短評 『LIVE 警察庁特捜地域潜入班・成瀬清花』 内藤 了 / 角川ホラー文庫
「警察庁特捜地域潜入班・成瀬清花」は、内藤了の角川ホラー文庫作品としては
「猟奇犯罪捜査班・藤堂比奈子」(スピンオフ含め14冊)
「東京駅おもてうら交番・堀北恵平」(8冊)
に続く、女性警察官を主人公とするシリーズの3作目(「恵平(けっぺい)」はらしからぬ名前だが、やはり女性)。
現在、「FIND」「LIVE」の2巻刊行済み。
猟奇事件の得意な作者らしく、本シリーズも「村落で発生した児童連続神隠し事件」(FIND)、「火災現場の土蔵に保管されていた14体の等身大の花嫁人形」(LIVE)と尋常ならざる事件・現象を起点とはしているが、いかんせん猟奇、ホラーの色合いは薄く、「角川ホラー文庫でなぜこんな、働く女性にとっての家庭、子育ての苦難ばかりを読まされているのだろう?」という気分がぬぐえない。そういうのはより反響がアクティブなSNSでやってくれ。
おまけに1冊め(FIND)では組織のはみ出し者で構成された新設部署は「過去の未解決事件から連続性と関連性を持つと思しき案件を見つけて背景を調べ、犯罪を未然に防ぐことを旨とする」「部署としてのノルマはないし、所轄と連携を取って、部署としては逮捕も送検もしない」はずが、2冊め(LIVE)ではそう語った元上司の指示に従って起こったばかりの火災現場に向かい、リアルタイムに事件と対峙している。
キャンピングカーを基地として現場に向かい、警官としてでなく叔父・姪を名乗って地元の人々と親しみ、と「地域潜入」の肩書は守っているが、なんとなく主人公や部署の立ち位置が迷走している印象は否めない。
というわけで、新シリーズのヒロイン成瀬清花には申し訳ないが、再度「猟奇犯罪捜査班・藤堂比奈子」シリーズの、それも初期の数冊を強く推しておきたい。
なにしろカバーの裏表紙の内容紹介を見ただけで、
「奇妙で凄惨な自死事件が続いた。被害者たちは、かつて自分が行った殺人と同じ手口で命を絶っていく」(ON)
「廃屋で見つかった5人の女性の死体。そのどれもが身体の一部を切り取られ、激しく損壊していた」(CUT)
「都内の霊園で、腐乱自殺死体が爆発するという事件が起こる」(AID)
「正月の秋葉原で見つかった不可思議な死体。不自然に重たいその体内には、大量の小銭や紙幣が詰め込まれていた」(LEAK)」
「複数の幼児の遺体がバラバラにされ、動物の死骸とともに遺棄されていることが分かる」(ZERO)
なのである(当然ながら各巻作中の死体の扱いはこんな穏やかなモノではない)。
読まないでどうする。
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