〔短評〕 『明日訪ねてくるがいい』 『這いよれ!ニャル子さん』『殺人犯はそこにいる 隠蔽された北関東連続幼女誘拐殺人事件』
最近の読書から。
『明日訪ねてくるがいい』 マーガレット・ミラー、青木久恵 訳 / ハヤカワポケットミステリ
神保町の古本屋で「頁上部イタミ大」ということで思いがけず廉価に手に入れることができた(その分、予定外の本のあれこれに手を出してしまったのでこのターン惨敗)。
のちの『ミランダ殺し』や『マーメイド』にも登場する弁護士トム・アラゴンが探偵役。こじゃれた会話も散見するが、そんなユーモアより捜査先のメキシコのすさんだ印象が圧倒的で、汗ばんだ肌に細かな焦燥感がザラザラまとわりつくよう。
最後に明らかになる犯人──というか事件の真相を、読み手は最初の1ページめから知っていたはず──そんなミラーならではの読後感が苦い。
『這いよれ!ニャル子さん』(全12巻) 逢空万太 / SBクリエイティブ GA文庫
油断していたら2年も前に完結していた。慌てて未読だった10巻、12巻を入手した次第(11巻は読んでいた。在庫管理上いかがなものか。その通りですすみませんすみません)。
宇宙からやってきた凶暴なヒロインに地球人の若者がつきまとわれ、そこに新たな登場人物(宇宙人)が──という「ラブコメ」構図は懐かしの『うる星やつら』そのものだが、なにしろ本作の元ネタはクトゥルー神話、「ラブコメ」は「ラブクラフトコメディ」の略で、ヒロインのニャル子はニャルラトホテプ、その幼なじみのクー子はクトゥグアというのだからおやまあ恐ろしい。全編これ細かなパロディで埋め尽くされており、カラフルなネタのソフトタイルを敷き詰めたショッピングモールを友だちとスキップで歩くような楽しさに満ちている。
個人的にはイス香の登場するお話と、彼女の名状しがたい日本語のような話し方が好きですョ? 遠い昔の夏休みの解けない謎の趣き。
『殺人犯はそこにいる 隠蔽された北関東連続幼女誘拐殺人事件』 清水 潔 / 新潮文庫
以前取り上げた『マスコミ報道の犯罪』の例もあり、冤罪にかかる主張については一概に白を白、黒を黒、と言えない自分がいる。
著者、清水潔氏は、桶川ストーカー殺人事件や本書の主題となった北関東連続幼女誘拐殺人事件において警察、検察の隠蔽を粘り強く暴いた、という点では高く評価したい。ただ、だからといって書かれたことすべてを信用していいのかどうかは正直言ってよくわからない(少なくともルパンと称される人物や飯塚事件についての記述はどちらかといえば強引さや上滑り感を覚えざるを得ない)。
警察、検察がまったく信用できない、などとは言わない。だが、組織というものがえてして真実の究明より自らを守るよう機能しがちなのもまた事実だ。その動向を常に洗い直す働きを受け持たないなら、大手マスコミはただ権力の広報代行業者に過ぎなくなる。本書は記載内容の正確さはさておき、そういった構造への警鐘とみなすべきだろう。
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