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2026年2月の3件の記事

2026/02/19

『ハウスメイド』 フリーダ・マクファデン、高橋知子 訳 / ハヤカワ文庫

Photo_20260219185101 カバーに記された「恐怖と衝撃のエンタメ小説」、本書にこれ以上適切な惹句はあるだろうか、いや、ない。

「前科持ちのミリーが手に入れた、裕福な家庭でのハウスメイドの仕事。だが、この家は何かがおかしい。不可解な言動を繰り返す妻ニーナと、生意気な娘セシリア。夫のアンドリューはなぜ結婚生活を続けていられるのだろうか? ミリーは屋根裏部屋を与えられ、(以下略)」

本書のあらすじは上記のようなもので、老練な読み手ならこれだけで本書のおおまかな構造、あるいはオチにいたるまで言い当てられるかもしれない。

・・・だが、気になるのはそこではない。
分厚さだ。
この一本道なアウトラインで528ページ。

少なくとも前半、妻ニーナと娘セシリアの不可解な態度についてはもう少しタイトにまとまったのではないか。
それにそろえれば後半のカタストロフィはもう少しスピード感をもてたのではないか。

どうも、なんというか、最近のミステリー、ホラー、とくに翻訳モノは、長い。
どれもこれも、平気で500ページを超える。映画化を意識してのことなのか。
その多くは(少しばかり複雑な人間関係や推理上のどんでん返しを含むにせよ)つまるところ一つの謎、一つの事件を解明するのが目的となっている。
まるで無関係と思われる小さな事件をいくつも同時進行させて最後にそれらが一つの秘密に束ねられる、などという作品(くそったれ!)は別として、ベストセラーを含む多くの作品は真相に関係ない人物を立ててページ数をじゃぶじゃぶ水増しすることが少なくない(主人公の捜査を憎々しげに邪魔する上役警官が世界中でどれほどミステリ本のページの無駄遣いをしていることか)。

クリスティやクイーンには、膨大な長編に対し、それに見合うほどの短篇集があった。
当節ことに長いのが警察モノだが、シムノンのメグレ警部などいずれも短篇、ないし中編程度の長さに収まっていた。

当たり前だが、長いからいけない、というわけではない。
長いのなら長いなりにプロットに味わいが深いか、逆に無駄なくスラスラ読めるよう書かれているか。
余計なものでだらだら散らかっているのが一番困るのだ。
ミリー、片づけておいてって言ったでしょう。



2026/02/16

『怪物の森 未解決事件捜査官ヴァン・リード』 ジェス・ロウリー、北 綾子 訳 / 新潮文庫

Photo_20260216175901 新潮文庫は王道を貫く。
文芸大作なら文芸大作、長編ミステリーなら長編ミステリー、ノンフィクションや実験的な作品ならそれなり。
この信頼は(個人的に、だが)この60年変わらない。

その新潮文庫の長編ミステリーを、久しぶりに読んでみようと思った。

  「42年前に失踪した少女はなぜ今生き埋めにされたのか」
  「未解決事件捜査官と科学捜査官が挑む!」

この帯の惹句で、つまらないわけがないではないか。
主人公のヴァンはカルト集団で虐待されて育ちトラウマに苦しむ捜査官、生き埋め事件と42年前の失踪事件とのかかわりは。

・・・読了後。

面白い、面白くないはさておき、これは、「ミステリー」ではない。
しいていえばB級映画に向いた「サスペンス」の一種であることに間違いはないが、
むしろいわゆる「バカミス」の類ではあるが、書き手に「バカミス」の自覚はないようだし・・・

そこでようやく気がついた。
本書のカバーや帯に散る長いタイトル、煽り文、あらすじ、著者紹介、巻末の吉野仁氏による解説、さらには折り込まれた新刊案内の紹介文にいたる、さまざまなテキストの中に、実は「ミステリー」」とは一か所とて紹介されていないのだ。

本書をして「ミステリー」としない、新潮文庫の変わらぬ矜持を見た。

でも、「バカミス」なんだけどね。




2026/02/12

『新九郎、奔る!(22)』 ゆうきまさみ / 小学館 ビッグスピリッツコミックススペシャル

22_20260212180201 本日発売、ホヤホヤのホクホク。

ここ数巻、将軍家の跡目争いに多くページが費やされ、作品としてはやや「らしさ」に欠けるところがあった。本巻は久しぶりに「新九郎ならでは」が全開、オーバードライブ。

なにしろ鎌倉公方堀越茶々丸討伐に向けての、「公」と「私」にわたる密儀、策謀、また謀議。
立憲民主党には新九郎がいなかったのだねー、ほーほほ。

龍王がページをまたいで思いを語る語る! のちの今川氏親の成長を頼もしく感じるとともに、足利義政のあの存在感、そしてそれが作品から消えることが室町幕府の凋落を見事に表していて、返すがえすも凄い。などなど。

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