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2025/08/22

真夏のホラー特集 その5 『英国幽霊屋敷譚傑作集』 コナン・ドイル、ラング他 夏来健次 編訳 / 創元推理文庫

Image2_20250822172301 シックでアンティークの香り豊かな怪奇小説や推理小説の翻訳・集成で知られる夏来健次によるアンソロジー、『英国クリスマス幽霊譚傑作集』、『ロンドン幽霊譚傑作集』に続くヴィクトリア朝怪談集の3冊め。

いずれも起承転結のしっかりした、じっくり出汁の滲みた幽霊譚が並んでいる。
「雷鳴のもと、目の前に突然巨大な」「逃げても逃げても」といった当節ホラー映画風の嚇かしに頼らない、じんわり重厚な風味が心地よい。

今回の『英国幽霊屋敷譚傑作集』、1冊の本として面白いのは、収録短篇がいずれも小さな対決パッケージに分けられていること。

たとえば巻頭の2作はエマ・ホワイトヘッド、マーガレット・ヴァーンという女流作家2人による「幽霊屋敷」対決。
いずれも凶暴邪悪な亡霊でなく、失われたものへの哀切な思いが背景にたゆたう。好編。

続いてやはり女流のシャーロット・リデル、マーガレット・オリファントによる「開いた扉」競作(もちろん競作といっても意図してそうなったものではない)。
一種、主人公による謎解き挑戦ホラーだが、そのターゲットが古い屋敷の、閉めても閉めても開いてしまう扉というのが面白い。

ウィリアム・マッドフォード「ブレイクスリー屋敷の幽霊談義」、アンドルー・ラング「奇談の屋敷」はいずれも登場人物が幽霊談義をしていくとやがて、、、というもの。
つまらないわけではないが、こういうのは、連作短篇集として1冊にまとめられ、最後の一篇で暴走してなんぼ、という気もしないでもない。

その他、J・E・プレストン・マドックという作家による幽霊屋敷譚2作、幽霊登場には個別の怨みによるものとただただ理不尽なものがある、という(つまるところノンセクション?)チャールズ・オリア、ダドリー・コステロ、フランシス・ブラウンの3作家による幽霊屋敷譚3篇。

最後の組みは「異色競作/無名作家と巨匠」というタイトルで未詳作家チャールズ・F・F・ウッズ「岩礁の幽霊灯台」、対するにアーサー・コナン・ドイルの「ゴアソープ屋敷の幽霊選び」とあるが、これはどうやらドイルを載せるための適当な言い訳か。別にこの2作に競作といえるほどの要素はない。

さてその巻末のドイルの作品だが、、、「珍しいお土産」をどうもというか、、、なんでこうイギリス人のユーモアって奴あ。

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