フォト
無料ブログはココログ

« モヤっと 『百鬼夜行抄(27)』 今 市子 / 朝日新聞出版 | トップページ | ご用件は何でしょう? 『セリー』 森泉岳士 / KADOKAWA BEAM COMIX »

2019/04/11

真理を知りたいか──ッ! 『史上最強の哲学入門』 飲茶 / 河出文庫

先日の書き込みで「PC版でカテゴリー(たとえば「コミック(作品)」)を選んで表示される記事タイトルの上限が100件になってしまった」と愚痴ったところ、気がつけばいつの間にかきちんと直していただけていた。しかもスマホ版も同様の仕様に。たいへん助かります。どうもありがとう。 > ココログ運営の中のひと

カテゴリー別に過去の書き込みタイトルをパラパラ見返していて、ふと気がついたこと。
2000年8月以来積もりに積もった本ブログの書評数は近々1300に至るのだけれど(バカだ)、その中に宗教や哲学に関するものはほとんどない。とくに哲学についてはタイトルで検索しても1件しかない。その1件も『マンガは哲学する』(永井均)で、正しくは哲学ジャンルの本ではない。

学生のころはやれヘーゲルだ、どれニーチェだウィトゲンシュタインだと人並みに哲学の本にも手を出したのだけれど、結局身につかず、当時読んだ本の多くは手元にない。
哲学の本に馴染まなかった理由はいろいろあるが(一番は、まあ怠惰でバカだから)、その1つに、よい入門書に出会えなかったことがあったような気がする。あくまで当時、の話だが──「〇〇哲学入門」とよさげなタイトルの本を手に読み始める、最初の章は「哲学とは」から始まってふむふむと読み進む、そのうち結局著者の専門、たとえばプラトン、キルケゴール、ニーチェ、ハイデガーに話が収束して、それぞれがいかに素晴らしかったかと論が進む──結局、「哲学」の全貌がよくわからない!

「東横のれん街、渋谷はこちら」「リーマンインタビューのメッカ、新橋SL広場」「実はパルコのある町、錦糸町」とポイントは詳しいが俯瞰した鉄道地図がない、そんな感じ。
なので、たとえばショーペンハウエルなど、読んだことはあるのにいまだに哲学というジャンルの中で立ち位置がどのへんにあるのかよくわからない。そもそも、たとえばカントとホッブスとルソーを一包みで取り上げることに意味はあるのか、可能なのか。

哲学はそんなお気楽なダイジェスト文化ではない!と叱られればそれまでだが、いきなり「プロの哲学者に、オレはなる!!」という気構えもない初心一読者に、入口のハードルが高すぎるのだ。

Photo_3 ・・・で、ここでようやく本題だが、河出文庫の『史上最強の哲学入門』、これが面白い。
哲学の歴史を上空からフェアに俯瞰する、という意識の持ちようがすがすがしいし、板垣恵介の人気格闘マンガ『バキ』にならって哲学者同士の対戦を意図した構成も素晴らしい。ともかく読みやすい、わかりやすい。

全体は「真理」「国家」「神様」「存在」の4つの“ラウンド”に分けられ、それぞれのテーマのもと、哲学者たちが勝ち抜き戦を行う。
たとえば「神様」を扱った第三ラウンドでに登場するのは、「楽しく生きたいから哲学者になったのだ! 真の幸福を見せてやる エピクロス!!」、「信者の前でならオレはいつでもキリストだ! 燃える教祖 イエス・ベン・ヨセフ 本名で登場だ!!」、「真理を探しに宗教へ入ったッ! 教父アウグスティヌス!!」、「真理のベスト・ディフェンスは神学の中にある! スコラ哲学の神様が来たッ! トマス・アクィナス!!」、そして「神殺しは生きていた! さらなる研鑽を積み人間狂気が甦った! 超人!! ニーチェだァ────!!」・・・

もちろんこれだけではわかりにくいだろうが、要するに誰かが「真理」「国家」「神様」「存在」についてナイスアイデアを提示、しかしそれに欠陥、弱点があるなら後人がそれを指摘、反論、ないし凌駕するナイスアイデアを提示、さらにそれを上回るナイスアイデアが、といった具合に哲学の大きな流れを説明していくわけである。
第三ラウンドのラインナップだけでも、時代や派閥にこだわらず、「神」というテーマにそっての人選、格闘戦を想定していることがうかがえ、流して読むだけでも十分楽しい。
(もっとも地のテキストはオーソドックスな柔らかい紹介文で、実際に哲学者同士がリングの上でディベートするとか、そういうわけではない。そこはちょっと残念。)

こうした構成をとったことで、読み手は、ギリシア時代からのさまざまな思想への取り組み、それぞれの進歩、限界をわかりやすくとらえることができる。実際、風呂につかりながらライト小説を読む程度の労力で、すらすら頭に入るのである。

本書は、哲学を専門に勉強、研究されている方にはもしかしたら当たり前のことを薄く書き並べた程度の本なのかもしれない。そういう書評も見かけないわけではない。
しかし、その当たり前のことを1冊でわかりやすく示してくれる入門書が意外と少なかったこともまた事実なのだ。
学生時代に本書のような楽しい哲学入門書にめぐり逢えていたならば!!
──いや、やっぱり深追いはしなかったとは思いますが。

« モヤっと 『百鬼夜行抄(27)』 今 市子 / 朝日新聞出版 | トップページ | ご用件は何でしょう? 『セリー』 森泉岳士 / KADOKAWA BEAM COMIX »

心理・教育・哲学・宗教」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

« モヤっと 『百鬼夜行抄(27)』 今 市子 / 朝日新聞出版 | トップページ | ご用件は何でしょう? 『セリー』 森泉岳士 / KADOKAWA BEAM COMIX »