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2018/12/19

最近読んだミステリから ヘレン・マクロイ『悪意の夜』、田南 透『翼をください』、ディック・フランシス『興奮』

Photo『悪意の夜』 ヘレン・マクロイ、駒月雅子 訳 / 創元推理文庫

概して主人公(語り手)が

  催眠術
  記憶喪失
  夢遊病

のいずれかに陥る類のミステリは苦手だ。これらが通るようならほとんどもう「何でもあり」になってしまい、探偵がどんなに理屈を唱えても「ほんとかな?」の疑念が晴れなくなってしまう。

加えてかの『バーナード嬢曰く。』にも

  ディックが死んで30年だぞ!
  今更 初訳される話がおもしろいワケないだろ!

の名文句があるが、こちら『悪意の夜』はウィリング博士、最後の未訳長編。バーナード嬢にならえばおもしろいワケがない

……だが、それだけ足を引っ張る前提満載の割には、楽しんで読めた。否、むしろ東西冷戦を背景に、苦い動機、苦い殺人という、マクロイらしさに溢れたお得感のある読後感でもあった。いやほんと。

解説の佳多山大地氏は本作が最後まで訳されなかった理由(つまり作品の欠点)についてある展開の物足りなさを指摘しているが、もともとマクロイの長編にその程度の瑕疵は珍しくない。それどころか、その欠点とされる展開は本作のスピード感や明確さにつながっているようにも思う。

つまるところマクロイの作品は「名手」とか「円熟」とか「巨匠」とかいった煽りは気にしないで、少し古めの海外サスペンスドラマを見るつもりで楽しむといいように思う。無理に重くとらえる必要はないし、現代に引っ張ってくるべきものでもない。

Photo_2『翼をください』 田南 透 / 創元推理文庫

プロフィール非公開の作家によるデビュー作。新人にしては手慣れたところがあって、既存のプロによる覆面作なのかな、とも思う。

愛らしい笑顔と親身な気遣いの裏に計算高い本性を隠し持つ女子大生石元陽菜。彼女はストーカーに付け狙われ、その無言電話に対して憂さ晴らしに周囲の者から打ち明けられた「秘密」を暴露してしまう。ところが、その中にはストーカー本人の「秘密」が含まれていた……。
この展開はなんだか新しい。文庫カバーの粗筋にワクワクするなんてそうそうないことだ。実際、陽菜、陽菜に夢中な男子大学生、ストーカー本人、それぞれの登場人物に順に語らせる前半はスピーディかつ人物紹介も巧みで読ませる。

ただ、大学のゼミの関係者から捜査陣まで皆それぞれ「わけあり」にしてしまったため、どんどん話が煩雑になって、終わってみれば全員ヘンな人、全員病人。というか、心の病気合戦で一番アブない奴が勝ち残る、そんな話になってしまった。
さらに最終章の決着はいくらなんでも警察の鑑識能力をバカにしすぎ。あの人物とあの人物の遺体を取り違えるとか、あり得ないでしょう。

前半は読ませる、と書いて、後から気がついたのだが、本作の物足りなさは上の『悪意の夜』について佳多山大地氏が指摘した内容に相似する。最後に笑うのが石元陽菜でもよかった。石元陽菜の活躍するスピンオフ青春ミステリ。どうだろう。

Photo_3『興奮』 ディック・フランシス、菊池 光 訳 / ハヤカワ文庫

古典中の古典。ごめんなさい、読んでいませんでした。
今回は長年本棚に積んであったものを1冊クリアした、という報告だけ。

解説で石川喬司氏がディック・フランシスを持ち上げに持ち上げているが、まあこの方は「馬家」で知られる大競馬ファンでもあったので……。

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