時計を巻き戻す 『ロイストン事件』 D・M・ディヴァイン、野中千恵子 訳 / 創元推理文庫
ディヴァインについては昨年、『すり替えられた誘拐』発刊に際し、必要なことはある程度書いておいたので、繰り返し語るのはやめておく(←なんでそんなエラそうなのー)。
以下、良いことと残念なことを一つずつ。
良いこと。
かつて社会思想社の教養文庫から上梓され、その後出版社ごと絶版とあいなったD・M・ディヴァインの残る2作のうち、『ロイストン事件』が創元推理文庫から再発された。正義にこだわる主人公がさんざん痛い目にあい、最後に少しだけ報われる傑作だ(ディヴァインにしては珍しい、オシャレなエンディングもポイントが高い)。
残る『こわされた少年』も2025年に発行予定とのこと。慶賀のいたり。
残念なこと。
教養文庫版『ロイストン事件』には探偵小説研究家、真田啓介氏の詳細な解説が掲載されており、これが文庫の解説としてはまれに見る読み応えだった。
一般に他社の文庫の再刊に際しては解説は別人によって書き起こされることが多い。しかし、今回の創元推理文庫版においては教養文庫の解説が・・・そのままだとよかったのだけれど、残念ながら15ページ→11ページとカットされ、とくに教養文庫においてディヴァインが出版され始めた当時のミステリ出版界を俯瞰して語る前半がカットされているのが残念。
ただ、それでも、『ロイストン事件』を
A ストーリー
B プロット
C 謎解きのプロセス
D テクニック
E キャラクター
に分けて語るその内容は一項一項「ディヴァインを読む」ことの意味と方向を示して、ただエンターテインメントとして流さない(ディヴァインの巧みさを指摘すると同時に、微細な欠点についてもきちんと釘を刺してくれる)。
ディヴァインにほかのミステリ作家と違うものを感じる読者にとって、この緻密な解説は必読必携だと思う。
それが読めるのだから、結局はこちらも良いことである。善哉。
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