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2019/04/22

うちの土地 『幸せ戦争』 青木祐子 / 集英社文庫

Photo_5『これは経費で落ちません!』シリーズの青木祐子氏はもともとジュブナイルの分野に多数の作品を発表してこられたベテラン作家であり、『幸せ戦争』は氏の初めての一般小説とのこと(詳しいわけではないので、間違いがあったらごめんなさい)。

『幸せ戦争』は郊外の瀟洒な戸建て4件屋に住む家族、それぞれがかかえたねじれを描いた作品で、インターネットの有名掲示板用語でいえば「キチママ」「ウヘァ」「修羅場」案件ということになる。概ね、察してください。

素晴らしいのは──『これは経費で落ちません!』もそうだが──個々の家庭、とくに主婦当人のキャラクターが順に明らかになり、いよいよカタストロフィ! となるべき場面で、作者の木刀拳銃手榴弾が登場人物たちを吹っ飛ばす、そのはずが、意外や皮一枚だけ切って引く、悲鳴をあげる間もなく勝負が決する、その凄み。
4件屋の家族それぞれの立ち位置をバランスよく描いた構成力、そしてその凄みが、本来ならドロドロの愁嘆場となりかねない話に、青白い、凛とした清涼感を配す。

本来、イヤゲな主婦がうじゃうじゃ湧いて出る喪失不可避の物語のはずが、残るはささやかだがフリスキーな爽快感。
歴戦のプロの仕業、と感嘆する次第。

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