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2019/08/26

にじみ出るもの 『うらめしい絵 日本美術に見る怨恨の競演』 田中圭子 / 誠文堂新光社

Photo_20190826171901 以前にも触れたが、再三ブームを盛り返す「妖怪」に比べ、「幽霊」を扱った画集は存外に少ない。
手軽、廉価に入手できるものとしてちくま文庫『幽霊名画集 全生庵蔵・三遊亭円朝コレクション』、新人物往来社『肉筆幽霊画の世界』、別冊太陽『幽霊画と冥界』あたりがお奨めだが、その次がすぐには思いつかないほどだ。

『うらめしい絵 日本美術に見る怨恨の競演』は昨年夏の発行で、時間つぶしに訪れた千葉の美術館のお土産コーナーで巡り合った。
このような霊美な本を1年も知らなかったなんて、自分の首をうしろに垂れていた誰かの黒髪で締めつけたいほどだ。きききいぃぃ。

内容は、目次にならうと次のとおり。

  円山応挙《返魂香之図》
  月岡芳年《幽霊之図 うぶめ》
  小林永濯《菅原道真天拝山祈禱図》
  上村松園《焔》
  村上華岳《日高河清姫図》
  鳥山石燕《大森彦七図》
  甲斐庄楠音《畜生塚》
  三代歌川広重《瞽女の幽霊》
  鏑木清方《朧駕篭》
  島成園《おんな(黒髪の誇り)》
  葛飾北斎《百物語・さらやしき》
  橘小夢《牡丹燈籠画譜》
  揚州周延《東錦昼夜競 佐賀の怪猫》
  伊藤若冲《付喪神図》

幽霊といえば足がない、の端緒とされる(先週のチコちゃんでも紹介された)応挙の《返魂香之図》、芳年の《幽霊之図 うぶめ》、村上華岳《日高河清姫図》、鏑木清方《朧駕篭》など、怨恨あからさまな絵より、ひんやりうすら寒い絵がいい。うぶめの腰巻きににじむ血、清姫のおぼつかない足取り、駕篭女房の並んだ小さな歯……!

著者はそれぞれの作品について物語的背景を語り、作者を語り、作品そのものを語る。いたずらに煽らずその者の「怨み」「恨み」を語り、その果ては切なくもうす気味悪い。

同じ画家のほかの作品や、ほかの画家による関連作品など、本文中に紹介されつつ図版のない作品がいくつかあって、それが読み手には惜しい、つらい。

甲斐庄楠音《畜生塚》というすさまじい絵は初見で、知らない画家だなとググってみれば岩井志麻子『ぼっけえ、きょうてえ』や『岡山女』の表紙のあの画家ではないか。このブログでも実は久世光彦『怖い絵』を取り上げた際、その名に触れていた。
ぼんやりし始めた記憶の中に、美しくも怖い絵のリンクがつながっていく。静かに。

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