真夏(?)のホラー特集 その8 最終回 『死と乙女』
少し時間をおいてしまった。
もともとはどんなホラーより怖い、そう紹介したかったのが次の作品だ。
『死と乙女』 アリエル・ドルフマン 作、飯島みどり 訳 / 岩波文庫
人のよい夫が連れ帰った客人、その男こそはかつて政治的名目のもとに彼女を拉致し、シューベルトを流しながら拷問を重ね、生涯において子供を産む機会を奪った、まさにその行為者だった。
いまや民主主義と法に守られる行為者の言い分は、そして彼女のなすことは。
過去の拷問に起因する密室劇の、問題は、これがたかが50年ばかり前の、チリ軍事クーデターにおける事実に基づいているということだ。
劇中の海辺の夜の一軒家は、現代の世界にその問いを開いている。
もしくは。
作中にさらりと語られる「エル・ファンタ」なる人物の名の由来の恐ろしさ。

