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2015/10/10

二十億光年の長距離散歩者の夢想 『孤独のグルメ2』 原作 久住昌之、作画 谷口ジロー / 扶桑社

Photo単行本は18年ぶりだそうだ。18年ぶりにしてこの絵柄、テンポの変わりのなさ。谷口ジローおそるべし。

とはいえ、これだけ変わらないと、前回(2000年8月だからひと昔ではきかない昔の話だ)書きたいことはあらかた書いてしまったので作品については今さら加えることがない。
そこで今回は作品とは直接関係ないことを書く。

『孤独のグルメ』という作品が最初に掲載されたのは月刊PANJAという雑誌で、今なら考えにくいことだが篠山紀信撮影によるその表紙はなんと
──その話もおいといて、

「孤独」という言葉についてだ。

おそらく読み手の大半はスルーしてるんじゃないかとは思うが、本書のタイトルにおける「孤独」はかくありたいと望まれる状態の「孤独」である。「孤高」から高さを引いたもの。少なくとも、一人ぼっちは寂しくてイヤ、という意味ではない。

かつて(記憶では70年代の前半あたりまで)、「孤独」はかなりカッコよく、魅力的な言葉の一つだった。
洋楽ポップスのタイトルを数えても片手の指では足りない。「孤独の太陽」「孤独の世界」「孤独の叫び」「孤独の旅路」「孤独のメッセージ」「孤独の影」、などなどなど。
一人でいることはもちろんツライ。キビシイ。それでも、大勢に迎合、付和雷同するくらいなら俺は一人になることを選ぶぜ──そういう時代、そういう言葉だったのだ。

もちろん、現代でも「孤独」な状態はある、いじめや引きこもり、ハブりハブられブロック、着信拒否など、かつてよりよほどキツい状況もあるだろう。

だが、つるんでつるまれ、愛想笑い絶やさず、うんうんと頷いてばかりは納得できない、「孤独」にこそなろう、「孤独」でなければ突破できない、そういった道もあるはずだ。
教えたのはガッコウか新聞か、隣の人とは仲良くしましょう、足並みは揃えなくてはいけません、絆、絆、と一人になることを否定されていくうち、若者たちは一人で生きていくことから隔離されてしまった。

言うまでもないことだが、『孤独のグルメ』の主人公井之頭五郎はことさらに「孤独」がどうの、と騒ぎはしない。
だが、彼は昼飯に何を食べるか一人で考え、一人でドアを開け、一人で満腹する。あるいは自身の選択を反省する。

それが大人の方法だからだ。

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