真夏のホラー特集 その1 『営繕かるかや怪異譚 その参』『怪談小説という名の小説怪談』
雨上がりの7月の早朝が好き──などという長年の思いを嬲るように、今年は6月からずっと夏で、7月、8月とさらに夏だ。きっと9月、10月も夏に違いない。
夏といえばホラー、足首をくいっと掴み、背中をずるずると這うホラーですわ。ということでポツポツと文庫ホラーを読んでいる。
いずれも楽しい。美しい。心が洗われるようだ(←表現としては少し間違っているような気もする)。
以下、順不同。敬称略。いくわよ。追ってきなさいひろみ。
(個人的な話だが)少し前に、古い土壁から現れる血まみれの女の幽霊が立体でなく平面なので、家族4人、幽霊に垂直になる角度で食事しくつろぎ布団を敷くと幽霊を見ずにすむようになった──そんな怪談を思いついたことがある。もちろん、この家族4人それぞれにその後どんな悲惨な末期を迎えさせるか、それをあれこれ考えるのが楽しいのだが。ふひひ。
『かるかや』シリーズの作者、小野不由美はご安心、そのような意地悪はしない。
城のある町、さまざまな家屋。その家で起こる怪異は心底怖い。建物に、壁に、箪笥に、怪異がしがらむ。救いがない。
そこに営繕屋・尾端が招かれ、くるりと頭を振るう。
すると・・・最後の1ページ、そこまでの真正ホラーが突然すとんと落とし噺になる。
けたけたと暮れの空に笑みを沁みつける、作者後ろ向きの着物姿が見えるような快作揃い。
ふと思う。
『夫の骨』や『ぞぞのむこ』、『拝み屋怪談』らの怪異に営繕屋・尾端が向かうと、どうなる。
どちらが勝つと思う? ね、あなた。
シャープな創作怪談集。
小説家自身が巻き込まれる巻頭の「高速怪談」、なるほどこの奇妙なタイトルの1冊はその手の趣向、かと思いきや、続く「笛を吹く家」は独立したホラー。と油断したら「苦々陀の仮面」や「枯れ井戸の声」、「怪談怪談」はやはり作品内作品、いわゆる“メタ構造”の怪談で。
つまり、読み手は「怪談」を怖がると同時にその「怪談」が「小説」として書き手にどう書かれたかに動揺し、怯える。
しかも、作品内怪談も、その怪談を内包する外枠の怪談も、いずれも切れ味がいい。巧い。
『怪談小説という名の小説怪談』という頓狂なタイトル、これは本書巻末の大森望の解説にもあるとおり往年の大家、都筑道夫の『怪奇小説という題名の怪奇小説』という書物からとったものだが、都筑の本に言及するならそれと同時期によく似た内容で発表された小松左京の『題未定』も併せて説明がほしかった。
これはその2作がほぼ同時に発表されたことについて長年首をひねりっぱなしの烏丸の個人的な要望です。
なんだったんだろう、あれは。
なにはともあれ夏のホラー特集、「まだまだいくよー!」(by BABYMETAL 'Catch me if you can')
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