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2015/10/13

退屈しのぎにまた物語をしてあげるから 『屍鬼二十五話 インド伝奇集』 ソーマデーヴァ、上村勝彦 訳 / 平凡社 東洋文庫

かねて所望していた阿修羅像のフィギュアがAmazonから届いた。烏丸家の家宝が1upした! ピロリロリーン♪

そこで、今夜はこれを記念して、11世紀のカシミール出身の詩人ソーマデーヴァが取りまとめたという、インド伝奇集を1冊。
(タイトルでご想像いただけるとおり、一部グロ注意。)

Photoプラティシターナの王トリヴィクラマセーナは、修行僧クシャーンティシーラに呪術成就のため勇者の助力が必要と請われ、その依頼を受けることになった。その依頼とは、大墓地から南の方角へずっと遠くまで行った先にあるシンシャパーの樹に男の死骸が懸っているので、それを運んできてほしい、というものである。
信義を重んじる王は、苦心してシンシャパーの樹までたどり着き、樹によじ登って綱を切り、男の死骸を地上に落とした。すると、死骸は大声で笑い出した。死骸には屍鬼(ヴェーターラ)が憑いていたのだ。
それでも王は死骸を肩にかついで大墓地めがけて歩き始める。すると、屍鬼が話しかけてきた。
王様、道中のお慰みに、ひとつ物語を話してあげましょう。お聞きなさい

屍鬼は奇想天外な、あるいは悲しい、ときには性転換などちょっとエロティックな物語を王に話して聞かせ、最後にその物語について王たる者、どう判断すべきかを質問する。
ところが、王がその問いにことごとく正解すると、死骸は幻力によりまたシンシャパーの樹に戻ってしまう。王はそれでも臆することも倦むこともなく、再び死骸を取りに南に向かう。

『屍鬼二十五話』は、こうして死骸を運ぶ王に屍鬼が話し聞かせる二十四の逸話からなる(二十五話目は「大団円」)。

ゲーテやトーマス・マンに取り上げられたという、夫と兄、二人の死者の首と胴体を取り違える話(質問は、生き返った二人のうちどちらを夫とみなすべきか)、など、『アラビアン・ナイト』や『聊斎志異』にも劣らない豊かで人間味あふれるショートストーリーが並ぶが、いかんせん近代的なモノの考え方とはいろいろ異なる観点に立つためか、『アラビアン・ナイト』のようにお伽噺として世界に広まることはなかったようだ。

それでも、語られる個々の物語の不思議さ、苛烈さといい、暗夜に王が何度も死骸を取りに戻る不気味さ、その一方で勇猛にして実直な王をからかう屍鬼の意外なお茶目さといい、これぞ奇譚!と古代インドにソーマを傾けたい逸品である。

なお、巻末の訳者による解説だが、『屍鬼二十五話』のルーツにあたる現存しない大説話集『ブリハット・カター』のそれ自体神話的な発祥の由来、詩人ソーマデーヴァの人生と技巧、また「屍鬼(ヴェーターラ)」の呪法についての詳細など、それぞれが読み応えある奇譚群となっており、サンスクリット文学に疎い読み手にはお得感、高。
シヴァ神に反逆する阿修羅もチョイ役ながらあちこち顔を出します。

 

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