« 書評はちょっぴり 『モモ』 ミヒャエル・エンデ 作、大島かおり 訳 / 岩波少年文庫 | トップページ | 『ストーンサークルの殺人』 M・W・クレイヴン、東野さやか 訳 / ハヤカワ文庫 »

2024/08/12

『百年の孤独』 ガブリエル・ガルシア=マルケス、鼓 直 [訳] / 新潮文庫

Photo_20240815153101 これもまあ、見栄の読書のひとつ。

かつてマルケスがノーベル賞受賞したりでラテンアメリカ文学が知的文化人御用達のブームになっていたころ、とくに理由なく敬してご遠慮申し上げていたような記憶がある。
まあ、せっかく文庫にしていただいたことでもあるし、ここは教養としてありがたく拝読させていただくことにした。

鼓直の「訳者あとがき」には

「ある意味では古めかしい体裁の作品」
「もっとも伝統的な、古典的な小説の手法」
「物語の原型的なものこそあれ、少なくとも表面的には、作者の前衛的な手法への関心をうかがわせるものはない」
「もっとも伝統的な小説形式」

とそれはもうくどいほどに繰り返し主張されていて、ではその「伝統的な小説形式」ってなんなの、というと、それはよくわからない。
ともかくこの『百年の孤独』、文庫にして600ページあまりが「起承転結」ないし「序・破・急」ならぬ

「起、承承承承・・・(中略)・・・承承承承、承、承、結」

な展開で、しかもその一つひとつの「承」が八方破れ。架空の村マコンドを舞台に、ブエンディア家の祖から子孫まで、癖は強いは当たりは激しいは、死んだ者が幽霊として普通に登場したり、絶世の美少女が文字通り天に昇ったり、自殺した息子の血が通りを隔てた母親の部屋までついついっと流れてきたり、暴動を起こして誅された3000人がまるきりなかったことにされたり(て・・・)、4年以上雨が降り続いて家中が苔、蛭だらけになったり、等々、「どこまで本気?」な描写が100年分これでもかこれでもかと繰り広げられるのである。

どう読めばいいのか(どう解釈すればよいのか)ということになると、これもまた、よくわからない。

そもそもブエンディア家の人々は、それぞれ悲惨、苛烈な人生を歩むが、タイトルの「孤独」という言葉はなんとなくそぐわない気もする。
戦国時代の武将が、攻めたり攻められたり、夢を掴みかけたり脆くも敗れたり、裏切ったり裏切られたり、そのあげく途中で一族滅亡したとしても、普通、彼らの生涯を「孤独」とは言わないだろう。ブエンディア家の人々も、引きこもるにしてもほぼバケモノに等しいし、外に出て大衆巻き込んでバイタリティを暴発させる輩もいる。これを「孤独」というなら「孤独」に立つ瀬がない。

いずれにしても、よくわからないながら面白かった。面白かったが時間と体力は弄した。

この調子で解説で(筒井康隆が解説に「実はお気に入り」と持ち上げている)『族長の秋』もいつかそのうち読んでしまうかもしれない。
それもまた見栄の読書かもしれないが、見栄の中ではわりあい堂々立派な見栄である。

« 書評はちょっぴり 『モモ』 ミヒャエル・エンデ 作、大島かおり 訳 / 岩波少年文庫 | トップページ | 『ストーンサークルの殺人』 M・W・クレイヴン、東野さやか 訳 / ハヤカワ文庫 »

小説・詩・文芸評論」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

« 書評はちょっぴり 『モモ』 ミヒャエル・エンデ 作、大島かおり 訳 / 岩波少年文庫 | トップページ | 『ストーンサークルの殺人』 M・W・クレイヴン、東野さやか 訳 / ハヤカワ文庫 »