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2020/08/27

虫が湧く湧く 『ぞぞのむこ』 井上 宮 / 光文社文庫

Photo_20200827181601 作者は「主婦。30年間、出版されるあてもなく原稿がクローゼットにたまっていくという、クローゼット作家だった」とのこと。ラブリー(はあと)

ちなみに、表題作「ぞぞのむこ」はとくに前澤氏とか、そのあたりのことを描いたわけではない(と、思う)。

各話に食玩か乾燥剤のように登場する矢崎くんが妙な味わいを醸し出していて楽しい。

「ぞぞのむこ」「じょっぷに」「だあめんかべる」 ←これらは収録作のタイトルなのだが、ご覧のとおりちょっと独特な言葉遣い、オノマトペが素敵。とはいえそこはクローゼット作家30年のキャリアがものを言うか、そういった小手先ワザにこだわらず、さらさらと話が進んで読みやすく、胸に溜まるイヤな感じ打ち寄せる茶色い波のごとし。ことに「ぞぞのむこ」や「だあめんかべる」など、振り返れば誰が悪いわけでもなく、ただ因果応報、自業自得の報いだけが向こうからジャブジャブ沸いて出る、そんな恐ろしさ。

「ざむざのいえ」の後半は、実に烏丸好みの虫噺。
以前も取り上げたが、
  埋葬虫(津原泰水)
  反乱(村田 基)
  虫愛づる老婆(草上 仁)
に並ぶコレクションが、また一つ。

おっと、肝心の作品の紹介を忘れていた。
『ぞぞのむこ』は「漠市」という町の穢れにうっかりかかわった人々が思いもよらぬ状況に舐め込まれる不条理ホラー短篇集。読み手に残るは言いようのない恐怖、苦笑い、それからほんの少し、哀れみ。

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