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2019年1月の1件の記事

2019/01/21

プロ二人 『耳袋秘帖 眠れない凶四郎<1>』 風野真知雄 / 文春文庫、『狂四郎2030(全20巻)』 徳弘正也 / 集英社 ジャンプ・コミックス デラックス

Photo耳袋秘帖」シリーズもさすがにダレ気味、とか思っていたらいきなりの新章スタート、スピンオフですらなく、新たな登場人物を主役に置いて従来のメインキャラたちを脇役に追いやる。プロだなあ、風野真知雄。

新主人公 土久呂凶四郎は池の端の出合い茶屋で妻を惨殺され、以来不眠症に悩む南町奉行所の定町回り同心。
本シリーズにかつてなかった救いのない設定だ。凶四郎は妻の死の真相を暴き、立ち直ることができるのだろうか。

タイトルはもちろん柴田錬三郎『眠狂四郎』からの剽窃である。ただし内容にはほとんど類似性はない。同じ時代小説であの大名作からパクっておいてこの気負いのなさ、てらいなさ。いっそ不思議なくらいだ。

ともかく「そろそろ新刊が出ても追うのをやめようか」となりかけたところでこの新展開、またしばらくはわくわくを続けることができそうで嬉しい。
いやもちろん凶四郎の心中を思いやればわくわくなんて失礼千万な話なのだが。

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2030ところで、「きょうしろう」といえばもう一つ、近未来社会を描いたマンガ『狂四郎2030』についても触れておきたい。

作者徳弘正也は少年ジャンプ掲載の『シェイプアップ乱』『ジャングルの王者ターちゃん♡』など、クセのある描線に過剰な下ネタギャグで知られる。そのくせストーリーだけ追うと苛烈な闘いと悲哀の相まったスケールの大きなドラマを提供する、不思議な作家である。

『狂四郎2030』はその徳弘が少年誌から青年誌に移った最初の作品で、21世紀の世界大戦後のゲノム管理社会下、バーチャルネットワークを通して出会った男女が現実にめぐり逢うために旅と闘いを繰り広げるという物語である。
その(とくにヒロイン志野の)設定の過酷さは、『北斗の拳』が子ども向き絵本に思えるほどだ。

そして、その過酷な物語を、徳弘は少年誌より格段にパワーアップした遠慮会釈ない下ネタとグロな描写で覆い尽くす。

(最近よく目にする)人間性を徹底的に壊しては再構築し、その中で人間の尊厳と存在意義を問う、その手法の先駆性において『狂四郎2030』は『寄生獣』と並び称されるべき作品の1つではないかと思う。だが、読み手を選ぶ絵柄、万人に奨めがたい下ネタ連発のため、徳弘作品は「面白いが打ち切りになることの多いベテランのマンガ」として流れて消えていく。

いや、消してはいかんだろ。
再販しろよ集英社。

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