『拝み屋郷内 怪談始末』『拝み屋郷内 花嫁の家』 郷内心瞳 / KADOKAWA MF文庫ダ・ヴィンチ
書き手の郷内心瞳(ごうないしんどう)氏は、ホームページでも憑き物落とし、悪霊祓い、水子供養、加持祈祷、心霊写真・人形・石等の処分などの業務を案内している、宮城県在住のプロの「拝み屋」である。
その、プロの「拝み屋」が実話怪談を書くと、どうなるか──。
実は、当節流行りの、蒐集者が語り手から取材する形をとる実話怪談本には、ちょっとした制限がある。
話の信憑性を高めるには、語り手当人が怪異の体験者であったほうがよい。だが、後日その怪異を語るためには、(当たり前だが)当人は無事に生きていなければならない。
つまり、実話怪談において、怪異、呪いの致死性と、話の信憑性は反比例するのだ。自然、「……を見た」というだけの話が多くなる。
では、書き手が「拝み屋」なら、どうか。
書き手がその方面のプロである場合、怪異に気がついた人物によって話が持ち込まれ、変事に適応能力のある書き手本人が出張してことにあたる。すると……怨恨の根が深い場合、話を持ち込んだ当人やその家族側が死んでしまうこともあるのだ。文字通り祓っても祓っても凶事は続き、拝み屋の側さえ無事に済まない場合もある。
デビュー作『怪談始末』の前半あたりまでは、まだよくある実話怪談ふう、「生首を飛ばすのが好きなのかな」などと鼻歌まじりに読んでいられるのだが、中盤、謎の少女が現れるあたりから、怪異の連鎖が妖しい力を放ち始める。
そして2冊め、『花嫁の家』にいたっては禍々しさの大河ドラマ、怨念の螺旋階段。散発の怪異をたぐると、蜘蛛の巣のようにどんどんからんでよどんで関係者が死ぬ死ぬ死ぬ。
読むほうも、その苛烈さにそのうち怖さに麻痺してきて……などと油断していると、いきなり怪異が耳元で囁き、けたけたと笑い、のしかかり、吠え狂う。
本作りの観点から見れば、文体や構成など手の加えようもあったかもしれない。とも思うが、ともかく他の実話怪談本とは一線を画したストロングスタイル、干からびた花嫁にわしづかまれたいもの、この指たーかれ。おやあなただれのゆびをつかんでいるのですか。
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