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2016/07/07

〔短評〕 『爪と目』 藤野可織 / 新潮文庫

Photoなるほど、にたがわず酷い。
これが芥川賞に推されたというのは、なにか隠された深い意味でもあったのだろうか。

とくに理由もなく母親を死に追いやった幼児の<わたし>が、家庭に入ってきた父親の不倫相手の<あなた>を主語として綴る文体──は、一見斬新なようで、<わたし>がなぜ自身が居合わせなかった場のいろいろなこと(<あなた>の意識含む)を知り得たのか説明がつかず、つまり「神の視点」を適当に置き換えたに過ぎない。
書かれた状況が起こっている現在と、このテキストが書かれた未来(<わたし>は大人になっているらしい)の時制についても、思わせぶりではあるが、謎や余韻とはならず、単に説明が放棄されたようにしか見えない。

ストーリーは(心霊モノではなく壊れた人間を描くほうの)ホラーにあたるといえばあたるが、致命的なのは読み手の不安や恐怖が<わたし>と<あなた>のどちらに集約するのかまったく気遣われていないことだ。
作者は目や爪を小道具に何かを醸し出そうとしたのかもしれないが、結局<わたし>も<あなた>も(ついでにいえば父親も<あなた>の浮気相手の古本屋も)無神経で無頓着で無責任なだけで、それがすれ違ったり傷つけ合ったりしても人間や社会や虚無を描いたことにはならない。

ただ、作品としては中編というにも短く、読むのに時間を取られなかったため、☆1つ。

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