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2015/12/23

ようがんばった 『乙嫁語り』(8巻) 森 薫 / KADOKAWA / エンターブレイン BEAM COMIX

Photo最初の章では第7巻で登場した姉妹妻アニスとシーリーンのその後が描かれるのだが、相変わらず「この作者で読みたいのはこんな話ではない」感バリバリ。
最低でも戦乱で一家離散、とか、シーリーンの裏切りでアニスが夫に捨てられて、とか、そのくらいの厄災はないと他のシリーズとのバランスがとれないのではないか。

で、原野を駆けるガゼルを描いた番外編を挟み、いよいよ待望のパリヤ編(一同、起立。拍手)。

バダン、ハルガルの襲撃を受けたカルルクの町。パリヤ一家は家を焼き出され、カルルク、アミルの家に居候することになる。
この地域では花嫁は嫁ぐ際、何年もかけて刺繍を施した布製品を用意し、持参する。もともと刺繍の得意でなかったパリヤは、その布支度の大半を喪ってしまったのである。
そんなパリヤが無事花嫁になれるかどうか、それがこれからの焦点となる(第8巻では決着はつかない)。

パリヤを迎えた一家の食事、町の復興、馬の世話、パリヤの刺繍仕事など、映像としての見どころは実に多い。ハリソン・フォードに『目撃者』という刑事物の映画があり、アーミッシュと呼ばれる宗教団体の農村の生活が細密に描かれるのだが、その豊かさを思い出す。一つひとつの道具、所作に深い味わいがあるのだ。

パリヤがようやくこしらえた櫛入れには読み手を圧倒する魅力があり、その魅力は年頃になる前から膨大な布支度をするこの地域の娘たちが「嫁」になることの崇高さにつながる。

当時の中央アジアで社会における女性の地位がどうであったか、実際のところはわからない。しかし、少なくともこの作品では「働くこと」「働いた結果」を互いに評価し合う社会の在り方が素朴かつ強靭に描かれている。
いつも思うことだが、こと「働く」ことを具体的に描くことについて、漫画ほど雄弁なメディアを僕は知らない。

それにしても

  結婚したら 私も夜中に角を削りだすのだろうか

……こんなセリフはこの作者にしか書けないに違いない。なんと美しいのだろう。

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不器用乙嫁・パリヤさん 最初の乙嫁・アミルの友人・パリヤさんの婚活話。パリヤさん、いい娘さんなんですが、極端なマイナス思考のせいか、行動がどうにも空回りしちゃうのよね。そんなところが読者的には(未来の旦那さまも)かわいいと思っているのですが。 そんなパリヤさんに、とうとう縁談が持ち上がるものの、前回の他部族の襲撃で、家も嫁入り支度も焼けてしまいます。パリヤさんは、アミル一家にやっかいになるついでに、ばあさまから刺繍の手ほどきを受けることに。もともと、手先は器用なので、婚約者のウマルくんのこと... [続きを読む]

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