『現代マンガ選集 異形の未来』に見るマンガ軽視
『現代マンガ選集 異形の未来』の「ポーチで少女が小犬と」についての150ページの解説には、冒頭に
萩尾望都が『COM』に発表した唯一の作品。
とある。
これは明らかに誤りで、『COM』同年10月号には萩尾望都のやはり名作とされる「10月の少女たち」が掲載されている。
しかも、実は「10月の少女たち」は『現代マンガ選集』の総監修を担当している中条省平が編んだ、同じちくま文庫の『COM傑作選 下 1970~1971』に収録されているのだ。
小学館文庫『10月の少女たち』はその「10月の少女たち」を表題とした萩尾望都の初期傑作短篇集なのだが、それを見ても、同作の最後のコマ下におそらく描かれた時期として「1971年8月」とあるだけで、掲載誌については触れていない。
つまり、大手出版社の文庫であっても、マンガの初出についての資料性はその程度の扱い、ということだ。
かくの如く、マンガは今や文化として十分に市民権を得たように見えながら、実のところいまだに「しょせんマンガ如き」という扱いを受けているのではないか。
筑摩書房はさまざまなアングルからアンソロジーを編んだり、マイナーな作品を復刊したりしてくれるなど、トータルとしてはマンガをずいぶん大切にしてくれている。そのちくま文庫にして、作品の初出について『Yasuji東京』紹介の折に書いたようなルーズさが目につく。
少なくとも、作品集1冊、せいぜい10作品程度の初出を調べず、載せない、あるいは間違って載せるというのは怠慢としか思えない。
扉ページにこって、妙ちくりんなローマ字表示を載せるくらいなら(※)、資料としての価値にもう少し気を遣ってほしいと思う年度末の烏丸であった。
※『現代マンガ選集 異形の未来』では各作品の扉に、ペン画のイラストに加えて著者名、作品名のアルファベット表記を掲載している。装丁上の飾り程度のつもりなのだろうが、それにしてもミス、不統一が目立つ。
「サイボーグ」なら「Cyborg」と英訳、「そこに奴が…」では「Sokoni Yatsuga...」とローマ字表記。ちなみにその裏ページは「Sokoni Yatuga...」と「s」抜け。「300,000Km./sec.」では「300,00Km./sec.」となんと「0」1個抜け。「ポーチで少女が小犬と」なら「Porch de Shojyo ga koinu to」とこれは英単語ローマ字混じりの・・・何語なのか? 「至福の街」ではまた「Shifuku no Machi」とローマ字、「ぼくとフリオと校庭で」にいたっては「Me and Julio Down by the Schoolyard」となんとポール・サイモンの曲名そのまま。
もう、何をしたいのかわからない。原題の下にアルファベットがあるとオシャレだ、カッコイイ、とでも考えたのだろうか。飾りなら飾りで、少し丁寧に考えてほしい。
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