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2018/05/31

『正義のセ ユウズウキカンチンで何が悪い!』 阿川佐和子 / 角川文庫

Photo前々回、マーケティング手法の普及、発達に伴い、テレビドラマはヒット作品の劣化コピーを繰り返すようになった、と書いた。
それがどれほど正しいかは立証のしようもないが、テレビドラマの原作に選ばれた作品がそれぞれの豊かな味わい、個性を削り、切り捨てられ、いずれどこかで見たようなモノに張り替えられてしまう例は何度も目にしてきた。コミック原作ものにそれは顕著だが、小説を原作とするドラマも本筋はそう変わらない。

『正義のセ』シリーズは、キャスター、エッセイストで知られる阿川佐和子氏(NHK・Eテレで放送されたふなっしーとの「SWITCHインタビュー 達人達」は永久保存に値する傑作だ)による、若手検事 竹村凜々子を主人公にした連作小説である。角川文庫で現在4巻まで。

豆腐屋の娘 凜々子の小学生時代から書き起こし、慣れない検事業務の中から手探りで自らの「正義」を見つけ出そうとする成長物語で、ミステリ、サスペンス色は薄い──というか、ほとんどない。午後9時、10時から放送されるサスペンスドラマより、朝の連ドラに近い、と言うとわかりやすいだろうか。
各編で凜々子が担当する事件は、凜々子を苦しめ、「正しい裁き」について惑わせこそすれど、大きな裏やどんでん返しがあるわけではない。そもそも警察の捜査がそうそう覆るはずはないし、検事が警察からの報告を疑って現場に赴くこと自体イレギュラーなのである。
2巻めの終わりから3巻めにかけ、大きな冤罪事件、そしてマスコミとの軋轢が描かれはする。しかし、その際も作者の眼差しは事件そのものより、被害者、あるいは巻き込まれた凜々子のやるせない思い、家族や友人との関係の破綻、その結ぼれに暖かく向けられる。したがってその結末も、ミステリ小説に慣れた読み手からするとおよそ肩透かしの感が強い。

ところが、これが吉高由里子主演でドラマ化(日本テレビ)されるや、原作のいくつかの事件、脇役たちは踏襲しつつ、毎回検事が事件の現場に再捜査に赴き、真相を覆す1話完結の人情サスペンスに変わってしまう。人間関係も格段にスマートだ。

不思議なことに、吉高演ずる凜々子の演技が間違っているわけではない。2年前に発行された文庫の表紙イラストも、まるで吉高のキャスティングを想定していたかのようだ。

つまり、小説とテレビドラマでは、そもそも「文体」が違うのである。

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