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2015/08/08

『ようするに、怪異ではない。』 皆藤黒助 / 角川文庫

Photo先日の、『時をかける少女』テレビ放映の際、Twitterに、ある大学教員の方が「以前原田知世の『時をかける少女』と細田守のアニメの比較映像論をやっていたが、今どきの学生は前者を観て爆笑するのでそれ以来やめてしまった」といった内容のつぶやきを書かれていた(https://twitter.com/manchi2012/status/620649232811192320)。

この経緯や感覚は、それぞれわからないでもない。
ただ、一つ指摘しておきたいのは、原田知世の、つまり大林監督版の『時をかける少女』は、その当時過去のものとなりつつあった昭和ノスタルジーに満ち、そのため公開された時点(1983年)においてすでにずいぶんと笑われていた、ということだ。

青春ははた目にはくすぐったい。それが切実なら切実なほど笑われてしまう。おそらくそういうことなのだと思う。

『ようするに、怪異ではない。』は、妖怪マニアの先輩・ハルに振り回される妖怪嫌いの高校生を描く連作短編集。

怪異といっても、コンビニのお菓子のパッケージが切られていたら鎌鼬(かまいたち)じゃないか? 窓から覗き込む顔があったら精螻蛄(しょうけら)じゃないか? といった程度で、妖怪談としてもミステリとしても、そう際立って凄い、ということはない。ないのだが、青春物語としてはそこそこ巧い(この点において、当節のライトノベルはおおむね実によく出来ているのだ)。
その結果、その手の峠は越してしまったオジサン読者は後半の青春エネルギー充填120パーセント!な展開に照れて笑ってしまう。笑いつつ楽しむ。

大切な友人が犯した罪を先輩の気持ちも考えず自慢げにぺらべらと述べ、一人子どものように勝ち誇っていたのは何処のクズだ。
俺だ。冬目皆人だ。

とか、

「今週末でしたよね、みなと祭。皆で行きましょう」
「え……でも私、髪が」

こういった展開、こういった言葉遣いの気恥ずかしさは昭和の角川映画だろうが現代のライトノベルだろうが変わらない。
おそらく、この作品の登場人物たちと同世代の現代の読者でも、ほかの青春物語に焦点が合っていれば笑うだろう。

だが。笑われることを恐れてなんの青春。
爆笑されてナンボ。妖怪照れ隠し。

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