終生忘るなし 『とめはねっ! 鈴里高校書道部 (13)』 河合克敏 / 小学館 ヤングサンデーコミックス
(『とめはねっ!』の13巻が発売されたのは2か月ばかり前だが、予告に次巻で終筆とあり。最終巻が出る前にもう一度取り上げておきたい。)
微温にだらだら続くギャグマンガの作法をあっさり蹴り出して、鈴里高校、鵠沼学園に豊後高校の一条を加えた合同夏合宿がじわじわ熱い。
「書の甲子園」参加を最後に柔道部に専念することになったもっちー、そのもっちーへの一条の告白受けて、ガチャピンユカリはどうする、どうなる。「書の甲子園」の結果は。
そんな本巻の後半を厳しく締めるのが、ユカリたちの師、三浦清風(表紙左)が若い頃に圧倒されたという書家井上有一(1916-1985)の書「噫横川国民学校」。
これは東京大空襲(1945年3月)の際、横川国民学校の教師をしていた井上が、教え子を含む千人以上が焼夷弾に焼け死に、自身も九死に一生を得た記憶を書に叩きつけたもので、読めずとも苛烈、読んでしまうともはや息もつまる凄惨さである。芸術性は知らず、これに比べればピカソの「ゲルニカ」さえおよそ牧歌的だ。
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子は親にすがって親をよべ共
親の応えは呻き声のみ
全員一千折り重なり
教室校庭に焼き殺さる
白骨死体如火葬場生焼女人全裸
腹裂胎児露出 悲惨極此
(「噫横川国民学校」部分)
投稿: 烏丸 | 2015/02/25 01:59