真夏のホラー特集 その4 『日めくり怪談』
以前、松岡修造の日めくりカレンダーが売れに売れたことがあったが、そのホラー版である(違う)。
吉田悠軌は『一行怪談』、『禁足地巡礼』、竹書房の『恐怖実話』シリーズなど、地名や建物に紐づいた実話系の怪談と、巧みな言葉運びと省略テクニックを駆使した創作怪談、その両輪車を自在に活用して我が家の本棚を侵食しつつある気鋭の怪談作家の一人である。
最近文庫化された『日めくり怪談』は7月1日から8月31日にかけて、1日1話、3~4ページの創作系怪談を配列したもの。
全体に、もうひとひねり加えるとさらにヒリヒリ怖くなりそうなものを意図的にその直前でナイフを収めているような印象。
茫洋と取り残される、そんな印象の怪談に妙味がある。淡々と終わる話のほうが怖い。巧い。
ちょっとよくわからないのは、単行本の発行は2019年7月、文庫は2025年6月発行。
ところが巻頭の日めくり、「7月1日」は「水曜日」、巻末の「8月31日」は「月曜日」とあり、どちらも発行年にそぐわない。
さらに、この日付の欄にはさまざまなアイキャッチが置かれ、そこに日めくり暦に書かれているような短い標語のようなもの(「米をとぐ手がつかまれる」「海藻まみれの女が訪ねてくる」「枕をちぎると耳だらけ」「卵の中から母親の声がする」など)が書かれているのだが、それに続くショート怪談にはその標語はあまり関係ない。
加えてないものねだりをするなら7月7日の七夕、17日の祇園祭山鉾巡行、8月6日、9日の原爆記念日、15日の終戦記念日など、日付けに怪談を結び付けられそうな日はいくつもあるのに、そこはスルーしているため、そもそも何のために「日めくり」かということになる。
とはいえ、7月の自分の誕生日の怪談はなかなか薄気味悪い話だったので、ああいやだいやだと読み返しては喜んでいる。
そうそう、この本のもう一つの工夫として、ページの地に文字に重ねて、ときどき波や影の点画が描かれていること。どこそこに手のあとが、というお話のページに子どもの手のあとがペタペタ描かれている、など。
ある作品のところで、ある(怪異ではない)実体験を想起させる線が描かれており、思わず悲鳴を上げた。ごめんなさい、許してください。
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