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2017/11/17

メンタリティー 『日本人ときのこ』 岡村稔久 / 山と渓谷社 ヤマケイ新書

Photoきのこつながりでもう1冊。
妻が椎茸だったころ』に比べれば穏やかなタイトル、装丁だが、その実内容は凄まじい。

本書は奈良時代から江戸時代までのあらゆる説話、日記、和歌などからきのこについて触れた記載を調べ上げ、まとめたもの。
と書けばあっさりした印象だが、たとえば本文中には次のような一節がある。

  奈良・平安時代のところで、何首かきのこの歌を紹介した。(中略)きのこにたいする感動を正面から詠んでいるのは、『万葉集』の「高松のこの峯も狭(せ)に笠立てて盈(み)ち盛りたる秋の香のよさ」という短歌ただ一首に過ぎない。

つまり、こういうことだ。
著者、岡村稔久氏は、奈良から平安時代にいたる『万葉集』『古今和歌集』『拾遺和歌集』などさまざまな歌集にあたってはきのこを扱った和歌を数え上げ、その上で「ほかにはない」と断じているのである。
さらには鎌倉期の歌人寂蓮の和歌を取り上げ、

  これ以降、きのこやきのこ狩りを詠んだ歌は長いあいだ見当たらなくなる。

と語る。さらりとこう言い切るためにどれほど確認に手間がかかったことか。

しかし長年の艱難辛苦を感じさせない著者の淡泊な口ぶりはあくまで穏やかで、それぞれの時代の公家や武士、市井の人々がいかにきのこ狩りを楽しみ、高価なマツタケを珍重し、美味しく味わってきたか、興趣はその一点に絞られるのである。

それにしても、『今昔物語集』あたりまできのこの親分だったヒラタケが(京都の周辺にマツ林が増えるとともに)マツタケに主役を奪われて以来、日本人のマツタケ好みはあきれんばかりだ。貴族も秀吉も学者も町人も、こぞってマツタケ狂騒曲。シイタケなんぞ江戸時代の項の隅にオマケのように登場するばかり。

和歌だの随筆だの、「古文は苦手」という方も心配はない。きのこを食べて踊る尼さんの話やきのこの化け物が大暴れする狂言、きのこ料理の作り方からきのこによる暗殺事件まで、匂いマツタケ味シメジ、ほら鍋も煮立った、まずはこのきれいな赤いのなんてどうだい。

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