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2017/07/04

〔短評〕 『短篇ベストコレクション 現代の小説2017』 日本文藝家協会 編 / 徳間文庫

Photo2000年より続いている「小説雑誌や出版社のPR誌などに掲載された数多くの短篇小説の中から選び出された年間優秀作のアンソロジー」たる本シリーズだが、今年の1冊は……なんだか、おかしい。

品質が低いわけではない。ではなくて、選者の好みなのか、圧倒的に「ほのぼの」「ほっこり」風味の作品が多いのである。

両角長彦「給餌室」、太田忠司「猫とスコッチ」、法月綸太郎「砂時計の伝言」など実は悲惨なサスペンス、柴田勝家「雲南省スー族におけるVR技術の使用例」、三崎亜記「流出」のように最新IT技術やネット環境を素材にした実験的な作品もなくはない。だが、それらすべてを含め、全体に「なごみ系」「ペーソス」の味わいが強いのだ。ラブロマンスめいたものもいくつかあるが、いずれも草食に煮え切らないか「なんちゃって」に終わる。
明るく前向きな青崎勇吾「早朝始発の殺風景」、芦沢央「水谷くんに解けない謎」は大昔の中高生向け雑誌の付録に載っていそうだし、ファンタジーにしてもよくわからない小島水青「花はバスにのって」は詩とメルヘン。
ほかにいくらでもシリアスな短篇があったであろう今野敏からわざわざ「タマ取り」を選ぶにいたって、確信犯かとも思う。少なくとも今年のこの1冊に限り、選者たちは一定以上に深刻な(ないし深刻ぶった)短篇を排除したのだ。

その中で最も救いのない物語は今村夏子「父と私の桜尾通り商店街」だったろうか。ところがこれに選者の一人、清原康正は「ほんわかとした気分にさせてくれる」の評。
何を考えているのか。さっぱりわからない。

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