『かわうその自転車屋さん(8)』 こやまけいこ / 芳文社コミックス
ご記憶の方も多いであろう、あれは『かわうその自転車屋さん』第7巻を紹介した折の書評の一節、
> 個人的には7冊めともなるとエピソードも増えたことだし、巻頭に人物(動物?)紹介なり用意していただけると、いいかな。
なんと! この声が作者を、芳文社を動かし──見よ、第8巻の巻頭見開きには登場動物の紹介ページが!
ネット上のデモ、国民の声が『かわうその自転車屋さん』を動かす、その時歴史は動いた!
(マイナー、ローカルな書評ブロガーが言うことではありませんね、すみません。)
さて第8巻もこれまで同様、愉快な動物村、のテイを取りながら、ちょっとした人間ドラマに自転車についてのノウハウ、TIPSをはめ込み、単行本で読めば意外や(失礼)重厚な続き物となっている。
というのも、登場する者たちはすべて外見こそ動物で、たとえばかわうその店長は水浴びが大好き、といった設定はあれど、実のところ個々人はきわめて人間的な生活、家族構成、職業等の基盤の上に立っており、またそれゆえの人生の楽しみや困難と日々相対している。ギャグ漫画にありがちなある1年の無限ループ、ではなく、常に仕事や関係が動いていくのである。
すると当然、出会いと、そして別れがある。
もちろん、穏やかな世界観を提供する作者は、別れといっても決して苛烈なものを持ち出すわけではない。
たとえば対馬くんは自転車便のメッセンジャーからサイクルアパレル会社に転職、漫画家輪尾先生のアシスタント愛沢くんは連載を得てアシスタントを卒業、ロングライド先で事故った阿久くんは自転車との別れに揺れる、などなど。
もちろん、別れだけでなく、ヨウコちゃんに憧れた大角くんのロードデビューなど、新しい出会いも用意されており、全体としては新しい仲間がどんどん増えていく体裁にはなっている。
だが、たとえば『サザエさん』や『うる星やつら』ほどに強固な設定を守り続ける意思がない場合、仲間が増えれば増えたなりに個々の関係は少しずつずれていくに違いない。
第8巻の128台目(=128話目)で、店長とヨウコちゃんの関係が急にギクシャクし、それをハッピーエンドに終わらせているのは、描き手、読み手のそういった危惧への(無意識、意識的は知らないが)一種のガス抜きであった、と考えるのは深読みが過ぎるだろうか。
・・・って「何のマンガの話?」と呆れられそうなレビューになってしまったが、単行本が出るたび意外や(再度失礼)大人のマンガだなーと感じ入って読み返す次第。自転車ファンならずとも一読推奨。
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