無間ループ 『京都怪談 神隠し』 花房観音・田辺青蛙・朱雀門 出・深津さくら・舘松 妙 / 竹書房文庫
花房観音・田辺青蛙・朱雀門 出・深津さくら・舘松 妙の5氏の語り部による京都を舞台にした実話怪談集。
表紙や背表紙の作者名はこの順なのに、実際の掲載順は「朱雀門 出→田辺青蛙→舘松 妙→深津さくら→花房観音」。
単に原稿が編集部に届いた順番なのか、それとも竹書房的にこの順序になにか意味があるのか。
そもそも、こういった怪談共著の場合、高名な順から並べるのがスジなのか、紅白歌合戦のようにトリのほうが上座扱いなのか。
もう一つ。これまたどうでもよい話。
実話怪談はそれなりに読ませていただいてきたが、著者それぞれの性別、年齢、そういったことはあまり存じ上げない。
花房観音氏はほかの本の紹介欄などから女性のようだが・・・いや、問題は著者が実際に男性か女性か、ということではなくて、実話怪談というフィクションとノンフィクションのあわいにある読み物の場合、本文の主語が「私」とある場合、それを(読み手が頭の中で)男性の声で読むべきか、女性の声で読むべきか、よくわからないことがある。
まして、「私」ではなく、「Aさんが」「Fさんが」という仮名、匿名の場合、男女が明らかでないと怖さの質が微妙に異なることがある。
一人暮らしの「Aさん」の部屋で深夜に突然玄関のドアが開いた──そのような場合、どう怖がるか、という話。
本書はなんとなく、語り手の性別が最後までわかりにくく、状況がつかみにくい話が少なくなかった、ような気がする。
「惨惨の日に靴下を捨てないでください」と警告を受けた「右乗りルール」のMさんだが、6ページめで「僕」と記されてそこで物語(靴下?)の材質が変わる。「深泥池」の怪異から逃れんと自転車を漕ぎに漕いだFさんは男性、女性どちらなのか?
個別な感想。
朱雀門出氏の5篇。いずれも生理的な怖さでは今一つだが、プールで両耳に水が入ったような不条理感が気持ち悪い。
田辺青蛙氏のは・・・手慣れた巧さはあるが、少しスレた感じというか、ネタ切れ感が否めない。
舘松妙氏の6篇はいかにも京都の人となり、風情に裏打ちされており、『京都怪談』という標題に一番ふさわしいようにも思われた。
最後を飾る「御霊」が、不気味な展開を生かしきれず、少なくとも恐怖という点で深まりきらず穏やかに閉じてしまうのが残念。
深津さくら氏の6篇は、いずれも怪奇現象がエンドレスな感じで「これぞ怪談!」の妙味があった。
いずれも語り手が怪奇に気がついてから、逃れても、逃れても、逃れきれず、最後にいたっても結局その呪いや霊から離れることができたかどうかわからない。ああ、嫌だ。
花房観音氏の5篇も上と同様のことが言えるのだが、こちらは作者本人の「京都暮らし」から始まり、ラスト「実話怪談」にいたるまで、実は誠によくできた連作となっており、いわゆる怪談の書き手とは次元の違う「ものかき」としての底力が感じられる。
正直に言えばここに描かれた作者の私生活は決して好感をもてるものとは言い難いのだが、その分、怪談としての「穢れ」が読み手にまで移るようで、実に気味が悪い──つまり、怪談として成功しているのである。
最後にもう一つ、やはりどうでもよい話。
本書のタイトルは『京都怪談 神隠し』だが、「神隠し」は田辺青蛙氏の、申し訳ないがそうインパクトがあるとは思えない短い話のタイトル。なぜ、これなのか。ほかに強烈な話はいくつもあるし、サブタイトルにふさわしそうな京都の地名や祭りを織り込んだタイトルの話もいくつかあるというのに。
その謎を解くためにも、同じ竹書房文庫の続巻『京都怪談 猿の聲』をこれから読み解く所存。
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