『実話蒐録集 黒怪談』 黒 史郎 / 竹書房文庫
怪談が怪談たるためには、最低でも(1)語り口に妙がある、(2)怪異が立証的である、のいずれかが必要だろう。
(2)は、例えば「夢でない証拠に複数の人間が見ていた」「指の跡が残っていた」といった条件のことである。
実話怪談もブームになって久しく、読み手も多少のことでは騒がない。無意識に厳しく(1)、(2)を求めるようになる。
すると、あれこれ気になることもある。
最近発売された『実話蒐録集 黒怪談』に「不運の男」という掌編があった。
会社の仲間で酉の市に出かけたところ、アルバイトの青年がいろいろ不運な目に遭い、最後には屋台の前で倒れ、脳梗塞で死んでしまう。
しかし、これは不運でもなんでもない。「ベビーカステラを喉につまらせる」「りんご飴で口の端を切る」「吐瀉物の上に手をつく」「三人連続で子供にぶつかる」等、彼の奇行の一部は脳梗塞の前兆(顔や腕の麻痺等)にあたるものだったに違いない。同行する者がそれに気がついてやれなかっただけではなかったか。
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