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2017/05/10

『封印作品の謎 テレビアニメ・特撮編』『封印作品の謎 少年・少女マンガ編』 安藤健二 / 彩図社

『封印作品の謎 テレビアニメ・特撮編』『封印作品の謎 少年・少女マンガ編』は、安藤健二の単行本『封印作品の謎』『封印作品の謎2』(以上太田出版)『封印作品の憂鬱』(洋泉社)3冊から再編集、文庫化したもの。

先に目次を転記しておこう。

1『封印作品の謎 テレビアニメ・特撮編』

第一章 闇に消えた怪獣
 ──『ウルトラセブン』
   第一二話「遊星より愛をこめて」
第二章 裁かれない狂気
 ──『怪奇大作戦
   第二四話「狂鬼人間
第三章 忘れられた予言
 ──映画『ノストラダムスの大予言』
第四章 ウルトラとガンダムの間に
 ──『サンダーマスク』
第五章 ポケットの中の悪夢
 ──日テレ版『ドラえもん』

2『封印作品の謎 少年・少女マンガ編』

第一章 禁じられたオペ
 ──『ブラック・ジャック』
   第四一話「植物人間」・第五八話「快楽の座」
第二章 引き裂かれたリボン
 ──『キャンディ・キャンディ』
第三章 悲しい熱帯
 ──『ジャングル黒べえ』
第四章 怨霊となったオバケ
 ──『オバケのQ太郎』

目次を書き写したのには意味がある。
章数がこの手の本としては極めて少ないのだ。

たとえば同じ彩図社の文庫『定本 消されたマンガ』(赤田祐一、ばるぼら 共著)では、約60タイトルのマンガが扱われている。
1冊あたりでみれば10分の1以下、ということになる。

この章数の少なさは何を表すのか。
著者の取材が執拗、なのである。

テレビで再放送されない回があるなら、最後に放送されたのはいつ、どの局でなのか。フィルムはどこにあるのか。権利はどこにあるのか。なぜ再放送、DVD化が止められているのか。その問題を最初に指摘したのは誰か。その人物は今はどう考えているのか。制作側は。
著者は堅い木の薄皮を1枚1枚はがすように、関係者を訪ね歩き、問い、彼らの返答ないし沈黙(取材拒否)を記録していく。取材の多くは空振りに終わるが、それでもいかなる意図が働いたか(流行りの「忖度」というやつだ)、やがて壁は壁の形として見えてくる。
(この自身に厳しいスタイルのため、著者はノンフィクション作家として作品を多発することができず、生活のためにサラリーマンに戻ったという。なんという損失だろう。)

たとえば連続幼女誘拐殺人事件の宮崎勤の部屋にダビングテープがあったことで話題になった『ウルトラセブン』の第一二話、これ一つとっても「スペル星人が被爆者差別として問題扱いされたため」などという単純な図式ではすまない。背景には番組制作を離れたところでの紙媒体での紹介事故(と言ってよいと思う)、指摘を受けての制作側の初動ミスがあり、ひとたび封印された後は「はれもの」として「なかったことにする」業界の体質があった。

扱われている作品は総じて古いものが多い。だが、見えてくる構図は普遍的だ。

単行本から文庫になる間に封印の解けた作品もある(『オバケのQ太郎』など)。
それはよいことだ、しかし藤子不二雄にかかわる顛末はいずれも爽快とは言い難い。
僕たちは藤子不二雄の作品世界について、あのシンプルでかわいらしい線に騙されてきたのかもしれない。──だが、騙されるなら騙されたままでいたほうがよい、そういうことだってある。

同じく後味が悪いのは、一世を風靡した『キャンディ・キャンディ』(「・」は正しくはハートマーク)が絶版、放送停止にいたる顛末だ。
背景には原作者水木杏子と作画担当のいがらしゆみこの係争がある。
この係争はマンガにおいて原作者と作画者、どちらに著作権があるか──という報道をされることが少なくないが(最高裁では原作者水木側の勝訴)、こと本書を読む限り、実際はもう少しプリミティブな人間性に問題があったように読める。
田中圭一の『ペンと箸』においていがらしゆみこはその子息によって

  著作権裁判とかプライベートでつらいことが
  山のようにあった時も
  彼女はいつもほがらかで明るい
  そういう母をかっこいいと思ってきました

と語られる。
そうだろうか? この時期、いがらしはむしろ思い悩み、反省し、いかに謝罪、和解するかを考えて呻吟すべきだった。それが、それのみが『キャンディ・キャンディ』を復活に導く、本当にかっこいい母親の姿だったはずだ。違うだろうか。

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