『【閲覧注意】ネットの怖い話 クリーピーパスタ』 ミスター・クリーピーパスタ 編、倉田真木・岡田ウェンディ 他 訳 / ハヤカワ文庫
1つ前の『五本指のけだもの W・F・ハーヴィー怪奇小説集』について、
> それぞれの作品にいく人か怪しい人物が登場するが、その禍々しさの正体は最後まで説明されず、それによる害悪も明らかではない
と書いた。
今回取り上げる『【閲覧注意】ネットの怖い話 クリーピーパスタ』は、それとは対照的な本。
「クリーピーパスタ(Creepypasta)」とは英語圏のネット上でコピー&ペーストされた怖い話のことだそうで、チェーンメールから始まった、とか、画像掲示板の超常現象を扱うスレッドから生まれた、とか、諸説言われているらしい。
ただ、本書収録の15篇を読む限り、いずれも作者名のはっきりしたスプラッタ色の強いホラー短篇小説、という風体で、匿名の発言者が書き込んだ都市伝説が怪談として補完、拡散されていく日本の掲示板(「洒落怖」など)のそれとはずいぶん風趣が異なる。
たとえば「小説」という体裁を取るがゆえに、そのプロットにおいて、怪異の邪悪さを強調したいがために語り手が死に至るエンディングも朝飯前だ。
そして、それ以上に和モノと大きく異なるのが、クリーピーパスタでは、多くの場合、怪異の本体、そのありさまが剥き出しに描かれることだである。
たとえば巻頭の「這いずる深紅」など、わりあい早い段階から、モーテルに巣くうモンスターが犠牲者に襲いかかり吞み込んでいく情景がそのまま描かれている。
赤いかたまりは蔓状のものをのばして手さぐりしながら、触れたものが何であれへばりつき、ずるずると這い寄ってくる。
(中略)
どろりと半分溶けた体。皮膚の大部分がはがれ落ち、残っている肉をおおうように深紅のものがうごめいている。
いかにもB級ホラーのようで、なんだかなあ、である。
社会批評色の強い続く「おチビちゃん」では、その批評の対象がそのまま主人公をさいなむ。ひねりはないのか。and so on...
和製の怪談なら、たとえば宿屋に怪異が現れるとしても、宿泊客が一人ずつ消えていく、大切にしていたものを残して・・・と始まり、その姿はせいぜい壁をへだてて響くくぐもった音やすりガラスの向こうの影でしかうかがえず、決して目の前に現れることなくただ逃げることができない状況だけが描かれるに違いない。
もちろん「口裂け女」や「八尺様」のように姿かたちが明らかになる例だってないわけではないが、田んぼに現れる「くねくね」のように、正体がわからないのみならず、それを見た者がそれを見たことによってオカシクなる、という屈折具合、いうならば「怪異の正体を語ろうにも、知る者は語れない」という不条理な構造そのものが怖いのであって「くねくね」が語り手に襲いかかってくるわけではない。
などなど、ホラー、怪談におけるプロットについて洋の東西、その是非は問わず、いろいろ再認識できる読書ではあった。
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