フォト
無料ブログはココログ

« 〔ネタバレ御免〕 『スマホを落としただけなのに』 志駕 晃 / 宝島社文庫 | トップページ | 大団円 『そこをなんとか』(最終15巻) 麻生みこと / 白泉社 花とゆめCOMICS スペシャル »

2018/12/10

『Acrobatic 物語の曲芸師たち ミステリー傑作選』 日本推理作家協会編 / 講談社文庫

PhotoLifeだのLoveだのProposeだの、ミステリー傑作選のサブタイトル、内容としてこれはどうなの──が数冊続いて空漠たる思いにとらわれていたが、今回は、なんというか、踊れるものがあった。

『Acrobatic 物語の曲芸師たち』は2015年に講談社から刊行された『ザ・ベストミステリーズ2015』を2分冊にして文庫化したものの1冊で(もう1冊が既刊の『Propose 告白は突然に』)、2014年に発表されたミステリー短篇から秀作6篇が収録されている。

玄関のベルに応対すると、妻を亡くして間もない近所の老人だった。座敷童が家にいるようだ、というのである。
  (加納朋子「座敷童と兎と亀と」)

人を殺した罪を抱えて刑務所の門を出た男。そこに現れた三人の若者たちは金を求めて男を強請り、執拗につきまとう。彼らの嫌がらせに再就職もままならなくなって男は……。
  (下村敦史「死は朝、羽ばたく」)

人形のような顔でガムを噛みながらロシアンルーレットに連勝する少年。友はすでに敗れて入院した。勝ち運を失ったギャンブラーは神に愛される少年に勝てるか。
  (両角長彦「不可触」)

川沿いの公園で開かれる“ゆるキャラ”コンテスト。そこには恐ろしいテロリストたちの陰謀が隠されていた。SATを辞め、捜査権のない主人公はいかにして爆薬のありかを探り、殺戮の午後から市民を守るのか。 ←嘘々
  (東川篤哉「ゆるキャラはなぜ殺される」)

名家を継ぐ一人暮らしの老婆をめぐる、ひったくり、名画盗難、放火事件……不埒なコンビが暴く相次ぐ奇妙な事件の真相は。
  (若竹七海「ゴブリンシャークの目」)

念願かなってもつことのできた自分のカレーショップ。開店の朝、最初の客は、子どもの頃母親に失踪された青年。唯一覚えている母親の作ったカレーの味の秘密は。
  (葉真中 顕「カレーの女神様」)

と、つらつらあらすじ風に内容紹介してみせても、おそらくほとんど決着への案内にはならないだろう。

どうなることかとはらはらさせておいて、文字通りアクロバティックに世界をひねってみせる「死は朝、羽ばたく」が一押し。フェアな本格推理作品でもある。
他のいずれの短篇も、一見ゆるめのユーモア小説や警察小説ふうに始まりながら、後半、骨太に論理的解決をしてのけて巧い。この興趣はミステリーならではで、ほかの何物でもない。

しいていうなら会社の命運をロシアンルーレットの強者にたくす「不可触」、ギャンブラーの苦い推理を描く短篇として過不足こそないが、いかんせんこの設定は鈴木マサカズ『ラッキーマイン』に前例があり、あの生臭く濃い世界観の後ではどうしても淡泊にしか感じられなかった。残念。

« 〔ネタバレ御免〕 『スマホを落としただけなのに』 志駕 晃 / 宝島社文庫 | トップページ | 大団円 『そこをなんとか』(最終15巻) 麻生みこと / 白泉社 花とゆめCOMICS スペシャル »

ミステリ・サスペンス」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/547008/67469885

この記事へのトラックバック一覧です: 『Acrobatic 物語の曲芸師たち ミステリー傑作選』 日本推理作家協会編 / 講談社文庫:

« 〔ネタバレ御免〕 『スマホを落としただけなのに』 志駕 晃 / 宝島社文庫 | トップページ | 大団円 『そこをなんとか』(最終15巻) 麻生みこと / 白泉社 花とゆめCOMICS スペシャル »