛の怪異は「振り向いてはいけない」「拾ってはいけない」ようだ。
ただし、西条市を舞台とした「夏の底」、県内某所(非公開)の「春」の2篇は空気の冷える、ある意味本格的な「怪談」であり、見たらいかん、うかつに読んだら夜、寝られん。あかんで。




