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2019/02/14

イエスタデイ・ワンス・モア 『オリオンラジオの夜 諸星大二郎劇場第2集』 諸星大二郎 / 小学館

Photoここ数年の諸星大二郎の単行本は、正直、食い足りない印象のものばかりだ。

やむを得ないことかとは思う。
彼の手掛けてきた作品の方向性、たとえば考古学者 稗田礼二郎を語り手とする歴史・伝承ホラー、中国伝奇に想を得た奇譚、クトゥルー神話のパロデイ、異界を描くバイオSF、などなど(この切り分けそのものが難しい。たとえば長編『MUDMEN』は何なのか?)、そのそれぞれのベクトルにおいて圧倒的な作品を舐めるように読み返して我々は、もはや多少のことでは驚かなくなっているのだ。

ビッグコミック増刊号で掲載された短篇をまとめた「諸星大二郎劇場」、第1集の『雨の日はお化けがいるから』も、「すでにどこかで読んだような」、ばたついた短篇集だった。

最新刊『オリオンラジオの夜』はその「諸星大二郎劇場」の第2集で、こちらも残念ながら1冊を通すと同じ作者の最高水準にはほど遠い。
それでも、収録8篇のうち6篇を占める「オリオンラジオ」シリーズ、これは奇妙なやるせなさに満ちている。晴れた冬の夜、限られた場所でしか聞くことのできないラジオ放送、そこから流れる洋楽(主に60年代、70年代のヒット曲)が登場人物の人生を静かに狂わせ、隠された事実を明らかにする。
親しい者が消えていく物語の中で、発信者も発信元もわからないオリオンラジオばかりがかすかに響く、そのうら寂しさは当時ノイジーな深夜放送に一生懸命チューニングを合わせた者には共感を得るに違いない。

逆にいえば、ラジオの深夜放送を聞く、そこで初めて耳にする洋楽ヒットに胸をときめかす、そんな経験のない(さらに作中のヒット曲タイトルにまったく聞き覚えのない)最近の読者にはとっかかりのない作品集かもしれない。
もとより、諸星大二郎に「万人受け」など誰も期待していないのだが。

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