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2025/08/13

真夏のホラー特集 その3 『幽霊物件案内』『歩く亡者 怪民研に於ける記録と推理』

Image5 『幽霊物件案内』 小池壮彦 / 文春文庫

毎年竹書房から山のように発行される怪談文庫。あれはあれでもちろん嫌いではないが(訂正、大好きです、すみません)、あれら実話怪談が青春フォークから歌謡曲だとするなら──小池壮彦の『幽霊物件案内』はハードロック、ヘビーメタルであろうか。少なくともドラムやベース、つまりリズムパートの迫力が違う。

「怪しい物件」について書かれた冊子は古くからあり、あれこれ手にしてきた。さらに箱組みとして、知人から話を集めてまとめるという「実話怪談」の仕組みは本書においてもそう変わるわけではない。それでも『幽霊物件案内』が「ガチ」に感じられる理由は、根っこのところにドキュメンタリーの作法を感じるためだ。要するに、「行けるものなら行く」「泊まれるものなら泊まる」という前のめりな姿勢がある。覚悟がある。デスボーイス。

「出る」という話を聞いて、書いて、それで終わりにするつもりなど最初からない。「出る」が噂になるなら、「何が」出るのか、「なぜ」出るのか。
知り合いの知り合いから聞いたどこからのホテルの話、ではなく、この本の著者は少なくとも現地の住所、部屋番号を知っている。知らずに書けようか。

そのくせ面白いことに、著者の基本的スタンスは「そんなことあるはずがない」なのである。
それなのに、いや、それだからこそ、それは「ある」。隣にも。後ろにも。天井にも、ベッドの下にも。

おまけ。
この『幽霊物件案内』の単行本を担当した「編集の三津田さん」というのが、ホラー作家の三津田信三だというのが愉快。
三津田信三は読むのがしんどくて凄く好きな作家というわけではないが(失礼)、一種尊敬は感じている。編集業務を経験したと聞くとその密度の高い作風の理由がわかるような気がしないでもない。

さらにおまけ。
先ほど気がついたのだが、ちくま文庫の『家が呼ぶ 物件ホラー傑作選』(朝宮運河編)というホラーアンソロジーでは、この小池壮彦と三津田信三の作品が2作並んで掲載されているようだ。詳しくはリンク先をご参照ください。

Image4 『歩く亡者 怪民研に於ける記録と推理』 三津田信三 / 角川ホラー文庫

その三津田信三の連作短篇集。「亡者」は「ぼうもん」と読むようだ。

帯の惹句によれば「刀城言耶の助手×拝み屋の祖母を持つ女子学生が怪異と謎に挑む!」とのことだが、申し訳ない、スピンもとの刀城言耶を読んでいないのでそのあたりはよくわからない。

作家・探偵として知られる刀城言耶の助手の天弓馬人は怪異民族学研究室に(おそらくただ一人)所属しながら怖い話が苦手で、女子学生の瞳星愛の持ち込む怪異に及び腰。今日も今日とて・・・
という、お話。

要は、ホラーとその謎解きをセットにした、コメディである。
と、どうなるかといえば。各短篇、前半の怪異味は曖昧で、さらにそれが後半の謎解きのために取り消される。ギャグも含めていろいろ互いに打ち消し合うことになってしまっていないか。スピンスピンスピン。

こういうのは(吹き出しでなく)地に「ぐっ」とか「ふへぇ」とか描かれてギャグとシリアスが混在しても気にならない女性向けコミックにお任せしたほうがと思うのだがさてどうだろう。最後のオチがオチだけに。ヘーアーヘブン。

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