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2017/09/21

よろしくお願いしまぁぁぁす! 『発達障害』 岩波 明 / 文春新書

Photo帯の惹句にいわく、
他人の気持ちがわからない 同じ失敗を繰り返す 極端なこだわり…… ASD、ADHD、アスペルガーの謎に迫る!

おやおや困った。なにしろこのカラスも、
他人の気持ちがわからない 同じ失敗を繰り返す 極端なこだわり……

学生のころから、時おりこうした精神医学関係の本を読んできた。およそ学究的な目的でも病気に苦しむ人のためでもなく、興味本位と言われれば仰るとおり。
その上で感じるのは、人の心を解析し、導くことの難しさだ。結核や天然痘が癌が治る、治らない、という話とはまるきり異なる。なにしろ心の状態は容易に定量化できない。どこまでが健康かの定義も難しい。

さらに、心の病については、精神医学界においても定義や対応がどんどんシフトしていく。
アメリカ精神医学会による精神疾患の診断・統計マニュアル(DMS)の最新版(第5版、2013年)によると、
 「発達障害」という大きな括りの中に
 「ASD(自閉症スペクトラム障害)」と
 「ADHD(注意欠如多動性障害)」という括りがあり、
 その2つは一部ダブっており、
 「アスペルガー症候群」は「ASD」に含まれる
ようになったそうだ。
重要なのは、この集合のベン図、そして「発達障害は生まれつきのものであり、成人になってから発症するものではない」という点だろうか。少なくともお子さんのASDやADHDに苦慮しているお母様方は、ご自身の育て方を無闇に反省したり悩んだりする必要はない、ということだ。

本書にはこの「発達障害」の現時点での場合分け、サヴァン症候群・共感覚・学習障害など諸症状、過去の文献や大きな事件に見られる症例、適切な対応への試みなどがまとめられている。
病気に対する予断や偏見についての注意喚起を含め、概ね信頼に足る啓蒙の書であるように感じたが、著者の治療事例をもとにしたためか、大半が成人になって問題が明らかになったケースについてであり、タイトルと比べて違和感がある。また、(無論これは現在の精神医学の限界によるものなのだが)分類や症例の列挙ばかりで、結局のところ原因にも抜本的な改善にも触れられていないところ、など、食い足りないといえば食い足りない。

もう一点、本書に例証された映画『風立ちぬ』の堀越二郎、アンデルセンやルイス・キャロル、豊川主婦殺人事件や佐世保小6殺人事件などの顛末、分析を読むにつけ、たとえば(本ブログの最近の例でいえば)『花咲舞が黙ってない』の舞、『コンビニ人間』の古倉恵子、『これは経費で落ちません!』の森若沙名子、『フラジャイル』の岸京一郎たちにも発達障害の気味があるのではないか、という疑念がわく。もちろん、小説やマンガに登場する架空の人物についてどうこう言ってもしょうがないのだが、これらの人物たちになんらかの処置を施したら彼ら独特の個性、またそれに伴う出来事のあれこれが喪われてしまうのかと考えるとなにやらうすら寒い。

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今、NHKスペシャル「発達障害」の再放送見ています。

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