髪を梳いてください 『最初の舞踏会 ホラー短編集3』 平岡 敦 編訳 / 岩波少年文庫
フランス語で書かれたホラー短編を、中高生向けにコレクトしたアンソロジー。
──とはいえ、各作品とももともと若者向きに書かれていたわけでもなく、世代を問わず楽しめる内容となっています(ちなみに、こんなときよく“大人の鑑賞に堪える”と言いますが、それってちょっとヘンですよね。子供のほうが新しくてよいものをすんなり見抜くことだってあります)。
収録作を見ていきましょう。
ご存知シャルル・ペロー「青ひげ」、ジュール・シュペルヴィエル「沖の少女」、マルセル・エーメ「壁抜け男」、プロスペル・メリメ「イールの女神像」などの定番が並ぶ一方で、モーリス・ルブラン「怪事件」、アンドレ・ド・ロルド「大いなる謎」の2作は本邦初訳。ズチャズチヤのスプラッタもあれば哀切、可憐なファンタジーもあり、ほんの数ページのショートコントがあれば読み応えの中編あり、とホラーアンソロジーの教科書にしたい見事なバリエーション、バランスです。
レオノラ・カリントン「最初の舞踏会」、アルフォンス・アレー「心優しい恋人」のように理屈抜きに怪異をかっ飛ばす感性は爽快ですし、モーリス・ルヴェル「空き家」、エミール・ゾラ「恋愛結婚」のように実は霊的な出来事など起こっていない、それでもひりひり怖い作品もあります。
全体を通すと、ウィットと心理描写に富んだフランス文学そのものへの案内書になっているようにも思われます。
岩波少年文庫からは本書に先駆けて英米ホラーを選び集めた『八月の暑さのなかで』、『南から来た男』の2巻のホラー短編集が出ていました。今後、ドイツ、ロシア、南欧、中国と続くと楽しそうです。将来のために子供たちの柔らかな心臓にホラーの種を植えつけておきましょう。やがてそれが芽吹き、体中に根を……。
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