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2019/06/20

真珠は日々群青色 『じゃあまたね』 清原なつの / 集英社ホームコミックス

Photo_20190627182101 我らが清原なつのが漫画家に憧れながら小・中・高校生としてゆるりと過ごす、その昭和の出会いを描く1ページ1ページに手がとまる、胸が震える、たとえばマデレイン・レングルの『五次元世界のぼうけん』、これはカラスが小学校の図書室に出入りして係のミ〇ルちゃんに「この棚からここまで全部読んだ、ふん」とか言い放つケッタクソナマイキなガキだったころトーベ・ヤンソン『ムーミン谷の冬』やベリャーエフ『ドウエル教授の首』などと並んで夢中になった、いや、「首」はシリアスな話だったのに同じ本に入っている「永久パン」はなんだか「大きなカブ」みたいなおとぎ話で同じ作家なのにどういうことだこんなことがあってよいのかと不思議だった、そういう時代に清原なつのが同じ『五次元世界のぼうけん』を読んで、いや、夢中になっていたとは、これ以上ないヨロコビにシッポが震える、清原なつのはその後作画グループに参加したり雑誌に投稿したりでプロの漫画家になり、少年少女世界の名作文学(これも清原なつのの部屋には並んでいる)刊行完了に餓えたカラスは石川喬司の『魔法使いの夏』やテレビで放送された初代『ゴジラ』、そしてそのころ漫画誌で連載されたジョージ秋山『アシュラ』や山上たつひこ『ひかる風』にイカれて、できれば作家、でなくともなんでもよいからともかく本作りにかかわる仕事につこう、そうでなければ一生何もしない、そう祈って願ってそれはかなったのだからカラスの話はどうでもよくて、清原なつのだ、万華鏡のようにあの時代の萩尾望都大島弓子、「11月のギムナジウム」、「3月になれば」、「鳥のように」、「なごりの夏の」、同じ作品を同じころに清原なつのが読んで、雑誌から切り抜いて、わあ、わわわ、ただ昔から少しだけ不思議だったのは清原なつのは当時の前衛的というかSFや少女の自立を扱うそういった作家たちの中でも妙に覚めているというかどこか作家本人を俯瞰して見ている気配があって一つのコマを描くにあたりなぜそのコマをそう描くのか考えていたり知っていたりというふうな、あまり文系理系という区分けは好きではないのだがあえていうなら理系の実験室的な視線がすべてのページに感じられて、たとえば清原なつのは『花図鑑』で少女たちの花、つまりセクシャリティを、いやそんなことはこの『じゃあまたね』では後回しもとい先送りで、始まって3ページめ、小学生の彼女が口ずさむのはザ・タイガースの「シーサイド・バウンド」、「ザ・」を抜いてはいけませんよ、その向こうの壁には「007は二度死ぬ」のポスターが貼ってある、わあわあ、昭和の読者はうるさくてすみませんね、デモデモダッテ時をかける、時をかける、まあるくなってアルマジロ。

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