妙なものを見たようだな 『耳袋秘帖 南町奉行と逢魔ヶ刻』 風野真知雄 / 文春文庫
お気に入りの『耳袋秘帖』、45冊めの新刊出来。
今回のタイトルは『南町奉行と逢魔ヶ刻(おうまがとき)』。
表紙のイラストはなにやら怪しげな辻占い師、帯の惹句は「殺された“闇占い師”は何を見た?」、なるほどなるほどー。
で、さっそく読んでみると、、、
冒頭、今回初登場の定町回り同心・加麻田周二郎、彼が親戚から預かった三百両のうち二百両、それが忽然と消えてしまう。大失態。
その加麻田、茫然としつつ橋の上の騒ぎに近づいてみると、人が死んでいる。首も手足も二度三度回されたかのようにねじれていて、右手と右足、左手と左足が、それぞれ紐結びになっている。
ところが誰がどうしてこんなことをしたのか、騒ぎは大きいのに誰も見たものがいない。逢魔ヶ刻の魔物の仕業か?
死んだのは海産物問屋「北海屋」の若旦那、だが聞き込みを重ねても悪い評判はない。
一方、南町奉行根岸のところに、糸問屋に現れる女の幽霊を売りたいと現れるそろばん屋の小僧。
かと思えば瓦版屋が聞きつけた「天狗つぶて」(ポルターガイストのようなもの)の噂。
さらに「天狗つぶて」の起こった家には「わたしがやりました」としゃべるカラスが現れる。
明らかになった犯人に、女十手持ち「しめ」は・・・。
ありゃ。“闇占い師”が殺された話はどこへ。
いや、途中にはちゃんとその話があるのだけれど、北海屋の若旦那のねじれた死体という本編最大の事件解決には実はそれほど関係がない。耳袋に書き残すべき怪異な出来事、というわけでもないし、極端なことをいえばエピソードとしてまるごとなくても大過ない。
これは、あれだろうか、作者がストーリーを練って、執筆中に編集者に伝えた時点では“闇占い師”の殺しがわりあい大きな意味をもっていて、編集者はそれをもとにイラストや帯を手配した。ところがいざ原稿が仕上がってみたら・・・といった案配だったのか。
逢魔ヶ刻の事件現場にた怪しく姿を見せる“闇占い師”再登場・・・と期待しても、なにしろ登場と同時に殺されてしまったのではなあ。
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