2016年、東海道四谷怪談 お岩めぐり
春先のある日、家人が人形浄瑠璃に誘われて国立劇場に赴き、前進座が5月に「東海道四谷怪談」を演るというパンフレットをもらってきた。
そこで、ふと、幽霊といえばお岩さん、恨めしやといえば四谷怪談、なのにそのお岩さん、四谷怪談について自分がほとんど何も知らないことに気がついた。
小学生の時分に映画で見た記憶はあるが、子供どうし映画館そのもので遊ぶのに夢中になって、肝心のお話の記憶がない。なにやら青々した竹林に人魂の揺れる場面が思い起こされるばかりで、それが本当に四谷怪談の映画だったかどうかすら、怪しい。
というわけで、さっそく前進座のチケットを買い求めたが、いきなり歌舞伎を見てもわからないことも多いだろうと、まず佐藤慶が伊右衛門を演ずる「四谷怪談 お岩の亡霊」のDVDを観た。ディアゴスティーニから「大映特撮DVDコレクション」と銘打ってガメラ、大魔神シリーズが出ていたのを発行の都度購入していたのだが、折よくそのラインナップに入っていたのだ。
次いで鶴屋南北の原作を岩波文庫であたったが、原文は難しいので、高橋克彦が子供向けに翻案してくれたものを平行して読んだ。
一方、お岩については鶴屋南北とは別の流れがあり、高橋衛、小山内薫がまとめた作品を読んだ。
国立劇場で歌舞伎を観劇した折には、幕後の抽選で当選し、役者さんのサインはじめいろいろ記念品がパックになったものをいただいた。
後日、家人とともに四谷のお岩稲荷(於岩稲荷田宮神社)にも参詣した。
通して感じたことは、南北のお岩は、必ずしも恐ろしいばかりの存在ではないということだ。彼女はまったき被害者であり、その恨みは彼女を貶めた夫伊右衛門と彼をそそのかした輩に向かった。しかも、モデルとなったお岩は、南北が書いた時代より200年も前に健全な一生を終えた美徳の女性だった。その高名を南北が利用したのである。
しかし、だとすると、高橋衛や小山内薫が書き残したお岩はどこから出てきたのか、そこが今ひとつよくわからない。こちらのお岩像が時代的には南北より早いとする説もあるらしい。
小山内の描くお岩は暗鬱で、お岩が行方不明になったあと、疫病のようにかかわるすべての者に怨念が伝播していく。子供にいたるまで誰一人救われない。言うなればお岩個人を離れ、害をなす怨霊装置と化しているのだ。
などなど、この1年に読んだもの、観たものをざっくりでも書いておきたいと思っていたのだが、手を付ける前に年末になってしまった。
いずれ箇条書きででもまとめておきたいと思う。これが来年の抱負。
今年1年、おつきあいありがとうございました。
来年もよろしくお願いいたします。
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