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2019/05/06

タイトルリストラ? 『ベスト8ミステリーズ2015』 日本推理作家協会編 / 講談社文庫

8 講談社文庫の「ミステリー傑作選」は、その年度に発表されたミステリ短篇から厳選して編まれた単行本『推理小説年鑑』(現在は『ザ・・ベストミステリーズ』)からさらに抽出して文庫化したもの。1974年発行の『犯罪ロードマップ ミステリー傑作選1』を嚆矢に、一部スピンオフ的なものも含めて現在では90冊、スチール製の本棚2段以上に及ぶ長大なシリーズとなっている。

今回の『ベスト8ミステリーズ2015』の内容を見てみよう。
収録作は2015年に発表された8篇。

  大石直紀「おばあちゃんといっしょ」
  永嶋恵美「ババ抜き」
  秋吉理香子「リケジョの婚活」
  日野草「グラスタンク」
  榊林銘「十五秒」
  小林由香「サイレン」
  大沢在昌「分かれ道」
  若竹七海「静かな炎天」

推理小説界の傾向か、選者の嗜好かは知らないが、女性が活躍する作品が多い。しかも過半数が、展開はいろいろあれど女性が女性と闘うストーリーである(男性が登場しても添え物、せいぜい輪投げの的程度の扱い)。

誰かが罪を犯し、名探偵がその犯人・動機・方法を推理する、という、いわゆる「探偵小説」の体をなすものは一作もなく、「こんな設定だとなんとこんなことに!」というシチュエーションサスペンスとでも称すべきものが大半。
とたえば社員旅行で三人のオールドミスが罰ゲームを賭けてババ抜きを繰り広げる「ババ抜き」、テレビの婚活番組にリケジョがExcel片手にチャレンジする「リケジョの婚活」、復讐代行業者への依頼を描いた「グラスタンク」、銃で撃たれて死ぬまでの15秒間の錯綜を描く「十五秒」、特殊な刑罰法のもとに被害者の父親が懊悩する「サイレン」など、いずれも設定だけでごはんがごはんがススムくん。

ただ、一短篇としてみると、シチュエーションの説明までの熱量が高すぎて、起承転結の「結」にさほどインパクトがない、起承承承で終わってしまうような作品も目についた。実はいずれもそれなりに「結」には意外性もあり、品質は低くないのだが、「起」が大きすぎてややベタな「結」に驚けない、そんな印象なのである。

さらに、「探偵小説」ほど論理展開に気を遣わないシチュエーションサスペンスでは、ほんの少し冷静になってしまうと大きな穴が目についてしまうことも少なくない。
これほど理詰めでことを進めるリケジョが「彼」に走ったきっかけは? とか、「ババ抜き」や「グラスタンク」のように本人が正直に秘密を暴露することが「結」の要になっているものもある。「サイレン」の終わり方はいっけんショッキングだが、こんな法律が施行されたなら当然予測されるはずで、警察も役所も何をやっているんだか、である。

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おまけ。

最初にも書いたとおり、『ミステリー傑作選』は今回で90冊。そのサブタイトルは、『犯罪ロードマップ』『1ダースの殺意』『殺人作法』といったいかにもミステリアンソロジーめいたものから、最近はそれにさらにアルファベットのキャッチが付いて『Bluff 騙し合いの夜』『Life 人生、すなわち謎』『Acrobatic 物語の曲芸師たち』等々と続いていた。

ここにきて、今回は突然の『ベスト8ミステリーズ2015』。
サブタイトルを検討する労力も惜しんだのだろうか。表紙や帯は変わらず経費、手間をかけているように見えるので、ちょっと不思議だ。
これが今回最大のミステリー。

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