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2017/05/18

ミステリホメオパシー 『Life 人生、すなわち謎 ミステリー傑作選』 日本推理作家協会編 / 講談社文庫

Life日本推理作家協会では、1948年度版以来、毎年欠かさず、その1年に発表された優れたミステリ短篇をまとめたアンソロジーを刊行している。それを年2分冊にして刊行しているのが講談社文庫の『ミステリー傑作選』シリーズ。ショートショート特集など、変格も交えて4月発行の『Life 人生、すなわち謎』で85冊めとなる。

今回の収録作は5作、

新幹線の車内清掃チームがある日の東北新幹線車輌で出会った小さな事件、そこにはある女性の人生が。
  (伊坂幸太郎「彗星さんたち」)

渋谷分駐所に所属する機動捜査隊で年上の警部補と急増コンビを組むことになり、今ひとつ納得のいかない主人公。だが、頼りなく思われたそのベテラン刑事には意外な側面が。
  (今野敏「暁光」)

腕のいい石工だった男が墓所の片隅で幼い息子に見せたのは、若い職人と連れ立って家を捨てた母の墓石、そこに彫られた朱文字の母の名だった。
  (翔田寛「墓石の呼ぶ声」)

プロ野球の人気球団の新しいヘッドコーチ人事をめぐる、スポーツ新聞社内の駆け引き。
  (本城雅人「コーチ人事」)

派遣の身分から社会保険労務士の資格を得てキャリアをリスタートさせた主人公は、担当顧問先の企業で同社に不当に解雇されたと言い張る元社員の言い分を聞くはめに。
  (水生大海「五度目の春のヒヨコ」)

詳細は書けないが、実はこの5作のうち、殺人事件は一件のみ。ほかの4作についても、いわゆる犯罪、違法行為はほとんど出てこない。

少し前に日本文藝家協会編『短篇ベストコレクション 現代の小説2016』(徳間文庫)を紹介したが、いずれの短編も、どちらのアンソロジーに収められていてもおかしくない(本城雅人のスポーツ新聞社の特ダネ競争をテーマとする短篇にいたっては、両アンソロジーに選ばれているのだが、『短篇ベストセレクション』所収の作のほうがミステリ臭が強いほどだ)。「五度目の春のヒヨコ」も青木祐子の『これは経費で落ちません! ~経理部の森若さん~』(集英社オレンジ文庫)のスピンアウトとでも言われるといかにもありそうな内容で、つまりは狭義のミステリとは言い難い。
対するに『Life 人生、すなわち謎』というタイトルは、人生は謎、その謎を解こうとする作品だからミステリ、と居直ったようなもので、いっそすがすがしい(←誉めているわけではない。当たり前であるな)。

前回、この日本推理作家協会によるミステリー傑作選『Bluff 騙し合いの夜』を取り上げたのは5年前の5月だったが、そのときは以下のようなことを書いた。

現代の若手ミステリ作家は、登場人物に一線を越させる確かな理由を、現実の手本から見つけ出すことができていないのかもしれない。そのため、作中の季節感も、殺意も、トリックも、すべてプラスチックの積み木の清潔なピースのようになってしまい、作品の優劣はただその組み合わせの是非でしか競えない。

今やそれをも通り越して、そもそもミステリ作家は犯罪、殺人を描く理由がなくなってしまったということか?

もとい、状況をきちんと切り分けよう。

そうは言っても猟奇殺人を描き、本格推理をうたう作品はむしろ書店の棚に溢れかえっている。若者向けライトなキャラクターもののミステリ好編も少なくない。だが、少なくとも日本推理作家協会とその周辺は、かつての傑作を崇めるあまり、もはや現在の良作を年間ベストに選ぶ理由を見失っているのだ。一度、ガラガラポンでリセットしてもよいのではないか。選者とか。販社とか。

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