『大怪獣のあとしまつ』 橘もも 脚本・三木 聡 / 講談社文庫
「なにこのトリック」「こいつが犯人かよー」と読み手をとことん呆れさせるミステリを一般に「バカミス」といい、隠れた名作がいくつかあるが、本書は言うならば「バカSF」「バカ特撮」・・・にあたるべきもののはずなのに、「バカ」の称号に相応しいほどの突き抜けもドライブ感もないため、ただの「ダメSF」「ダメ特撮」となってしまった。
オチを書いてしまうと本書のみならず映画までネタバレになってしまうので詳しくは書けないが、
・最大のオチにいたるまでの伏線がちっとも「伏」していないこと
・肝心の巨大怪獣の死体のあとしまつの問題について追及がぬるいこと
(たとえばウルトラマンの第34話「空の贈り物」に登場したスカイドンの処理、ああいった「これでどうだ」「またダメか」「これでもか」という波状ライヴ感に乏しい)
・中盤、とある東宝特撮映画の名作を本歌取りしているのだが、ちまちまとアイテムを使うだけでパロディになっていない
・政府、官僚を描くに「シン・ゴジラ」のように徹底した印象がない、そのため揶揄にもなっていない
・山田涼介と土屋太鳳を起用したシリアスな三角関係が余計
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上記のいくつかは映像になる段階で改善されることもあるのだろうが、とりあえず「小説」の体裁をとった本書では論外。
おそらくノベライズ担当の橘氏には罪はなく、もし映画がそこそこの出来となるなら、このタイミングで映画の宣伝のために出版されたことそのものが間違いなのだろう。
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それはそれとして、以前から不思議なのは、怪獣、特撮モノの「小説」に目を見張るような水準のもの、必読、歴史に残る、と評されるような作品がないのはなぜだろう。
「ゴジラ」「ウルトラマン」「大魔神」・・・いずれも映像作品のノベライズだけでなく、オリジナルストーリーでそれなりによいものを書こうと試みるのはさほど無茶な話ではないように思う。
過去、本ブログでもいくつか扱ってきたが、山本弘『MM9』、有川浩『空の中』、『怪獣文学大全』 や『怪獣文藝』『ウルトラ怪獣アンソロジー 多々良島ふたたび』といったアンソロジー、筒井康隆の『大魔神』、いずれもパッとしない。昔の円谷特撮をなぞって、読み終えてしばらくしたら忘れるようなものばかりだ。
パーティジョーク用に書いたこれのほうがまだマシな気がするほどだ。←傲慢スカイドン
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