フォト
無料ブログはココログ

« 『山の霊異記 幻惑の尾根』『山の霊異記 赤いヤッケの男』(角川文庫)、『山の霊異記 黒い遭難碑』(MF文庫ダ・ヴィンチ) / 安曇潤平 | トップページ | sick inside 『花咲舞が黙ってない』 池井戸 潤 / 中公文庫 »

2017/09/12

『山怪 山人が語る不思議な話』 田中康弘 / 山と渓谷社

Photo(『山の霊異記 赤いヤッケの男』の帯の献辞つながりから、田中康弘の本を1冊──)

『山の霊異記』シリーズが主に登山の対象となるような「深山」を舞台にした怪談集であるのに対し、田中康弘の『山怪』シリーズは概ね樵や漁師が働くところの「里山」を舞台にした伝承、伝説集である。

……と、遠回しな書き方をしたが、要は山里で人が行方不明になったり怪しい光が飛び交ったりしても、たいてい狸や狐のせいにされて終わるので、現代の感覚からすればまったく怖くないのだ。ツチノコがぴょんぴょん跳ねて側溝に逃げ込む話を聞いても、普通、怖いとは思わないでしょう。

では帯の惹句にある「現代版遠野物語」との評価はどうかと言えば、個人的にはそうは思えなかった。
地域や語り手を絞るわけでもなく、ただ漫然と「山場のヘンな体験」を搔き集めた印象。夢や酒のせいと思われるものを端折るのはもちろん、柳田國男から100年は経っているのだ、科学で説明のつく現象は説明を尽くすのが勤めというものだろう。

山の中で聞こえるはずのない太鼓やチェーンソーの音が聞こえる、といった話が幾度か出てくる。これはたとえば野生化したインコやオウムの類ではないか。
(実際、ときどき不気味な声が聞こえるが、それは鳥の鳴き声だろうと語り手が推察して終わってしまう話もある。)

山道の風景が左右反転して見えた、という話がある。失読症(ディスレクシア)の一種に文字が左右反転して読めなくなるというものがあるらしい。その類の一時的な神経症でもあろうか。

などなど、暇つぶしにパラパラ読む分にはともかく、とくに驚くところのなさそうな本ではあるが、話題になる程度には売れたらしい。山渓の名が日頃怪談本など見向きもしない読者層を掘り起こしたなら、それはそれで悪い話ではない。

« 『山の霊異記 幻惑の尾根』『山の霊異記 赤いヤッケの男』(角川文庫)、『山の霊異記 黒い遭難碑』(MF文庫ダ・ヴィンチ) / 安曇潤平 | トップページ | sick inside 『花咲舞が黙ってない』 池井戸 潤 / 中公文庫 »

ホラー・怪奇・ファンタジー」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/547008/65780141

この記事へのトラックバック一覧です: 『山怪 山人が語る不思議な話』 田中康弘 / 山と渓谷社:

« 『山の霊異記 幻惑の尾根』『山の霊異記 赤いヤッケの男』(角川文庫)、『山の霊異記 黒い遭難碑』(MF文庫ダ・ヴィンチ) / 安曇潤平 | トップページ | sick inside 『花咲舞が黙ってない』 池井戸 潤 / 中公文庫 »