真夏のホラー特集 その2 『秋雨物語』『梅雨物語』『怪談狩り 逆さ煙突』
貴志祐介が上田秋成の『雨月物語』を頭の正面、斜め上に意識しつつ中・短篇集を編んだ。
ホラー、ミステリ、SF、それぞれの亜空間を自在に飛翔しつつ、博覧強記の知識引き出し、かき回し、またまき散らす。
これはいったい何の話なのかー、といぶかっているうちに驚愕の結末にいたる『秋雨物語』巻頭の「餓鬼の田」、「フーグ」に始まり、百科全書的な語りの上にこぼれ出る『梅雨物語』の「皐月闇」、「ぼくとう奇譚」、「くさびら」3編。
ことに若者の俳句の評価合戦から忘れられた真実がひた重く暴かれる「皐月闇」が凄い。こんなものは、見たことがない。
最後の「くさびら」にいたっては、ここまでキノコ尽くしにすることはなかったのではサルマタケサルマタケ。
この2冊に難点があるとすれば、中・短篇の中に膨大な情報やテクニックが押し込められ過ぎたがゆえに自分が何を読んだのかよくわからくなってしまうことだろうか。
読み終えたそのときから鼻や耳から内容がこぼれ落ちてしまう。した、した、した・・・。
『新耳袋』シリーズにおいて木原浩勝とともに従来の「幽霊」「妖怪」路線とは一線異なる日常の怪奇を取り上げ、怪談界隈を文字通り仰天させた中山市郎だが、この『怪談狩り』シリーズではオーソドックスな実話怪談の収集に落ちついている。
いくつか、河童やキツネのしわざ、という話まであり、さすがにそれはどうなのか。
人の死を予感した話や廃墟に霊らしきものが現れる話も今さらもはやいかがなものか。
ただ、「創作」ならそれは問題だが、市井の声を集めたものとするなら、それはもしかしたら「そうなのかもしれない」。
だから、湖畔に白い女が立とうが、キツネが走ろうが、僕たちはそれを読んで繰り返しほんの少しキモを冷やす。
たびたびではないにしても、人生のとなりに、ソレはいるんだし。
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